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​ R15くらいになる予定だったのに健全とかどういうことなの……(´・ω・`)??

前半の尾行→もしかして:某暗殺者ゲー……ゲフンゲフン

流血もとい負傷描写有。いつもの誰おま。

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 絢爛豪華――と言えるほどではないが、それなりに豪勢なパーティーが開かれていた。そこは新興の小中勢力の根城だった。その勢力は金がある者たちが立ち上げたから、まずは景気づけにと開かれたのだろう。笑い声や食器の擦れ合う音が時々外に漏れ聞こえてくる。品のない活動音を拾い上げて男は眉を顰めた。

 今の問題は中小勢力ではない。そのパーティーに招かれた、別勢力の一員である。自分が属している組織より格下であることには変わりないが、そろそろ目障りになってきた。掃除時だろう、と思ったのだ。どうせ新興勢力の接待パーティーに最後まで居ることもあるまい。標的が途中で抜け出す瞬間を待つ。空き家となった民家の窓際から、パーティーが開かれている家屋――特に出入り口――を見下ろす。

 そうして、しばらくの後、微かな風の揺らぎを感じた。

「そろそろ動きがあるだろう。複数人で出てくるようだから間違えないようにな、副官殿?」

常人ではまず気付かないだろう空気の動きを追って視線を暗い室内へ向けると、今回の協力者がいた。肩に乗っている大型の鳥が、おそらく先ほどの微かな風をその翼で起こしたのだ。

「……無駄口を叩くな。先に黙らせるぞ」

「ふふ。それは恐ろしいな」

埃や砂利の混じった床を、足音ひとつ立てず歩み寄って来た協力者は、男と同じように窓際から外を臨む。

 果たして協力者が言った通り、さして時間を置かず標的は姿を現した。数人と話しながら道へ出てくる姿。それを見とめて、ふたりは目配せをして行動に起こす。

 

 標的に気付かれないよう、主に屋根の上から尾行を行う。また後を追っていくだけではなく、少し先回りをして息を潜め、その行き先を視線で追う。底が軟らかいとは言えない靴を履きながら、猫のようにふたりは夜の帳が下りた石造りの町中を駆けていく。幸いにも標的には程よく酔いが回っているらしい。素面の標的を追うよりも、尾行が楽に感じられた。

 けれど人の行動と言うものは予測がし難く――不意に立ち止まった標的に、追跡者たちに僅かな緊張が走る。

 標的よりも先行し、路地の陰から様子を窺っていたのだが、よりによって標的が周囲を見回し始めたのである。しかも暗い路地の中を窺うように、視界に入った路地の一本一本へ向いた顔は十数秒の間動かされない。可能性は低いが万が一――と男が傍らを見れば、協力者の彼も大体同じ事を考えたようだった。

 手早く向かい合うかたちで身体を寄せ合い、夜の暗さの中で見れば、一組のアベックが抱き合っているような影を作る。華奢とはいかずとも、彼が中性的な線を持っていることで、その影はより自然に見えた。男の耳元へ口を寄せ、それらしく振る舞ってくれ、と彼が苦笑した影などは、口付けを交わしているようにも見えただろう。自分よりも背の低い彼の髪が首元をくすぐるのを感じながら、下ろしていた手をそれらしくするりと彼の腰へ置いた。武骨な男の指が触れた腰が、ぴくりと小さく跳ねる。

「ふっ……くす、くすぐったいのだが、」

そんな場合ではないだろうに、こぼされた微かな笑声は、ひどく幼気に聞こえた。

 

 翳った月が照らす夜を往くと、人気は進むほどに消えていった。

 道中、何度か対象を見失いそうになりながら――酔っている標的が道を誤ったり、側溝や蓋の外れたマンホールに落ちかけたりして、であって決してふたりがヘマをしたからではない――その背を追う。大きな事故もなくそれが出来たのは、状況を高い位置から俯瞰することの出来る彼の愛鳥が居たからと言っても過言ではないだろう。

 街の中心を離れた郊外。その小高い場所にある屋敷に標的は入って行った。

「ここが本拠地か……街にあった根城が小さいわけだ」

「富裕層の屋敷群にシレっと混ざっているな。木を隠すなら森の中、と言ったところか?」

適当な屋敷の屋根の上から屋敷の中に消えた人影を見届けて、ふたりは周囲をぐるりと見渡す。時間帯故、灯りはポツポツとしか見受けられず、遠くに見える街の灯が近くに感じられる。リィリィとどこかで鳴いている虫の音を聞きながら、まだ灯りの灯っている件の屋敷へ、さらに近付く。

 闇夜に紛れながら外周を辿り、そこから見える見張りの人数や立っている場所、窓や扉の位置を把握する。けれどもちろん、見上げる高さの塀に囲まれた、その中まで見ることは出来ない。

 多勢に無勢である現状、無茶に立ち回り後日への支障を残す可能性は下げておきたかった。ただでさえ所属している組織の頭数は――現首領のおかげで――少ないと言うのに、対処しておきたい件はなかなか減らない。やはり独立しよう、と男は胸中で呟く。今回のことは近い未来、独立した際の障害を少しでも減らしておこうと考えた男の独断でもあった。

 男が胸中でひとり頷いていると、彼が何やら鳥に指示を出して空に放った。そういう種類なのかどうか知らないが、羽音一つ立てずに屋敷の上空に上がった鳥の影を見上げる。その主はと言えば、情報端末を取り出して、何やらプログラムを開いているようだった。何をしているのかと覗き込めば光量の抑えられた画面に塀の中の写真が展開されていた。それらを手早く整理し、情報をまとめていく。そうして、簡易的にではあるが、屋敷の概要を得る。

「内部の構造は窓の画像からしか得られなかったが――七割強は把握できたぞ」

情報端末上でいくつものプログラムを開いたまま彼が顔を上げる。常時着けられているバイザーは、これも情報端末のひとつになっているらしい。薄らとそこに画像の枠や小さな文字を見ることが出来た。

「見取り図含め情報を渡そう……端末は?」

言われて、普段連絡を取るくらいにしか使っていない携帯端末を手渡す。受け取ったそれを、普段使っていない型だろうに、慣れた様子で操作していく。そしてその姿はほんの十数秒程度のことだった。返された端末の中には確かに見取り図のようなデータが加えられている。

「データを開いて、赤い点がお前だ。この携帯端末と連動して動く。黄色い点は敵だが、写真で得た場所に配置しているから目安程度にしかならない。まぁ、キラーコンドルの情報も同期できるようにしておいたから、キラーコンドルが見ている範囲は動きもわかるだろう。他は……聞き耳なんかで補ってくれ。なるべく穏便に済ませたいだろう? 私は済ませたい」

「……頭は俺が潰す。邪魔にだけはなるな」

簡易データに相応しく簡易的な説明を受けた男は簡潔に告げて立ち上がる。

「私たち――私の不利益にならない限り副官殿の、ひいては組織の邪魔などしますまい?」

慇懃無礼に微笑を浮かべながら彼が小型のヘッドセットを手渡す。おそらく使うことはないだろうが、と言われたそれは保険のようなものだった。他の者と組んだなら、まず目にかかることはない装備を身に着ける。そうして、二手に分かれて、敷地内への侵入予定地点へ向かう。

 作戦は至って簡単。陽動と奇襲だった。

 

 考え自体は至極まともというか、妥当である。

 夜も更けたところへ客を装った彼が正面玄関の扉を叩き、なるべく多くの人間を静かに集める。大方集めたところでそれらを片し、同時進行で手薄になった屋敷の中へ男が侵入する。その目的は首領の首である。透視能力などないから目星をつけた部屋を回ることになるが――さして時間はかからないだろう。

 けれど、予定していた最善で物事が終わりまで運ぶことなど、稀にしかないのだ。

 ゴキンッと屈強な男の首を回し、その体を床に転がした彼は、同時に聞こえてきた騒々しい音に双眸を丸くした。聞こえたその音は、扉が蹴破られたような音と――拳銃の発砲音に、よく似ていた。

 事実、よく似ている、どころかそのものであったわけだが。

 にわかに屋内が騒がしくなる。そこで睡眠をとっていた者たちが起き出し、何事かと顔を出し始めたのである。無論、正面玄関で仲間だった屍に囲まれ立っている彼も見つかる。

 怒声と言うよりも驚愕に近い叫び声を上げながら走ってくる敵――ではなく、その頭上の豪奢な照明へ銃口を向ける。使うことはないと思っていたが、こうも賑やかになってしまっては仕方あるまい、と引き金を引く。天井と繋がっていた鎖が打ち抜かれ、派手な音が硝子や金属と共に砕け散った。

 男の方はと言えば、いかにもな雰囲気の扉を見つけ――他の扉には無かった、組織の紋章もあったことだし――一気に片を付けようと蹴り破っていた。のだが、そこに目当ての人物はいなかったのである。代わりに顔を見たことのある幹部連中が何人かいた。会議か何かの途中で、偶々ボスが席を外しているところに来てしまったらしい。ものはついでと銃を抜いた男は躊躇うことなく発砲した。

 手早く幹部たちを片付け、銃声を聞きつけ馳せ参じた構成員たちを伸していきながら目当ての首を探す。装填していた分を撃ち尽くした銃は、再び弾を込めるまで鈍器としてしか使えない。端末で現在地を確認するも、部屋数の多さ――敷地の広さに眉間に皺が寄った。

「結局穏やかではなくなったな。私の苦労が水の泡だ」

ザザ、と耳元で音がしたと思えば、浮かべているだろう苦笑が容易く想像できる声。

「苦労と言えるようなことをしていたか? そんなことよりも目的の頭が見つからん」

「ふむ?つまり二階にはいないと……こちらでも見かけていないぞ。もう一層あると見ていいかもしれないな」

「……屋敷を施錠しろ。外と通じる扉と窓だ。中に居る人間を誰一人逃がさんようにな」

「簡単に言ってくれるな、副官殿は。システムと繋がっている箇所は出来るが、」

「手動ならばそこまで行けばいいだろう」

「――……お言葉のままに」

通信が切れ、その数秒後にカチリ、ガチャン、等の鍵が閉まる音があちらこちらから聞こえてきた。同時にガタガタと閉じられたそこを揺らす音。侵入者を阻むための設備が自分たちの退路を断つものになるとは考えてもいなかっただろう。そして、再び通信が入る。

「予想した通りだった。もう一層あったぞ。地下だ。残っているのはそこだけだ」

「そうか。現在地は」

「現在地は、そうだな、コントロールルームと言ってもいいな、ここは。この屋敷の正確な情報を送る」

その言葉とほぼ同時に手中の端末の画面が光を灯す。画面にはそれまでよりも詳細な――もとい、精緻な図面が送られてきていた。屋敷の監視カメラや警報機器の類は完全に掌握したらしい。

「私は少し探したいものがある。幸運を、副官殿?」

「……好きにしろ」

 

 シンと静けさの下りた屋敷の景観は悲惨なものであった。否、瓦礫の転がるその風景は、栄華と衰退を象徴しているようにも見え、感嘆の息を零す者もいるだろう。

 明滅する照明の中、土埃と薬莢が転がる廊下を悠々と進む足音がひとつ。それはある扉の前で立ち止まった。

 扉と言っても、吹き飛ばされてその役目を果たせなくなっている板を踏み越え、彼は灯りの無い室内に入る。そこには色濃い戦闘の跡と、壁を背にして座り込んだ男の姿があった。

「大立ち回りだったようだな?」

クスクス小さな笑い声をこぼしながら近付く彼に、その声を聞いてから気が付いたらしい男が、伏せていた目を声の主へ向ける。小さな怪我や汚れを纏いながらも悠然とした歩みは常と変わらず見えた。

「――探しものは、見つかったのか」

「……いや、ここにはなかった」

ジャリ、と砕けた壁の欠片を鳴らして、男の前で立ち止まる。

 周囲の状況――本命としていた人物含め、何人もの敵を屠ったことは容易に判る。相手の数に対して、手持ちの弾丸では一人に一発使ったとしても足りないことは彼も知っていた。つまり男は転がっている屍のほとんどを肉弾戦や近接戦で作ったことになる。にも関わらず、一目で命の危機に迫る傷を負っていないことが判るというのは、さすがと言うべきだろう。とは言え、そのまま放置すれば出血や衰弱、あるいは感染症なんかで死にかねない状態だが。

 膝を折り、手早く――簡略的に――怪我の具合を診る。そうすれば案の定、手当をして安静にしているに越したことはないと見えた。

 肩を貸して立ち上がり歩く手助けをしてやれば、男は素直に現場から離れようとした。命あっての物種を体現するかの如く生に手を伸ばす姿は、彼にとって好ましく映る。

「…………なぜ助ける?」

屋敷の車庫で拝借した車で街への道中、男が訊いた。

「あぁ――まだ、死なれては困るからな」

少なくとも男は初めて見る、ハンドルを握っている彼は、問うた者の方を振り返ったりはせず、そう答えた。それは実に愛嬌のある答えだったけれど――額面通りに受け取る程、男の属する組織と彼らの仲はぬくぬくとしたものではなかった。

 

「――舞台に上がる役者というものは、欠けてはならない。誰か一人でも欠員すれば物語は上手く運ばなくなる。それは私たちの望むところではないし……なにより、共に仕事をしていて一人死なれては寝覚めが悪いだろう?」

真意かどうか釈然としない言葉が吐かれる。

 街に入る前に車を降り、それからは足で自分たちの根城まで戻った。意識がしっかりしていなかったことに加えて、見慣れない道を通った気がするから、はっきりとは帰路を覚えていない。

 距離的なこともあり、彼の自室に運び込まれる。そして、手当をされていた男は不意に吐かれた言葉に閉じていた目蓋を開いた。否、不意と言うほど唐突に喋りだしたわけではないのだが、茫洋としていた男からすれば不意に感じたのである。痛みを伴わぬ処置でもあるまいに――男の様子を察した者はその日数度目の苦笑を浮かべた。

「……だいぶお疲れのようだな。今日は泊まっていくと良い。ベッドは貸そう」

パタン、と処置に使った道具を仕舞った箱を閉め、立ち上がる。男の方も特に異存なく、利用できるならしてしまえと指で示された寝室へゆっくり移動する。

 妙に生活感が感じられないのは寝室も同じだった。病院に置いてあるそれのように整えられたベッドへ潜り込むと、片付けを終えたらしい部屋の主が顔を覗かせた。

「お前は……どこで、寝る……つもり、だ……?」

「私は、ソファでも使うかな。ノイズメイズのところへ行っても良いが」

さらりと親友の部屋へ押しかける旨の発言をして彼は静かに笑う。腰を落とされたベッドの縁はギシリと中の発条が軋んで音を立てた。そうして半ば振り返るようなかたちで男の方を見る姿は、親がベッドの中の子供を見るそれと似ていた。

「おやすみ、スタースクリーム」

上体を折って額に口付けを落とす行為もまた――。

 それはたぶん、習慣のようなもので深い意味などないのだろう。十分に、十二分に、理解できていることだった。

 癖でやってしまったが怒るだろうかと呑気に思ったが特に何も言われなかったので胸を撫で下ろす。ここではどうも組織の頭以外、若く見えてしまって仕方がない。彼らにとって外見はほとんど歳のあてにはならないし――実際、彼は組織の頭と同じく年長の部類に入る。

 

 今日の成果を親友に報せておくかな、と腰を上げようとして、それは叶わなかった。

「……ここにいろ」

掴まれた手に視線を向け、掴んでいる男へ視線を移す。本当に怪我人かと言いたくなる強さで彼の手を握っている手は、諾以外の返答を許さないようだった。

 

 ずるずる引き摺り込まれたベッドの中は少し狭い。あくまで一人用サイズのベッドに男二人が収まっているのだから当然と言えば当然である。着けていたバイザーをポイと抛られた彼は先程自分が巻いた包帯の白を見ていた。いっそ手荒く扱われた方が、気が紛れるのだが、それは今求められるものではないと解っている。しかしこの穏やかさは――となんともむず痒い。男が眠りに就いたら抜け出そう。彼はそう思った。

 思いながら、薬品と火薬、砂っぽさの混じった仄かなにおいに頭を預けていた。落ち着いた心音に目蓋が重たくなる。だと言うのに、気配を手繰るも男が眠る気配は無い。さっさと寝てくれないかとそっと窺っても、その虹彩の色はまだ覗いているのである。

 モゾ、と衣擦れの音が聞こえ、腰部に温もりを感じた。

「――……ぇ、」

そしてそのまま引き寄せられる。数時間前は双方仕方なしという認識で寄せ合っていた身体が、今度は意図を持って抱き寄せられた。より近付いた人肌に息が詰まり、胸が高鳴る。こんなにもパーソナルスペースを詰められたことは――たとえそれが親友相手であっても――数える程度しかない。サラ、と鼻先や下顎で擦られる髪すら熱を帯びている気がする。まるで恋人同士がするような体勢に混乱している彼へ、追い打ちがかかった。

「俺に就け。あいつではなく――俺に仕えろ」

静かに、常と変わらない調子で囁かれた言葉に、目が丸くなる。

「なに、何、を……言って、」

「俺を主としろ、サウンドウェーブ」

どうにも聞き捨ててはならない気のする言葉が、自分に向けられている。それはきっと、他意など無い、自陣営の手駒を増やすための言葉。少なくとも、彼にとってはそうでなくてはならなかった。誘う理由や体勢や、今回自分が協力者として選ばれた理由も、すべては男の目的――それは野望とも――のためだと。

 

 その言葉は彼に選択を迫っていた。言った者にそんなつもりはないだろう。あっても精々二択程度の認識だろう。けれど、彼は選べない。選んではいけなかった。たとえ今身を置いている組織の居心地に慣れてしまっていたとしても、彼と彼の親友には、為さなければならないことがある。そのために今まですべてを擲って来た。今さら別の道を選ぶなど、ありえない。あってはならない。しかし、過去の幸福を思い出させるあたたかさは、彼を少なからず揺さぶる。

 何と答えれば自分たちにとって最も都合よく事が運ぶようになるのか――彼は頭を必死に回す。顔に集まった熱や弾む胸の奥が煩わしい。同性からしても見てくれは申し分ないのだから、ましてや自分などにこんなことをしてくれるなと思う。あくまで平静を――表面上では――繕いながら、彼は口を閉じ続けた。

「まぁ……すぐに、返事、を、聞けるとは……思っていない、が」

引き寄せられ、共有される体温のあたたかさ。そして、耳に落ちていく、どことなく優しげに聞こえる静かな声。音と言い言葉と言い――温もりすら、どうしてこんな時にこんなにも優しいのだろうと、彼は目を伏せた。

 やがて規則正しい呼吸音と胸の動きが訪れ、男がようやく眠ったのだと知る。腰に回された腕はもちろん退いておらず、起こさずに抜け出せる自信は、生憎持てない。身を委ねてはいけないものだとは理解しつつ、今だけは、と彼は傍らのあたたかさにその身体を預けた。

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