――きっとね、ずっと、ずっと。そう、ずっと。
近くで君を見ていたから。この感情は薄れてしまう。写真のように褪せていく。けれど。
胸の、奥の奥の奥の深い深い海の中で未だ、漂うように溺れているんだ。さて。
「どうする?」
――君は僕の手を捥いで走り去っていく。僕はただそれを見ているだけ。でも、なんだか。
つまらないから。その黒い、僕と色違いの背中を余っていた足で踏みつぶした。
僕を見るその表情は、痛みか恐怖か、何かで歪んでいた。僕は他人の心の中身なんて、それがたとえ兄弟であっても、解らない。だけど。その顔は、とてもカワイイモノに思えた。
それがたくさん欲しくて。僕は何度も君を傷つける。
「止めないでよ。」
――なんだか変だ。何がどうしてアレがコウしてこうなったどうなった?
君は赤い水たまりを作って。その中に沈んでいる。反応も、乏しくなっていく。その先は。
違う。違う。僕はこんな君が見たかったんじゃない。君は震える声で僕に言う。
「止めて。」
敬語じゃ、ない。君の瞳が揺れている。何故か。胸が痛くなった。
けれど。違う。うるさいな。どうだっていいだろ。黙って従え。そんなカナシソウな顔しないでよ。
僕はそんな顔しないんだから。君は、僕。デショ? もっと。さっきみたいに。カワイイ顔を、して。よ。
――君は僕の手を付いてふらふらと起き上がる。僕は、やっぱりそれを見ているだけ。でも、なんだか。
ふと、起き上がる前に。君を押し倒す。痛みに呻く君を無視して僕は。君に笑いかける。
「言え。僕が好きだろ?」
――あぁ。そういえば。僕はいつも君を待っていた。
僕が片付けられないモノをひとつひとつ丁寧に片付けて君は。君を待つ僕の手を引こうとするんだ。
僕は、その温もりが好きで。ずっと君を待っていた。
君と二人で一つで。その半分のひとつずつでしか存在出来ない僕を。愚かしく。僕は自分で殺したんだ。
君は僕なんかじゃなくて。僕は君じゃなくて。二人とも“個”はあるけれど。
君と僕は二人で一つの意味を成す存在だった。
――僕は君の手を引いてその場から走り去る。この世界には。たくさんの僕と君が居て。“僕”はその中のひとつでさ。
かっこよくもなくって見苦しく足掻いて生きるくらいバカだけど。でも。それでも、この“僕”がたくさんの僕と君の中で生き残れたのは、たぶん。てゆーか絶対。君のおかげで。だから僕は君の影になって。ずっと側にいるよ。
――その痛みも存在も、ぜんぶぜんぶ愛すよ。
心壊サミット
(僕らは同一なんかじゃなくって。だからこそ、この感情が生まれた)
BGM:心壊サミット(DECO*27)