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診断さんのお題を回収。落書き程度なので巻き気味。
直接的な描写や表現は無いけど朝チュン的なアレ。

カッコいいハンターさんは居ないです( ˘ω˘ )
NPCが結構喋る。

備考:拙宅のハンターさん(青い星)には現大陸に弟がいる

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 その夜、酒場「星の船」は酒場らしく酒を楽しむ狩人たちで賑わっていた。
 5期団の狩人たちが、狩猟終わりに宴会を開いていたのだ。一組、また一組と狩りから帰還した狩人たちが加わり、星の船は季節の宴が開かれている時にも負けない騒ぎであった。その中に彼の青い星もいた。食事場へ行くつもりが星の船まで来てしまったらしい。そこを上機嫌に酔った同期の狩人に捕まり、酒宴の輪に引き摺り込まれたという図である。飲めや食えやと次々に出される酒や料理を――少なからず煽られたこともあり――空けて行くうちに、青い星にもまた酔いが回っていった。
 そこへこれまた珍しく顔を出したのが1期団の先生だったわけである。
 多くのクエストでフルフェイスの防具を着け、表情が分かりづらいことの多い青い星は、けれどその日は眼帯状の頭部防具を装備していた。酒が入ったことでやわらかくなった表情が、先達を捉えたことでふにゃりと崩れる。そう言えば青い星は先生に懐いていたなぁと誰からともなく笑い声が漏れた。

 調査団の青い星と呼ばれるハンターは特等マイハウスで目覚めた。昨夜は確か、星の船で開かれていた宴会に巻き込まれて、それで――。
 たらふく飲んで食べて、と考え始めたところで自身が防具を全て脱いでいることに気付いた。防具どころかインナーまで寝台の下に脱ぎ捨てられている。ついでに隣、ごく近いところから誰かの寝息が聞こえている。つまり自分は誰かと同じベッドで朝を迎えたということだ。素っ裸になっているのは、偶々だと信じたい。酒に火照った身体が「暑い」と脱いだだけだ、と。
 じっとりとした汗を背中に感じながら、ハンターは同衾相手と自分が何も無かったことを確かめるために首を回す。そうして、自分の隣で眠っている人の身体に赤い噛み痕や鬱血痕や爪痕が残っているのを見た。ダラ、と嫌な汗が肌を伝う。思わず固まったハンターはそのまま相手の姿を更に視認してしまう。頭部と四肢に残されたままの防具はレイア装備――しかも旧式の、剣士のもの。ダラダラと冷や汗が停まらなくなる。ときどきピリリと痛む背中には、おそらく、否、きっとこの人が付けたであろう引っ掻き傷が残っている――。
 声にならない悲鳴を上げて、ハンターは辛うじてインナーを引っ掴み、特等マイハウスから転がり出た。
 「――それで、思わずその場から逃げてきた、ということですわね?」
滅多に見ない勢いで特等マイハウスから転がり出てきたハンターに何事かと話しかけた――包囲したとも言う――集会所の受付嬢たちは事の次第を聞いたわけである。最低ね、ひどーい!と闘技大会受付嬢と物資補給所の同期に言われ、背中を丸めたハンターにグサグサとダメージが入る。その自覚はあるのでなおさらである。でもだって仕方ないじゃないですか、酔った勢いで皆の先生に手を出したなんて、逃げ出したくもなるじゃないですか。
「それで、逃げ出したことはとりあえず置いておいて、後悔はしてらっしゃるの?先生とのことを、無かったことにしたい?」
ぐずぐずと鼻を鳴らすハンターを待っても埒が明かないと思ったのだろう、サークルやお知らせの案内嬢がハンターに訊いた。ハンターは、案内嬢の言葉にピクリと動きを停めて、それから首を横に振った。その時ハンターの脳裏には昨夜のあんな風景やこんな光景が次々に甦っていた。絶景である。そんなハンターの答えに、集会所の受付嬢がふっと微笑んだ。
「じゃあ、ハンターさんはそれを先生に伝えるべきですね」
けれど集会嬢の言葉にハンターは不安そうな顔をした。自分が好意を伝えたとして、先生は自分を許してくれるだろうか。そんなハンターの不安を汲みつつ、それでもその背中を叩いたのは闘技大会の受付嬢だった。
「……アルコールが入っていたとしても、先生ほどの実力があれば、本当に嫌なら事が済む前に貴方の腕から逃げ出せたんじゃなくて?」
「それって、もしかして、先生は青い星くんを受け入れてくれたってこと……ですか?」
きゃあ、と黄色い声を上げて物資補給嬢が微笑む。幸せそうな笑顔だった。
「だから、そういうことでしょう?」
べそべそ泣いていたハンターが顔を上げる。やや呆れながらも、穏やかな笑みを浮かべる案内嬢。迷子の子供のような顔をしたハンターにしっかりと頷いて見せる姿は、間違いなく「お姉さん」の姿だった。他にも女性陣の声援を背中を押され、ハンターは逃げ出してきた特等マイハウスへ通じる扉へ向かう。

 「酔った勢いで手を出した挙句、翌朝やらかしたことにビビッて相手をベッドに残して部屋から逃げ出したなんて知ったら若旦那(おとうと)さんは旦那さんのことをどう思うのかニャ」
オトモの真っ直ぐな言葉はハンターの心を部位破壊した。
 特等マイハウスに足を踏み入れ、寝台に近付いてみると、そこには件の先達とオトモがいた。先達の隣に、先達を守るようにオトモがベッドに潜り込んでいた。そして寝台に近付いてきた旦那さんたるハンターを見上げ、先程の言葉を放ったのだ。胸を抑えてハンターは寝台の傍に膝をつく。泣きそうだった。特等マイハウスから再度撤退しようかと胸中で検討し始めるハンターの顔へ、ゆるりと手が伸ばされた。
 使いこまれた防具に包まれた指先が俯いたハンターの頬に触れたと思うと、そのまま顔を包んだ。この場でこんなことができるのは一人しか思い当たらず――ハンターは顔に当てられた手に自分の手を重ねながら恐る恐る顔を上げた。
「――大事、無い、」
目の前にはやはり先達が、シーツに包まりながらハンターへ腕を伸ばしている先達がいた。ぬいぐるみでも抱きかかえるようにオトモを胸に抱いている姿に、かわいい、と反射的に思ってしまった。しかしすぐに未だ鋭いオトモの視線を感じて言葉を呑み下す。そうだ、この先達に、まず言うべきことがある。
「ぁ、の………せん、せい……おれ、」
口の中がカラカラで声が掠れる。集会所の女性陣たちには大丈夫だと背中を押されたが、やはり怖くて逃げ出してしまいたい。喉と舌が震えて、ツンと鼻の奥が痛くなる。じわじわと滲み始める視界に、早く言ってしまわないと、と頭では分かっていた。浅くなり始める呼吸を押さえつけて、ハンターは何とか想いを伝えようとする。
「おれ、せんせいが、すきっ、好き、で……っ、でも、こんな、酔った勢いでなんて、するつもり、なくて――、ごめ、ごめん、なさい、ごめんなさい……っ、でも、俺、先生、ほんとうに好きで、おれ……っ!」
結局、しゃくりあげながら謝罪と好意の言葉を繰り返すだけになったハンターの頬を撫でながら、先達はその不格好な告白を聞いていた。普段毅然としている狩人の幼い姿に、思わず笑みがこぼれる。
「……そなた、だから、某は身体を、許した……。好いた者に触れてもらえるならば、酔いの過ちでも、一夜の夢でも構わぬ、と――某は、そなたに、」
先達は最後まで言えなかった。勢いよくがばりと仰向けにされ、腹を跨ぐようにベッドへ乗り上げたハンターに抱きすくめられたからだった。肩や首筋にさらさらと髪の当たる感覚。咄嗟に飛び退いたオトモが先達にマーキングするように頭を擦り付ける旦那さんの姿を生温かい眼で見ていた。
 「先生……、先生、好きです。俺と、付き合ってください、先生」
「か、構わぬ、が……その、某のような老体で、良いのか……?」
「先生が良いんです。先生が心配だとおっしゃるなら、俺は今から貴方を抱いて、隅々まで愛していると証め゛っ゛――」
「朝から盛らないでくださいニャ、旦那さん」



「どう? 上手くいったみたい?」
「そうですわね。とりあえずは大丈夫そうですわ」
「青い星くんも先生も幸せになると良いねー!」
「今日はお祝いの宴でも開きますか?」
「え?なに?何スか?祝宴開くの? じゃー俺は先輩方にも声かけてみるッス」
「……というか、あの、皆さん扉に耳近付けて何を……いや良いです、何となく分かってしまう……」

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