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相変わらず防具≠ハンター

・告白←イマココ

・狩猟対象

・アイテム献上

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 今や「青い星」などと呼ばれるようになったハンターが、年相応に俗世の経験を経ていることは誰が気にすることでも無い。誰にでもあるし、これから得ていく経験だからだ。

 つまり、端的に言えば青い星の恋路だとか下事情だとかは、調査員各位が構うようなことではないし--構いたくも無いだろう。首を突っ込んだところで、この奇人変人の集団だと名高い調査団でも指折りの曲者絡みの案件など、面倒なことは目に見えている。こう言ったことは、傍観に徹するのが自衛であり最善策なのだ。

 それなのに--。

 

CASE1

 「はぁ……拠点(ここ)に帰ってくる度、先生に会いに行く度、寝台(マイハウス)にお誘いしようとするが、いざ先生を前にすると胸が苦しくなってお誘いの言葉どころじゃなくなる……と、」

 運悪く、青い星その人に捕まり、直々に相談--というか愚痴--を聞かされているものが、いるわけである。

 「あの、すみません。色々ツッコみたいんですけど、まず貴方、先生と付き合ってるんですか? 誰が誰に告白したされたって話題、まったく耳にした憶えがないですけど」

 一等マイハウス--いわゆる、居住区である。そこの、それなりに奥まったエリアの一室に彼らはいた。

 「え?告白はまだ?っていうか既成事実を作っておいて断られる可能性を潰しておきたい? 別のモノが潰されても文句言えない言い分ですよソレ」

 「獣だ。こいつケダモノだぞブリゲイド」

 「獣でももう少し相手を思い遣ると思いますよ、ドラケン」

 とりあえず、室内の人影は3つ。部屋の主であるブリゲイド、通り魔的に押し掛けて来た青い星、何も知らずに遊びに来たドラケンである。

 彼らが話している途中、部屋の前を通りかかったレウス装備が「青い星には気を付けるんだぞ」と隣を歩くレイア装備を心配したが、当のレイア装備はフフフと笑って受け流していた。

 「……と言うか、先生に告白して断られる可能性があるんですか?」

 何か先生に意地の悪いことでもしたんですか、と訊いてくるブリゲイドに、青い星は首を横に振る。なら素直に告白すれば良いじゃないですか、とブリゲイドは不思議そうに言う。

 けれど青い星は相変わらず拗ねた子供のような顔でブリゲイドに言うのだ。

 「……告白の仕方が分からない?今までアプローチもモーションも何もしてないのにいきなり告白してちゃんと先生に気持ちが伝わるか不安?」

 「むしろその状態で行動を起こそうと思ったのスゴイな。しかも諸々の段階をすっ飛ばして」

 いっそ感心した様子でドラケンが青い星を眺める。

 「なあ、あのさ、まずその、先生の気持ちをそれとなく窺ってみるとかからじゃだめなのか? やっぱこういうのは焦らず行くべきだろ」

 「そうですねぇ……まずは先生とお近付きになることが先決では? そうすれば自ずとそういう行為にも及……え?もう我慢できない?一刻も早く先生とひとつになりたい?」

 つまり今まで抑えてきたものが爆発したらしい。そして限界らしい。

 そんな様子は一切見えなかった。ずっと変わらず調査と狩猟をしていたように見える青い星は、なるほど、表情のあまり変わらない朴念仁のような人間だ。

 しかし何と言うか、不器用と言うか、そういう経験はある――と聞いた――はずなのに、こういうことは下手なのだな、と呆れも感じる。

 現大陸とやらでは、どのように相手を選んで、行為に及んでいたのだろうか。まさか毎回ケダモノが如く相手をマイハウスに引き摺り込んでいたわけでもあるまい。異世界の魔獣の素材から、新大陸で作られたドラケンには分からなかった。

 「……現大陸に居た頃は、いわゆる娼館を利用していたそうですよ。で、特定の相手に執着したこともない、と。だからまぁ、おそらく青い星に取っては初めてなんでしょうね、恋をするというのは」

 頭上に疑問符――と言うか、実際小首が傾いていたドラケンにブリゲイドが耳打ちをしてくれる。

 疑問に答えてくれたブリゲイドに、ははあ、とドラケンは頷いた。

 つまり青い星は恋愛童貞とやららしい。

 ちなみに恋愛童貞と言う言葉は女のαガロンが男のαガロンを揶揄っているのに使っているところを聞いたのだ。その後すぐに何かを言い返されて女のαガロンは顔を真っ赤にして煩いだか一緒にするなだかと吠えていたが。

 「ハー……まあ、なんだ、お前の気持ちはよく分かった。お前が先生と話すときにはやたらと口数少ないのも、つまり見つめ合うと素直にお喋りできなくなる類の症状だろ?」

 ブリゲイドの耳打ちによって青い星の状態を把握したドラケンが、確認の意をもって青い星当人に訊く。

 それは拠点で見かける度に感じていた疑問だった。

 何故他の調査員とはそれなりに世間話らしい会話をしているのに、先生とは一言二言の短いやり取りが多いのだろう、と。

 そしてドラケンのその推測は当たっているようだった。

 青い星が両手で顔を隠して、ゴロゴロと腰を下ろしていたベッドの上を転がり始める。

 小綺麗に整えられていたシーツや掛け布団が、しわくちゃになっていく。

 「あああ!やめてください! 僕の寝床!特に大した理由も無く荒らさないでください!!」

 けれどベッド──部屋の主の悲痛な訴えは、悲しいかな、青い星を止められる程の力を持ってはいなかった。

 ごろごろ、ばさばさ、と重量物が布の上を転げ回る音。

 それが止んだのは、たっぷり数十秒は経ってからだった。

 ぐしゃぐしゃになった寝台を前に、ブリゲイドが肩を落とす。

 「よくまぁこの限られたスペースでこんだけ転がれるな」

 スゴいな、と妙な所を褒めながら肩を叩いてくるドラケンにブリゲイドは唇をヘの字にした。どうしてそこ感心するんですか、感心するところじゃないでしょう。しかも件の我らが青い星は器用にも、身体に掛け布団を巻き付け枕を抱き込んでいた。

 このままふん縛って滝に吊してやろうかと言う考えが一瞬脳裏を過ぎる。しかしそんなことをしたところでこの青い星がどうにかなるとも思えない──恐ろしいことに、どうにかなる様が想像できない!──ので、ブリゲイドは自力で芽生えた殺意を摘み取った。

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