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別宇宙に吹っ飛ばされた時にプライマスの力も割と吹っ飛ばされた的なそんな感じのアレでどうか一つ_(:3 」∠)_

 

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 スタースクリームが帰って来た。幽霊になって帰って来た。

 サウンドウェーブは帰還した機体を見て数秒固まった。バイザーの奥ではオプティックがキュルルと音を立てていた。見るからに不機嫌そうな相手に、彼はどう声をかけるべきか――否、そもそも声をかけたものかと逡巡した。

 ここで重要なのは、彼が相手に声をかけあぐねた理由である。平時、誰に対しても彼は大体同じ態度をとる。口調を変えることも言動を変えることも少ない。当然、ほぼ同じスペックを持つ相手に臆する理由も気圧される理由もない。けれど、しかし、この時の相手は――その機体が透けていた。向こう側の景色が見えている。なんだこれは、と思うと同時に、相手が不機嫌である理由もそれとなく察することができた。

 仮拠点の出入り口の一つで、十数秒ほど顔を突き合わせて固まっていた二機はぎこちなく動き出す。

「あぁ……おかえり」

自分を見て、処理落ちしていたかのような反応をした彼に、相手はオプティックを細めた。そんな、実に不満げな反応に彼は苦笑を浮かべながら言葉を続ける。

「ところで、任務の成果とその状態のことを訊いても良いか?」

 話を聞いたところによると、一応任務は成功させているようだった。激闘の末、気付いたら標的が機能停止し、スクラップになっていたと言う。その場には何も居らず、違和を感じることは無かったのだが、帰投中に立ち寄った星やすれ違った機体なんかに悉く反応を返されず、さすがに違和感を感じたのだとか。しかしそれ以上に無いものとして扱われたことに対する苛立ちが勝り、そちらに意識が傾いていっていたことは想像に難くなかった。

 目の前の話し相手から、躊躇いがちに――同時に簡潔、端的に――自身の姿が透けていることを指摘された相手は更に顔を顰めた。事実を述べたまでなのに、その顔により色濃く不満を浮かべられ、彼は頬を掻く。

「…………いや、そんな顔をされてもな……」

「……機体が透けていたから此処まで認識されていなかったとして、何故お前は認識できている?」

「色々と見えるし聞こえるのだ。モノが良いからな」

相手の問いに、一転して彼は得意げに言い切った。総合的なスペックは大体同じだと言っても、やはりその内訳による得意分野は違うのだと、こう言った何気ない場面で再確認される。とは言え――不完全であれど、一時的に創造神の魂を保持していた分、自分の方が少なからずスペックの上限値は引き上げられていると思うのだが。

 現在居る宇宙に吹き飛ばされてから、軽くなったような気のする機体のことを考えていると、徐に彼が口を開いた。

「……やはりその状態で居られるのはプライマスの力を持っていた影響か? まあ、なんにせよ機体(いれもの)が必要だな」

丁度、考えていたことを掠めるような言葉にオプティックを僅かに細める。小さく波立った機微を気付かせないよう、相手は彼の言葉に反応を返した。彼は既に踵を返してどこか――機体のある場所へ向かおうとしていた。

「空の機体(そんなもの)が此処にあるのか?」

「そんなものとは失礼だな。本来ならば何処の星の出身とも知れない機体に貸すことなどないものだぞ?」

未成熟の小型機体を思わせる声音が眼前の背中から返って来る。この機体は時折こんな存外愛らしく思える挙動を示す。造形が流麗であるからそう感じるのかもしれない、と向こう側の見えない紺藍色の背中を見ながら思った。

 普段踏み入らない、拠点の奥まった場所にある部屋から引っ張り出されてきたのは白い機体だった。別任務で外に出ている黒と橙色の機体の色違いである。他に違いを挙げるならば、件の黒と橙色よりも一回りほど大きいことだろうか。

「文句があるなら使ってもらわなくとも結構」

やはりどこか幼生機体を思わせる彼の言い方を聞きながら、その相手は白い機体へ腕を伸ばした。

 

 

 

「ノイズメイズ、そんな顔をするものじゃない。代わりの機体を用意するまでの一時的なものだろう?」

「(顔……)私としても貴様と同型など不本意だ」

「…………いや何て言うかその機体からスタースクリームの声が聞こえて来るって言うのがなんかアレだしそもそもその機体が動いてるって言うのもなんか、なんか……」

 

(ハイテクノロジーな星の機体だけあって使い心地はそれなりだそうで)

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