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ハイタくんとハスターさんにシェフィやって欲しかったので
*ひつじを1000匹に増やさないと出られない部屋*
「……詰みました、」
ゲームを始めるために並べた、その最初の手札を見て羊飼いは言った。詰んだ、と。
ゲームが始まる前から項垂れた人間の姿に、神様は大袈裟ではないかと人間の手元を覗き込んだ。幾ら引きが悪くとも、全く手立てが無いことは無かろう、と。
そして目にしたのは、嵐に始まり疫病、メテオ、シェフィオン、落雷、狼、霊感、落石と言う札の柄だった。
「仕切り直しましょう、この手札ではどうにもなりません」
肩を落としながらそう言い、手札を一つの山に纏めようとする羊飼いに、しかししっかりと手札を見ていた神様はそれを止める。
「……? なぜ霊感のカードを使わない?」
「えっ? ああ……だって、そんな、先見のようなこと……ただの人の子である私などには大それたことです」
「たかが遊戯だろう……」
「いえ、いえ。されど遊戯です」
「……」
神様は困ったように笑う羊飼いの手からカードを抜き取る。そうして、そのままカードを並べ直し始めた。
しかし神様は一枚だけその手の内にカードを残す。
並べられたカードを見て、神様を見て、羊飼いは首を傾げる。
「あの、ハスター様?」
「……ハイタよ。人の子よ。私はお前たちのそう言った姿勢を、存外好ましく思っている」
神様の人差し指と中指に挟まれた霊感のカード。それを、捨て場に動かして、神様は山札を眺め始める。
つまり、自分の代わりに事態を打開し得るカードを選んでくれるらしい。
救いの手を差し伸べてくれた神様に、羊飼いは感極まったように叫んだ。
「ああ慈悲深き神ハスターよ!やはり貴方は私の救いの神なのですね!」
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