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ふぉろわさんが書いてくれたやつ→https://privatter.net/p/4648433
 

あと個人的な趣味で「ハンター≠防具」な思考なのでどうぞよろしく( ˘ω˘ )
配役も個人の趣味。Wくんは何気にNPC少な目だからね、仕方ないね(2回目)

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 古代樹の森でも、鬱蒼としたエリアである。崖とも、樹の根が抱き込んだ岩の上ともつかない場所に、かつて調査団が設けたベースキャンプが残っている。そこは、訪れる人の足が随分と減ってからも、変わらずそこに在り続けていた。
 狩りびとは岩壁を這う蔦にスリンガーを引っ掛けながらベースキャンプへ向かう。探索中の小休憩を取ろうと思ったのだ。
 だから、蔦を上りきった先に今までは見かけなかった人影が視界に入って来て、狩りびとと言えど少なからず驚いた。
 つばの広い帽子を被っているそいつの顔は――特に上半分が――見えない。どう見ても剥ぎ取りナイフではない細身の剣や小さな剣を腰に提げているが、腰の辺りに覗く鞘と柄は剥ぎ取りナイフのものだろう。つまり、そいつもまた狩りびとであるらしい。
 狩りびとが見慣れない人影を観察していると、相手もまた狩りびとに気付いたようだった。帽子の羽根飾りが揺れて、相手の顔が狩りびとの方を向く。
 「おや、貴方、見ない顔ですね? しかし、見たところ優秀な……狩りびとのようだ」
 そして帽子の下に覗く口元が弧を描いて、フフフとそいつは笑った。
 「ああ、僕はブリゲイド、連盟の長をしています」
 連盟、と言う語に狩りびとは首を傾げた。そんな組織は、現大陸に居た時でも聞いたことが無い。
 そんな狩りびとの反応を見て――あるいは、はじめから狩りびとに話して聞かせるつもりだったのか、ブリゲイドは朗々と言葉を続ける。
 「連盟とは、狩りの中に蠢く塵芥すべてを、消し去るための協約です。貴方も狩りびとなら、気持ちは同じでしょう? 異常なモンスター、血ばかりを撒き散らす古龍、調査に憑かれた調査員、みんなうんざりじゃないですか」
 ブリゲイドがどんな顔をしているのか、狩りびとには分からない。ただ変わらない、微笑のようなものを浮かべた口元だけが見えるだけで。
 「だからこそ、狩りつくす。連盟の狩りびとが、貴方に協力するでしょう。どうですか? 貴方も、僕たち連盟の仲間になりませんか?」

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狩りびとの血盟
 ギルドカードを彩る背景デザインの1つ
 「連盟」に参加するにあたって、その長から与えられたもの
 これをギルドカードの背景とすることこそ、連盟の一員たる証である

 連盟員は同志を重んじ、また協力と助太刀を惜しまない

 「連盟」の狩りの対象はモンスターだけに留まらない
 連盟員が消し去るべき「汚れた石」は、人にも宿るものであるために

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 ブリゲイドの言葉に狩りびとは頷いた。
 狩りびとの返事に、ブリゲイドもまた嬉しそうにゆっくりと頷く。
 「……そうですか。いえ、それでこそ狩りびとですね。その証に映してください。これが連盟の、僕たちの背景です」
 狩りびとはギルドカードの背景をブリゲイドから受け取る。
 「……いまや狩りは塵芥に汚れ、埋もれ、腐りきっている。素晴らしいじゃないですか。存分に狩り、潰してくださいね。同志たち、連盟の狩りびとが協力しますから」
 鬱蒼とした森に、静かな、しかし確かに熱を帯びた声が落ちていく。フフフ、と漏らされた小さな笑い声は、何故だろう、友人に秘密を打ち明けた子供の無邪気な声にも聞こえた。
 話を終えただろうか、と口を閉じたブリゲイドを見て狩りびとは思う。相手は視線が見えないから、どこを見ているのかいまいち分かりづらい。けれどまぁ、今回の話はこのくらいだろう、と狩りびとは当初の目的であったベースキャンプ内のテントへ向かうことにした。
 狩りびとがブリゲイドの前を離れ、テントの中へ入ろうとする。その、直前。思い出したようにブリゲイドが声を発した。
 「ああ、1つ、伝えておきましょう。連盟の背景を用いる狩りびとは、その血盟により「汚れた石」を見出します。それは、塵芥の中に埋もれ転がる、調査を狂わせる根源……躊躇無く、砕き割る事です。僕たち連盟の最終目標は、すべての「汚れた石」を砕き割り、調査の狂いを正し直すこと」
 狂った調査――此処で行われている「調査」は狂っている、とブリゲイドは言う。狩りびとは、ブリゲイドの言葉を肯定も否定もしなかった。
 「……だからこそ、もはや「汚れた石」など無いと分かるまで、狩りと粛清を続けるんです」
 そこでふと、ブリゲイドの声が翳る。それはきっと、寂しさのようなものだった。
 「それは、僕たちの血塗れの使命……きっと、誰にも理解されないでしょう。だからこそ、僕は同志たちを愛するんです。努々、忘れないでください」

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連盟の杖→連盟の剣(ブリゲイドの腰に提げられてるアレ)

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 狩りびとの悪夢でかつての調査員と思われる狩りびとに襲われ、返り討ちにした。その際、倒れた相手の身体からコロリと転げ落ちた石のようなものを、狩りびとは砕いた。
 その後、またいつかのように古代樹の森を探索し、あのベースキャンプを訪れた。
 いつ来ても古代樹の枝葉が空を覆い、薄暗いベースキャンプには、相変わらずブリゲイドが佇んでいた。
 そう言えば相手の様子はどうだろうか、とブリゲイドを窺おうと近付いた狩りびとに、ブリゲイドは狩りびとよりも早く口を開いた。
 「……ああ、貴方。どうやら「石」を砕いたようですね」
 不意に自分の方を見て口を開いたブリゲイドに、狩りびとは少し驚いて動きを停める。次いで、どうして石を砕いたと分かったのだろう、と訝しげな表情を微かに浮かべた。
 ブリゲイドは、やはりフフフと小さく笑った。
 「僕は連盟の長、そんなことは、目を見れば分かるものです。しかし、良かった。これで貴方も、本当の連盟の仲間……同士です。さあ、この剣を受け取ってください。僕たちの血塗れの使命、その誓いの証です。新しい同志を、みなさん歓迎するでしょう。存分に励んでください……そして楽しみにしていることです。やがて使命が、貴方を昂らせる……」

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羽飾りの帽子
 被る者の顔を殆ど翳らせるほどつばの広い帽子
 その影を通して獲物を見れば、それが「石」を持つかどうか判ったという

 数多の狩り場を超えてなお綺麗なままの羽飾りは
 帽子の持ち主の技量の高さを知らせるに十分な証言者であった

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 あれからまた幾つかの狩りをして、「石」を拾い、砕いた。
 そうしてまた、狩りびとはふらりと古代樹の森の、あのベースキャンプを訪れていた。
 度々協力を仰ぎ、また協力してもらった「連盟の狩りびと」たちは、このどこか狂った新大陸において確かに頼りになる狩りびとたちだった。その礼を、長であるブリゲイドにもしておこうと狩りびとは思ったのだ。
 「ああ、同士。よい目になってきましたね」
 しかし今回もまた、先に口を開いたのはブリゲイドの方であった。
 「「汚れた石」を砕き、砕き、砕き、砕き、砕き……塵芥(ゴミ)だらけの狩りの真実を知り……けれど折れない、狩りびとの目……連盟は、貴方を迎えて僥倖でした。僕の最後の、大仕事でしたね……フ、フフフッ……」

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羽飾りの帽子
 被る者の顔を殆ど翳らせるほどつばの広い帽子

 それは、狩りに被って行くには「らしくない」ものだと言えるだろう
 それでもこれを狩りの供とする狩りびとに、せめて同士と呼べる者が在らんことを

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 かつて竜人族のハンターであった古龍を、竜人族のハンターとして屠った場所のすぐ近くから、声が聞こえてくる。ゴツゴツと何かを壁に打ち付けるような音と共に、ブツブツと何事か独り言ちているのだ。
 「……未開に降りて迷わず、未踏に入りて臆さず、名誉あるギルドの狩りびとよ……龍は呪い、呪いは軛……そして君たちは、ギルドの剣とならん」
 最初は驚きもしたが、声が洞窟の岩壁から聞こえてくると気付くと、狩りびとが声を警戒することは無くなった。
 洞窟の岩壁には横穴のようなものが幾つか開いている。その中に居るのだ。そしてその横穴のほとんどは、見るからに硬い鍾乳石、あるいは複雑に組み上がった骨肉、もはや石と言っても過言ではない木々の根なんかで出入り口を塞がれていた。入ることも、出ることもままならない状態だったのだ。
 だから、しばらくこの天然の独房群を、狩りびとはそのままにしていた。
 けれど狩りびとの悪夢を巡り、地脈回廊とそこに築かれた砦、接岸した船、息絶えた巨大な古龍を探索する中で見つけたのだ。あの独房を開くことができるかもしれない物を。
 それは鍵と呼ぶにはあまりに歪だった。
 幾つかの材質で出来た小さな棒のようなものがまとめられている。あるものは鍾乳石のような材質。あるものは腐りかけた肉の残る骨。あるものは石化しかけている木の根。そんなものたちが、さも普通の鍵であるかのように、一つの輪に通されまとめられていた。
 それを手に、狩りびとは洞窟へ向かった。
 未だ最期を見届けたかつての調査員の亡骸が横たわっている。
 「……未開に降りて迷わず、未踏に入りて臆さず、名誉あるギルドの狩りびとよ」
 また声が聞こえてくる。
 「……龍は呪い、呪いは軛……そして君たちは、ギルドの剣とならん」
 同じ言葉を何度も何度も、繰り返し繰り返し、いつも呟いている。
 ゴツゴツ、ゴツゴツと、一定の感覚で何かを壁に打ち付ける音も、いつも変わらない。
 狩りびとが「鍵」を使って独房を開ける。
 中に居る声の主は、独房が開いたことも、狩りびとが居ることにも気付いていないようだった。
 背中だけが見える。
 背を覆う外套は、質の良い素材が用いられていることが分かる。外套を僅かに押しのけ覗く、腰に提げられた剣も、狩りに用いる武器ではないが良いものだと見て分かる。
 そして、その先。声の主が向かい合っている岩壁には、ベッタリと濡れた跡が付いていた。それは丁度声の主の頭の高さにあり――実際、ゴツゴツとあの音がする度に、濡れた壁は乾きから遠ざかっているようだった。
 「……未開に降りて迷わず、未踏に入りて臆さず、名誉あるギルドの狩りびとよ……龍は呪い、呪いは軛……そして君たちは、ギルドの剣とならん」
 かつて、自分と同じように狩りびと――だったであろう者の声を聞く。
 それは慈悲だった。同族、あるいは同胞に対する、憐憫と慈悲の、実に優しげな情であった。
 延々と繰り返される言葉の中に、コツリと小さな足音が混じる。
 そうして、洞窟に何時ぶりかの静寂が訪れる。
 狩りびとが居た場所に残されたギルドカードには、連盟員である証の背景が描かれていた。

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