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戦争が起きる発端と言うものは、案外皆小さなものなのです。
僅かな目的の差。微かな色の違い。微小な諍いの果て。
どれも皆、小さな小さなものなのです。
さて、この世界には過去に三度、全てを巻き込んで燃え上がった戦火が御座います。
一度目は十九世紀前半頃に。
二度目は十九世紀後半頃に。
そして三度目は、つい十数年前に。
回を重ねるごとに人を殺める為の道具はより攻撃的により効率的に進化して行きましたのは、一度目と二度目から分かっておりました。毒ガスが生まれ核が生まれ、また実際に使われました。
そして今回は、なんとも酷たらしい。
生物兵器で御座いました。
***
収容所とは名ばかりの監獄であった。
否。豚舎以下の劣悪な環境で、監獄の方がまだマシな生活を送ることが出来るのだろう、と彼は思った。
ここに来て何日が経ったのか、青年は数えることを止めている。
ただ、日が昇れば明るくなり日が落ちれば暗くなる、ということで青年はまだ自分が収容所(ここ)にいるのだ、と認識していた。
薄汚い場所である。
ろくに掃除などされていない床には何時誰がぶちまけたものかわからない吐瀉物や血液がこびりついていて変色しているし、風呂場などない収容所には労働したままのむさ苦しい汗の臭いが漂っている。
またそれと同時に収監者たちも過酷な環境の中でまともと言えるような者は皆無に等しかった。
収監されている者たちは皆同じ人種であった。
つまり、この収容所は人種差別の象徴のようなものであった。
BGM:囚人&紙飛行機(囚人p)
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