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リダ→ソドとハンターさんと嬢の話。季節ネタ的な。急いで書いた( ˘ω˘ )
リダソド書くと先生が全然出て来ない現象is何なんだろう_(:3」∠)_

色々捏造(いつもの)
喋るのは大体指南役と嬢。青い星は問題児。

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 指南役こと調査班リーダーは分かりやすい。新大陸の環境が影響しているのか周囲の人々のおかげか、年の割に純真というか純粋と言うか、裏表が無い好青年である。だからか、指南役という先輩にあたる立ち位置にも拘らず5期団――特にその推薦組からは友人のように接されている姿を時折見かける。当人も嫌がったり困っている素振りは見せず、やんちゃな弟たちを見守る気持ち――しかし実際は彼が弟のように可愛がられている場面の方が多く見かける――で接していて、その光景は遅れてやって来た青春とも言えるだろう。つまり、指南役と5期団――の特に推薦組――は兄弟のように仲が良いのである。
 ちょいちょい、とハンターが指南役の肩を叩く。それまで祖父と調査団や新大陸について意見を交わしていた指南役は、その呼びかけに常と同じように素直に応じた。
 振り返るとそこにはやはり5期団のハンターが居た。プーギーがその足元にいるのを見るに、クエストか探索から帰って来たところらしい。そしてやはり口数の多くない5期団のハンター――青い星は、自分の方を向いた指南役を数秒見詰めていたかと思うと、ちょいちょい、とやはり何も言わずに手招きをして歩き出した。いきなりどうしたんだ、とその背中に声をかけても、ついてこいと手招くばかりで、指南役は青い星の後ろをついていくしかない。
 指南役が青い星についていくと食事場に辿り着いた。そこで青い星は一先ずそのままついて来ていたプーギーを抱え、相棒である編纂者の足元に降ろす。少しして、プーギーがお食事券を探り当てる。それを青い星はありがたく受け取った。そんな風景を眺めていると、ようやく青い星が指南役の方を向いた。いつの間にか、編纂者の方も指南役を向いていた。
「来ましたね、先輩!」
「え。あ、うん……青い星に連れてこられたんだけど、何なんだ?」
「はい。実は先輩にぜひ体験して欲しい現大陸のイベントがあるのだと相棒が」
「へえ、お前たちの国の行事か。それはちょっと興味があるな」
「相棒曰く、王国の周りで流行の兆しを見せていたイベントらしいです。私も、相棒に教えてもらうまで知りませんでした」
「あちこち飛び回ってたおかげで狩りに関係ない知識まで蓄えてるのニャ……別に旦那さんのこと褒めてないニャ」
どやぁ、とでも言いたげに胸を張って見せた青い星にオトモがそちらを見ずにツッコんだ。
「それで、そのイベントと言うのがですね、普段お世話になっている人や好きな人に贈り物を贈るというものなんです。主流な贈り物は甘いものなんだそうです」
「すっ……!?」
「……旦那さんは日頃の感謝を込めてドキドキノコとシビレガスガエル、カッパーカラッパをプレゼントしてたニャ」
オトモの言葉に、それで良いのか、と3人と1匹の話が聞こえていた兄貴肌の5期団は噴き出しかけた。しかし次いで聞こえてきた編纂者の、さすが相棒は私のことよくわかってます!という嬉しそうな言葉に今度こそ兄貴肌の5期団は噴き出した。オトモの方は感謝の気持ちを表すという名目で散々なでなでもふもふされたらしい。
「……つまり、日頃の感謝を伝えるのに、何か贈り物をするってことだな。じいちゃん、何を贈ったら喜んでくれるかな」
「……」
「な、なんだ? だって、日頃お世話になってる人にって、」
「……このイベントの本命は、好きな人に想いを贈るってことニャ、指南役。旦那さんは指南役からソードマスター先生へ、贈り物をさせたいのニャ」
「それも手作りのお菓子を! ということで私も協力するためにいるわけなんです、はい。材料は相棒がクエストや探索で張り切って集めてきましたし、料理長からレシピもしっかり教わっていますのでご安心を!」
どうやら逃げ道はないらしい。一狩り行こうぜー!とジェスチャーをする青い星の横で顔を赤くした指南役がしゃがみ込む。
 古代樹の森、南西初期キャンプ。拠点内ではいつどんなタイミングで先生にバレるか分からないから、という青い星の主張によりフィールドで甘味作りをすることになったのである。これ絶対楽しんでるヤツだ、とオトモは思う。親切心も、もちろんあるだろうが、それよりも指南役の恋路――進み具合はガスガエルの歩みのよう――を進展させることを楽しんでいる気持ちの方がどう見ても大きい。我が旦那さんながら問題児だニャ、とオトモは小さく溜め息を吐く。
 ハンターという人々は、そのほとんどが料理という行為をあまりしない。切り出した生肉を焼いて食べるくらいである。それは優秀な人材が集められた5期団の中でも推薦組、今や調査団の青い星と呼ばれるまでになったハンターとて例外ではなかった。
「あっ、相棒! そのお鍋はまだ動かさなくて大丈夫です!その調味料は――うわああ、入れすぎ!入れすぎですっ!」
「……基本的に旦那さんは狩り以外ポンコツニャ。旦那さんに料理とかそんな文化的な活動は期待できないニャ」
ということで青い星は材料を切る作業だけを任されたのである。調理作業で何かしらやらかすたびにネコタク沙汰になった結果、懲りたのである。曰く、戦略的撤退だとか。ちなみに材料を切る作業自体はよく出来ている。刃物の扱いには慣れているためだろう。指南役の方はと言えば、先輩が作らなきゃ意味ないです、ということで編纂者の指導の下、なんとか調理作業に就けていた。
「……料理長とか食事場のアイルーたちは毎回こんなことしてるのか……大変だな」
「毎回と言うか、分量や配分を細かく気にするのはお菓子作りくらいだと思いますよ。だから普段は、たぶん目分量じゃないでしょうか。それでも、美味しく料理を作れるのは流石の腕前だと思います」
さすがですね、と笑う編纂者に指南役は確かにそうだと頷く。
「あとは、そうですね……ベタですけど、食べる人のことを想って作ると料理はもっと美味しくなると、私は思ってます」
だから先輩の作ったお菓子もきっと先生に美味しく食べてもらえますよ、と編纂者は言う。指南役も、自分が作った菓子を好きな人に食べてもらう風景を想像する。甘味を口にして、ふわりと雰囲気を和らげる先生。美味い、と褒めてくれる先生。自分がそれを作ったのだと言ったら、先生はどんな反応をしてくれるだろうか。知らず、指南役の口元が緩む。
 けれど、そこでふと、自分と先生についてどうしてこの子は知っているのだろう、と思った。以前、青い星に訊いた時は、見てれば分かる、と言われたけれど――。
「……俺、そんなに分かりやすかな。先生のこと」
「見てれば分かりますよ、先輩が先生のこと大好きなのは。相棒と答え合わせもしましたし」
揶揄するでもない、柔らかな笑みを浮かべた編纂者が言う。つまり自分は自分で思うより分かりやすいらしい。まあ隠すようなことでもないけれど、それでも気恥ずかしさはある。そっか、と指南役は苦笑する。そんな指南役の隣で、青い星が切り分けた果実をもぐもぐと摘まみ食いしていた。

 そうしてレシピに忠実に、3人と1匹は丁寧に菓子を完成させる。用意した器を埋めるふっくらと香ばしい生地は、外はサクサクとしつつ中はしっとりとしている。その上には森や谷で採れた瑞々しい果実が乗せられている。普段の狩猟生活ではまず見かけない食べ物に、3人――特に指南役は目をきらきらとさせる。
 器が小振りなため、幾つか菓子はできているが、その中でも一番豪勢に果実が盛り付けられたものを青い星は指南役にずいと差し出す。案の定指南役はそれを反射的に受け取った。
「それじゃあ先輩、行って来てください! 甘さ控えめなので、先生が甘いもの苦手でも大丈夫だと思いますよ!」
「え、あ、うん。ありがとう。なんか、色々」
「気にしないでください。思っていたより多く作れて……他の皆さんにもお裾分けできそうですし!」
編纂者の言葉にうんうんと頷く青い星が、そしてごく自然な動作で指南役の持つ菓子の上に霜ふり草を刺し――乗せた。生ものを使っているから、保冷にという意図だろう。
「良い結果を期待してるニャ」
しっかりとオトモからも温かい声援と眼差しを貰って指南役は空から来た5期団に背中を押されて一足早く帰路につく。たぶん、手中の菓子を渡すべき相手はいつもの場所に座っているだろう。仮眠を取っていたら、どうしようか。とりあえず5期団の推薦組が使っているマイハウス――実質前線に立つハンターの仮眠室と言っても差し支えない――を覗いて、他に人が居なければ枕元にでも置いておいてしまおうか。
 なんてことを考えていたからだろうか、指南役が拠点へ戻ると、定位置に先生の姿は無かった。跳ね上がる鼓動を押さえ付けながら、指南役はそっとマイハウスの中を覗き込む。幸いと言うべきか、そこに人影はない。肩書に似合わない、簡素なベッドで仮眠を取っている狩人の寝息だけが聞こえる。
「……先生、これ、青い星とあの子と一緒に作ったんだ。こういうの作るの、初めてだったんだけど、先生に食べて欲しいなって」
足音を立てないよう、静かにベッドに近付いて、傍に膝をつく。そして、菓子についてそんなことを独り言のように言う。当然、寝息を立てている狩人にこの言葉が聞こえているかどうかは分からない。きっと聞こえていないだろう。丁度テーブルとベッドはそれなりに近い距離にあるから、テーブルの上に菓子の器を置く。霜ふり草から漂う冷気が、知らず熱を帯びていた頬を撫でる。
「…………先生、好き。好きだよ。俺、先生のことが、一人の人として好きだ」
きっと聞こえていないだろうという思いが言葉の背中を押す。誰にも聞かれない告白。囁くような声音は熱と緊張にふるえていた。
 そして、旧レイア装備の頭部防具に、口付けが落とされる。

 指南役が菓子をどうしたのか、しっかりと想いの丈を伝えられたのか、その結果を空から来た5期団は知らない。知らなかったのだけれど――偶々指南役の、件のマイハウスでの行動を目撃していた陽気な推薦組と勝気な推薦組のペアから聞いた。情報の報酬は、もちろん同期手製の菓子だった。

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