top of page

ふぉろわさんが書いてくれたやつ→https://privatter.net/p/4648433

あと個人的な趣味で「ハンター≠防具」な思考なのでどうぞよろしく( ˘ω˘ )
配役も個人の趣味。Wくんは何気にNPC少な目だからね、仕方ないね(言い訳)
古龍×人要素がほんのり。

+++

 自分が乗ってきたはずの船の中で、狩りびとは一通の封筒を見つけた。覚えのないものだった。
 誰かの忘れ物だろうか。いや、けれど封筒は自分が寝ていた場所の、すぐ近くにあった。自分が現大陸から持ってきたものだろうか。
 疑問を持ちつつ、狩人は封筒を手に取り眺めてみる。そこには、狩りびとの名前が記されていた。
 ますます分からない――。
 覚えのない封筒を勝手に開くことは憚られたが、好奇心と封筒に書かれた自身の名には勝てなかった。
 カサリと乾いた音が鳴る。
 パラパラと、罅割れた蝋の欠片が落ちていく。
 封筒の中からは、地図のようなものが描かれた紙と、赤錆びた染みの付いたギルドカードのようなものが出てきた。

---

覚えのないギルドカード
 古びた封筒に入っていた、赤い染みの付いたギルドカード
 けれどギルドカードには名前も武器の使用回数も何も記されていない

 同封されていた地図が示す場所には、特に何もなかったはずである
 台地の青に、この赤錆は似合わぬだろうに

---

 地図に示された場所――陸珊瑚の台地の、拓けた場所に狩りびとは来ていた。
 エリアの端、空中にも手のひらを僅かに伸ばした陸珊瑚の上に立ち、景色を眺める。
 場所は此処で合っているはずだが――と。
 古びた封筒であったし、今の地形では見えない何かが、昔ここから見えたことを示していたのだろうか。
 そんなことを考え、踵を返そうとする。
 そこに、ギシリと音を立てて、アプトノスの曳く荷車が現れた。
 荷車は乗車を促すように狩りびとの前で停まる。
 狩りびとは、特に躊躇することなく、その古びた荷車に乗り込んだ。
 荷車が動き出す。ギシリギシリと音を立てて、ゆっくりと速度を上げていく。
 どこのどんな道を通っているのか、荷台に腰を下ろした狩りびとにはいまいち分からない。ただ、遠ざかって行く台地の青を荷台から眺めていた。

---

熔山の装備
 黒く冷え固まった溶岩を削り出し用いたような装備
 けれど所々は未だ赤く色付き、鼓動するように仄かに温かい

 騎士、あるいは王族然とした佇まいは何を示す姿なのだろうか
 守る者。統べる者。その過去は熔け崩れた山の中に埋もれていると言う

---

 薄黄色に煙る空気を覗く台地の最下層で、狩りびとは満身創痍で立っていた。
 奥に続く道を守るように、黒い騎士のような狩りびとが立ちふさがっていたのだ。
 冷え固まった溶岩のようなそいつは、遠目にはまったく動かず、狩りびとははじめ死んでいるのだと思った。
 けれど狩りびとが近付くとそいつは動き出し、狩りびとに攻撃してきたのである。まるでこの先は通さぬとでも言うかのように。
 狩りびとから何かを守りたかったのだろうか。あるいは、狩りびとを想って追い返そうとしたのだろうか。
 狩りびとに敗れ、崩れ落ちた黒い狩りびとは何も言わない。砕け散った黒い装甲と、やわらかそうな暗い赤の布。
 黒い狩りびとの残骸を眺めていた狩りびとは、そこでふと、違和感を感じた。
 黒い装甲と、赤黒い布をじっと見つめる。
 見つめて――気付いた。
 装備に用いられている装甲と布が、ちぐはぐなのだ。
 普通一種類の装備には一種類のモンスターの素材と鉱石や骨が使われ、統一感のある物になる。
 けれど目の前の装備は、装甲と布がそれぞれ別のモンスター由来に見える。例えるなら、アンジャナフの素材をプケプケの素材で繋ぎ合わせたような。
 狩りびとは地面に散らばる装備を拾い上げる。布部分が多く、辛うじて装備できるであろう、腰の装備である。
 それを徐に装備して、黒い狩りびとが立っていた奥の通路へ歩いていく。
 枯れた陸珊瑚がトンネルのように道を作る奥。その先端から眼下を望めば、黄色い雲のようなものが立ち込めて地面は僅かにも見えない。
 けれど狩りびとはその黄色い煙の中に、薄く輝く緑色の光を見逃さなかった。狩りびとを誘うように光る場所を。
 狩りびとは枯れた陸珊瑚を蹴って光を目指して飛び降りる。そこに、黒い騎士がここに居た理由があると思ったのだ。
 落ちていく。落ちていく。黄色い雲の中を落ちていく。雲の中は酷い臭いだった。思わず噎せて、少しでも空気を吸わないよう、腕を顔に当てる。
 そのまましばらく落ち続けて、やがて狩りびとは落下速度が緩まっていることに気付いた。ふわりと、下から空気が噴き上がってくる感覚。台地の湧昇風のようなそれで、狩りびとは難なく地面に着地する。

---

屍套の装備
 人が踏み入らざる谷の深くに座すもの
 人智を超えた力を持つ龍に心酔した狩りびとたちが纏った装備

 腐り、削げ落ちた死肉は極小さな生き物たちを呼び寄せ住まわせる
 龍が纏うそれを自らも纏うことで同胞、あるいは存在に寄ろうとしたのだろう
 故に彼らが人ならざる人々になりえたとしたら、龍を慈悲深いと言えようか

---

 そこは洞窟のようだった。薄暗く、四方の岩壁には骨や化石が埋まっている。
 幸いにも一本道らしい洞窟を進んでいくと、いつからか周囲には緑色の水溜まりが見え始めた。
 明るい緑色のそれは、薄暗い洞窟にはあまりに眩かった。
 コツリ、コツリ、と周囲を見回しながら道を進む狩りびとの目の前に、そして拓けた場所が現れる。
 「……訪問者よ」
 狩りびとが広場に足を踏み入れる直前、誰かの声がした。
 「閉ざされたとて、ここは神聖なる場」
 何者だろう、と狩りびとは歩みを進める。
 「故なくばそのまま去り」
 歩みを進めて、狩りびとは、広場の奥に築かれた、屍の山に辿り着く。
 「あるいは、我が前に跪くが良い」
 そこには、死肉を被ったような装備の、おそらく狩りびとだろう女が座っていた。

---

削ぎ落とされた屍肉
 屍套の龍を信仰する者たちが剥ぎ取るという屍肉
 それはもはやどれだけ火を通そうとも食せぬものである

 屍肉に纏わりつく灰は瘴気であり、人の身には毒でしかない

 されど彼らはその量が多いほどに歓喜し、屍の山に捧げる
 山に座す肢体を通じて、いつか彼らが主にその想いが届くように

---

 言われた通り、狩りびとは女の前に跪く。
 女は、狩りびとを静かに見下ろしながら、再び口を開いた。
 「……君よ、訪問者……風を纏う狩りびとよ。私は谷底の従属者、この谷の主を世話する者」
 フフフ、と小さな笑い声が狩りびとの頭上に降る。
 「龍の番。すなわち狩りびとを辞めた裏切り者。しかし同胞すべてを失くし、谷の最奥に籠ったとしてなお、狩りびとは私を狩りたいかな?」
 それは嘲笑と厭世と疲労を微かに感じさせる声だった。
 狩りびとは口を開く。
 元は狩りびとだった女は、狩りびとの言葉に少なからず驚いたようだった。
 「ほう……それは……。君、狩りびとの異端者というわけか……」
 狩りびとは変わらずに跪き続けている。まるで、最初からそれが目的だったかのように。
 「……。だが、祈りの日々にも亡き同胞を想うというもの。君よ、我ら異端の思想に列し、また異端として狩りびとの裏切り者となる……敢えてそれを望むのであれば、煙る屍肉を纏い瘴気にその身を浸すと良い」

---

未開封の封筒
 未開封の古びた封筒。中身は分からない
 覚えのないギルドカードが入っていた封筒と同じ封蝋が用いられている

 このような古びた封筒を待つ者が、誰かいるのだろうか

---

 狩りびとは雄々しい獣のような装備の狩りびとに一通の封筒を渡す。
 それは、あの谷底で見つけたものだった。
 いつかこの狩りびとと話した際、ある龍に魅入られその従属者となった狩りびとたちの話と、彼らを止めるために有志の狩りびとを率いた狩りびとの話を聞いていたのだ。
 「……おお、これは……屍套の印章……。聞いたことがある。かつて狩りびとの裏切り者どもは、こうした気取った書簡を用いたと」
 相手の声は暗く喜悦に歪んでいた。
 「……素晴らしい……君に感謝する……。私はすぐに出よう。その前に、君に感謝の印を」
 狩りびとは相手から幾つかのアイテムを受け取る。
 うっそりとしている相手に、声をかけようとはしなかった。
 「……ああ、これも、師の思し召しだろうか……。星の導きに感謝を。お互い、この大陸を保全していこう……」

---

爆鱗の装備
 爆ぜる鱗を持つという飛竜の素材から作られた装備
 
 猛々しい獣を模した姿は、しかし雄々しい騎士の姿にも見える
 あるいは、狩りに際して発せられる鬨の声を表した姿だろうか

 狩りびとは臆さず、怯まず、立ち止まらない
 特に、爆鱗の装備を纏う狩りびとにはそれが顕著に見られる

---

 「師よ!ご覧あれ!私はやりました、やりましたぞ! この裏切り者を、潰して潰して潰して、ピンク色の肉塊に変えてやりましたぞ! どうだ売女めが! 如何にお前が龍の番だとて、ここまで壊されたなら、もはや再生は叶わないだろう! すべて内側、粘膜をさらけ出したその姿こそが、いやらしい貴様には丁度良いわ! フハ、フハハッ、フハハハハハハァーッ」
 狩りびとが再び谷底を訪れると、まず噎せ返るような鉄錆のにおいがした。
 次いで、洞窟に反響する、感極まったような誰かの叫びと笑い声。
 コツリコツリと、狩りびとは前を見据えて洞窟を進む。
 そうして、その先。屍の山がある広場に、見覚えのある後ろ姿と、ピンク色の何かが飛び散っているのを見た。
 くすんだ銀色を基調とした装備が真っ赤になっている。それに加えて、所々にピンク色の何か――肉片が付いている。
 高揚しているらしい相手をあまり刺激しないように、狩りびとは話しかける。相手は、意外なことに、存外まともに会話をすることができた。
 「ハハハハハ……はあ…………おお、君だったか!」
 以前聞いたときは深く落ち着いていた声が、今は歓びに弾んでいる。
 その声は、拓けた場とは言え、洞窟でよく響いた。
 「見てくれ!君のお蔭で、遂に私は為し得たんだ! どうだ!素晴らしいだろう!これで師を、裏切り者討伐の模範的調査員として報告できるのだ! フハ、ハハハッ、私はやったんだあーっ!フハハハハハハァーッ!」

ウルズ男さんに拝謁ジェスチャーして欲しい(願望)

超回復カスタムなゾンビ銃槍使いが敵対NPCに居たら実際嫌じゃないですか? 嫌だと思う。

+++

 打ち捨てられたかつての拠点から大蟻塚の荒地に向かう道中、狩りびとは岩陰に凭れこんでいる人影を見つけた。
 見覚えのあるその人影に駆け寄ると、それはやはり単独で新大陸を調査して回っている古い狩りびとだった。
 「……なんだい、あんた、ここで会うなんてね……」
 周囲には夥しい量の血が広がっている。そして、それは点々と、荒地の方へ繋がる道にも残っていた。
 「あたしとしたことが、ドジを踏んじゃってね。しばらく、休んでいるのさ」
 ククッと喉奥で古い狩りびとは笑う。
 「なあに、回復薬は使ったんだ。今までだって、なんとかなってきた…………あたしももう若くない。大きな怪我を治すには、時間がかかるようになっただけさ」
 軽装とも言える彼女の装備から覗く傷口は、切り裂かれたようにも、焼かれたようにも見えた。
 思わず血痕が続く道へ足を動かしかけた狩りびとの脚防具を、古い狩りびとの手が掴む。
 狩りびとを引き留める手に、力はあまり入っていなかった。
 「……だけどね。この先は、あたしがカタを付けるべき問題さ。あんたは関わるんじゃない。手を出すんじゃあないよ……」
 けれど狩りびとは彼女を一瞥して前を向いた。
 防具を掴まれていた脚を、そっと踏み出す。振り払われた手が、少しの間宙を彷徨った。
 遠ざかって行く背中を追う術も呼び戻す術も、これ以上引き留める術も、古い狩りびとは持っていなかった。

---

 ゴツゴツと乾いた岩と砂が増え、荒地の近付きを伝えてくる。
 そんな道の、少し拓けた場所にそいつは居た。
 腐った屍肉を被った騎士のような装備の狩りびと。そいつが狩りびとであると判断したのは、相手の腰元に狩りびとの証である剥ぎ取りナイフが提げられているからだった。
 屍肉を纏い、狩りびとの裏切り者となってなお狩りびとの証である剥ぎ取りナイフを持つ相手に、狩りびとは武器を構える。
 古い狩りびとには手を出すなと言われたが――少なからず世話になり、自身を気にかけてくれた先輩を瀕死に追いやられて良い気はしない。倒せはせずとも、いくらか殴って彼女への土産にしてやろう、と思った。
 武器を構える狩りびとに対して、相手もまた武器を構える。
 歪にも思える左手の槍型武器と右手の大きな盾。機動力の低い武器だ、と狩りびとは内心口角を上げる。狩りは、基本的に機動力があった方が有利に運びやすい。だから、案外、早めにカタが付けられそうだ、と。

---

 防具のあちこちに傷を作り、中には出血に至っている怪我を負いつつ、狩りびとは立っていた。
 地面に倒れた相手は、既に息絶えている。あまりの猛攻に狩りびとが対処しきれず、勢い余って倒してしまったのだ。
 正面からの攻撃が盾に防がれることはもちろん、防具越しにも熱と衝撃を与えてくる砲撃。背後に回り込んでも即座に振り返る反射、超重量の見た目をした得物からは考えられない軽やかなステップ。回復薬を使う素振りが無いわりに殴っても殴っても減ったように思えない体力。
 狩りびとは慄いた。
 そして、無我夢中で武器を振るった。相手が膝を付くまで。武器を構え直さなくなるまで。
 殴って、殴って、殴って、そして相手が倒れて、最後に狩りびとが立っていた。
 気付けば上がっていた呼吸を、ゆっくりと深呼吸して落ち着けようとする。
 周囲に飛び散る赤を、なるべく見ないようにして、狩りびとは踵を返す。古い狩りびとにこのことを伝えなければ。話をしなければ。まだ、間に合うはずだから、と。

---

 ボロボロになって帰って来た狩りびとを見て、古い狩りびとは呆れたように小さく笑った。
 「……あんた、先輩の言うことは素直に聞くものだよ……。まあ、いいか。あんたに助けられたのは、事実だからね」
 狩りびとが彼女を助けたというのは、いつの話だろうか。今さっきのことか、それとも荒地で共闘して、彼女の知り合いでもあったあの古い狩りびとを倒した時のことか。
 そんな狩りびとの小さな疑問には気付かず、彼女はひとり言のような言葉を続ける。
 「……でも、あたしももう、潮時かもしれないねえ……。最近、よく昔を思い出すんだ……」
 そこで、やわらかく細められた古い狩りびとの眼が、狩りびとに向けられる。
 「……」
 何かを思い出し、懐かしむ眼に見えた。
 「なあ、あんた。これを、渡しておくよ」
 だからだろうか、彼女は大切にしていたであろう自身のハンターノートと、それまで幾度も共に危機を乗り越えて来たであろう護石を、狩りびとに差し出した。
 「それはあたしがここを調査してきたすべてさ。当然、あんたが知っておくべきことでもない。どうしようと、あんたの自由だ……」
 自分の物と比べて遙かに厚く、使い込まれたノートは、ズシリと重い。おそらく、この古い狩りびとの頭の中には、ここに記されたすべてと、それらから考えられる新大陸の諸々が入っているのだろう。
 狩りびとに託された、けれど狩りびとが必ずしも知っておく必要のない知識たち。
 年季の入ったハンターノートを抱えた狩りびとを見上げて、古い狩りびとは小さく笑う。自分を覗き込む後輩の眼が、いつか負傷して寝込んだ自分を覗き込んだ同期の孫の眼に重なったからかも知れなかった。
 「……ああ、なんだか眠くなってきたよ……。すまないけど、少し眠らせてもらうよ……。少しだけね……」

死套とおばさま
bottom of page