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(公式設定が把握できてないので)私的簡易設定のような

・機体ごとに意識は有る。意識というか、メモリのような。胴体パーツにある。
・なので機体が損傷して壊れてもメモリは引き継がれる。機体は消耗品。
・機体の所有者は搭乗者(パイロット)ではない。マスターとかカスタマーとかそういう。
・機体と人間は意思疎通ができる。所有してない機体とも会場なんかで。
・人間がする(できる)のはカスタムや整備やレースに送り出すことくらい。
・レース中は所有者と通信できるけど基本的に機体自身が動く。方針によるかな。

みたいなそんな感じで_(:3」∠)_

アーゲイト×キリシマ

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 ある特定の機体のパーツを組み込むと嬉しそうに見える――と、マスターに言われ、アーゲイトは首を傾げた。人間にしては起伏の少ない表情を僅かに綻ばせていたマスターは、きっとその特定の機体を把握しているのだろう。

 嬉しそう。嬉しいとは、何だろう。それは感情の名前である。データとしては知っている。ネクストが一定以上の戦果を収めたり、イカロスが敵機に圧倒的な差をつけたりした後、それをマスターに褒められている時に見せるものである。アザレアやファルガーがマスターに構ってもらっている時にも、嬉しそう、である。けれど、自分は、と思う。レースで勝てば、もちろん嬉しいと思う。しかしそれ以外の理由で。自身と同じシリーズではなく、別の――特定の機体のパーツを組み込まれて、嬉しくなる、とは。アーゲイトとて無感情ではない。しかし何故そんなことでそんな感情が現れるのか、自身のことではあるが解らなかった。

 気付かないふりをしていた――わけではないが、件の特定の機体についてアーゲイトは自覚があった。

 今日も今日とてヴァーミリオンとファルガーがエリキシルとテストプレイをしているだろう部屋へアーゲイトは向かう。変わらぬ日常が続いているならあの機体もそこにマスター代理の監督者として居るだろう。

 プシュ、と空気の抜ける音を立ててアーゲイトを認識した扉が開く。レースコースには案の定スピードに特化した機体たちがいた。予想通りの三機と、今日はイカロスも参加しているらしい。火器が火を噴く音やブースターがブーストする音、煽り合うような声がコースを駆け抜けていく。コース脇には、やはり監督者が控え、時々ハメを外すなよ等の注意を発していた。単機で監督していることが多いのだが――今回は他にも二機がいた。つまり用があると連れ出しても問題はないということである。アーゲイトにとっては代わりの監督者を用意する手間がなくなり好都合である。しかし今までその機体たちと一緒に居たのかと考えると、胸部の奥の辺りが収縮するように、微かに痛んだ。

 特に駆動音を潜めることもなくテストプレイを監督している三機にアーゲイトは近寄る。

「アーゲイトか」

最初に気付いたのは件の特定の機体だった。そのことに収縮するように痛んでいた胸部の奥が仄かに温かくなったような気がした。そうして、他の二機――ネクストとサヴァイヴもアーゲイトの方へアイカメラを向けた。

「珍しいですね。貴方もテストプレイを?」

次世代型標準機と言えど一定以上の戦果を得られる設計された、優等生とも言えるネクストが優等生らしく訊く。その問いに対して首を振りながら、アーゲイトは目的の機体――キリシマを呼ぶ。

「否。キリシマに用があって此処に来た。借りても良いか」

「そうですね――どのくらいかかります?」

「あまりかからない……と思う」

アーゲイトにしては迷いのある言い方にサヴァイヴがキュル、と小首を傾げて機体を窺った。ネクストの方は、数秒の間アーゲイトを注視して、それからゆっくりと頷きながら了解の言葉を発声した。キリシマの方も二機が残るなら問題無しと判断したのだろう、特に何も言わず首を縦に振った。

 準同型のノーマライザー二機が何やら話しているところや相も変わらずタランチュラがカグツチに興味を示している所なんかとすれ違いながらアーゲイトはキリシマを半歩分後ろにして歩いて行く。元から口数の多い方ではない二機だが、双方沈黙したまま歩いて行く姿には、特に前方の機体には何か拭いきれない違和感があった――とは擦れ違った一機のブロックヘッドが後にノーマライザーとマスターに語った言葉である。

 歩いて歩いて、人気のないところまで歩いてきたキリシマは流石に何の用かと切り出そうとして、突然の衝撃に視界がブレた。ガシャンと音が聞こえ、機体が吹き飛ばされたのだと他人事のように事態を把握する。そしてそんなことが出来るのは一緒に歩いていた機体だけだ、と。何をするのだと顔を上げようとして、その顔はグイと他者によって上げさせられた。

 器用にも銃口を使ってキリシマの顎を掬ったアーゲイトはその顔を覗き込むように近付ける。不意の出来事に対処しきれなくなっているキリシマを余所にアーゲイトは言葉を零し始めた。

「マスターに指摘され、始めて気付いたのだが――俺はお前のパーツを組み込まれると嬉しそう、らしい。多少の心地良さは感じていたが、嬉しいとは思っていなかった。嬉しいと思う理由が無い――判らないからな。あるとすればレースに勝利する可能性が上がることだ。だが俺はローズマダーの脚部やコランダムの背部なんかではなく、お前のパーツを自分に組み込まれることが嬉しいらしい」

キリシマの胸部がアーゲイトの機体に擦れ、キィ、と小さな傷を作る。

「時に、お前は恋愛と言うものを知っているか?」

「――はッ、ぁ……あ……?」

「俺にはよくわからないが、エピドートやダリア曰く、俺のこの様子はそれに似ているらしい」

そろ、ともう片方の銃口がキリシマの装甲を辿っていく。相手の気紛れ一つで頭部を吹き飛ばされる状況に機体を強張らせるキリシマへ、アーゲイトは睦言を囁くように言葉を落としていく。

「俺はお前に恋をしているのか?俺はお前を愛しているのか? わからない。だが、お前のパーツを組み込まれた時と同じように――否、それ以上に、お前と居ると、ひどく落ち着くことは確かだ」

だから、と、キリシマの機体を吹き飛ばし、動けないよう逃げられないよう、その場に押さえつけた機体は言う。

「だから、俺の傍に居て欲しい」

 

 

 

「よく承諾したな、キリシマ」

「重量に物言わせて捥ぎ取ったとかじゃねぇの?」

「あぁー、なるほど?」

「ムサシ……だったらとっくに逃げるかなんかしてるだろ、キリシマなら。んで、リジェネも悪乗りするな」

「でもオリハルコンも消化不良な顔してるね?」

「いやだってよ、さすがにあのコクハクの仕方は――ってアンタ、オレたちの顔とか分かんのか!?」

「まぁほらそこは――マスターだから?」

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