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【R18】天蓋綾なすアストロラーベ

カントボーイ英ウォルでモブウォル後スラウォル(甘)。一応昔の話のつもり。男性向けのノリ。エロ同人はファンタジー。諸々注意。

カントボーイ英ウォル。むかしのはなし(のつもり)。

前半モブウォルで後半スラウォル。

モブがよく喋る。

スラウォルは拗れる前。知り合い的な何か。甘い。

カントボーイ・キメセク・潮吹き・淫語・流血等の要素、描写が有ります。

ノリが男性向け寄りだと思います。

エロ同人はファンタジー。ファンタジーです。

スラウォルが甘いです。だれだおまえ(ら)。

キャラ崩壊って言っても良いかもしれない。特にウォルターが前半から。

気を付けてね。

…………ゆ、ゆるして……。

---

 取引を終え、席を立った時だ。

 くらりと目眩がした。一瞬、足が縺れてよろめいた。

 「おや。大丈夫ですか」

 取引相手が問うてくる。

 「ァ――、……っ?」

 ウォルターは答えようとして、声が出ないことにそこで初めて気が付いた。はく、と口がふるえるように開閉して、ウォルターはやはり出ない声に僅かに目を見開く。喉元へ手を遣った。

 その間にも目眩は酷くなっていく。ぐらぐらと視界が揺れて、立っていられなくなる。

 ガシャン。ローテーブル上のカップが倒れて、中身が広がる。立っていられず、ローテーブルの傍に崩れ落ちてしまったウォルターは服が濡れることも構わず、天板に縋ろうとする。だが、力は入らない。

 「ああ、お前たち。ウォルター氏は気分が優れないようだ。ベッドへお連れしなさい」

 取引相手を睨め上げると、冷たい眼が弧を描きながらウォルターを見下ろしていた。しまった、と思ってももう遅い。ろくに動けなくなった身体に取引相手の手下たちが手を伸ばす。腕を、肩を、背を腰を掴まれる感覚。そこで――目眩に耐えきれずに、ウォルターは意識を手放した。

 「ぅ……、ぁ……ッ?」

 ウォルターが目を覚ましたのはベッドの上だった。見知らぬ天井が視界に広がる。つまりあの目眩も取引相手の言葉も身体に触れられる感覚も、すべて夢ではなかったと言うことだ。

 更に――手を動かそうとして、ガシャ、と頭上から音が聞こえた。まさかと思い足を動かしても似たような音がした。自由を、奪われている。頭上でひとつに纏められた手を見上げれば、素肌と義手の双方が見えて、肌寒い理由を直視させられる。

 マズい、と思った。

 「我々は、日常的に吸っているので耐性が出来ているのですが――貴方のようなお客様には、よく効くのですよ。あの部屋に焚き染められた薬は」

 何とか抜け出せないかと手の拘束を鳴らしていたウォルターの足元から、声がした。

 ハッとして声のした方を見遣ると、あの取引相手が数名の手下たちと共に部屋に入ってきていた。

 「ようこそ、ハンドラー・ウォルター。我々は貴方を歓迎いたします」

 言葉だけは柔らかに取引相手の男は言う。

 ウォルターは隠しもせずに嫌悪の表情を浮かべた。最初からこれが目的だったのか。そして自分は、まんまと敵の罠にハマったのか。

 男が近付いてくる。ウォルターは少しでも拒絶の意思を示そうと、男から逃げるような動きで拘束を鳴らした。男が笑みを浮かべる。嫌な笑みだ。

 「貴方も、ぜひ楽しんでいってください。せっかくこんなに素敵な身体をお持ちなのですから」

 男がギシリとベッドに乗り上げる。手下のひとりが、持っていたアタッシュケースを開いて差し出す。そこには数本の注射器と針、アンプルが並べられていた。男は慣れた風にそこからワンセットを取ると、やはり慣れた手付きで「薬」の準備を整えた。

 とんとん、と軽く針を指先で弾き、ちゃんと通っているか確認する。細く押し出された蛍光色の液体が、シーツに落ちていった。

 「ゃ――、ゃぇ、ぉ……、」

 舌が痺れてまともに声が出ない。それでもウォルターは近付けられる薬に精一杯の拒絶を示す。

 だが――。

 「心配いりません。しばらく気持ち良くなるだけですから」

 複数の手に頭を掴まれ押さえつけられる。そうして晒された首筋に、その針先はずぶずぶと埋められていったのだ。

 プランジャが押し込まれ、中身がウォルターの体内へ押し出される。その、何かが血管に押し込まれる感覚に、ウォルターの目蓋がふるりとふるえた。

 まず、1本。得体の知れぬ薬が、ウォルターの身体の中へ入れられた。

 薬の効果はすぐに現れた。

 ずくずくと腰に熱が集まり、息が上がる。針の抜けていく感覚にすら、声が上擦った。当然、拘束具の擦れる感覚にも身体が跳ねる。身体を預けるベッドのシーツにすら背筋を撫でられているような感覚。呼吸に、艶やかな悲鳴が混じる。

 男の手がするりとウォルターの身体を撫でた。手の甲で、頬から臍の辺りまでを一撫で。それだけで、ウォルターの身体は大袈裟に跳ねた。息が詰まり、そして浅い呼吸が繰り返される。男がにんまりと笑う。ヒクつく腹を愉しんでいた手が、更にその下へ向かう。

 「ん、ぅ、……っ! やめ……、ゃ……!」

 ようやく痺れの薄れてきた口でウォルターが言う。腰が逃げようとして揺れた。けれどちいさな抵抗だ。男は睨み付けてくる双眸を真っ直ぐ見返して、見せつけるように手をウォルターの下腹部へ滑らせていく。かく、かく、と振れる腰を「厭らしい」と嗤って、その股座を指で撫でた。

 くちゅり、と水音。

 「――ッ!!」

 がくんとウォルターの身体が跳ね、顔がヘッドを仰ぐ。男が満足げに笑って言った。

 「“レディ”・ウォルター。安心してください。これでも我々は遊ぶ相手は選んでいますから、病気の心配はありません。それに“貴女”も、こう言うときのために薬を飲んでいるような人間でしょう?」

 男がぐちゅりと指を動かす。しとどに濡れたウォルターの股座――膣から、こぷりと透明な液体が溢れて垂れた。

 ハンドラー・ウォルターは男である。それは事実だ。だがその身体には男性器ではなくて女性器が備わっていた。これは秘密の事実だった。

 人前で肌を晒すことなど滅多に無いし、あっても上だけのことがほとんどだ。ウォルターの身体のことを知っている人間は、数える程度しかいない。

 それなのにこの男はどうして。

 「ィ゙ッ゙――!゙ ァ゙、はッ゙、ア゙ァ゙ッ゙~゙~゙~゙!゙!゙!゙」

 ぐぷぐぷ音が鳴らされて、ウォルターは身悶える。伸びやかな嬌声を押し込めたのはさすがと言うべきだろうか。それも、時間の問題ではあるのだろうけれど。

 「勘違いしないで頂きたいのですが、我々にとっては嬉しい誤算でしたよ。貴女の身体は。こんなに厭らしいことも含めて、ね」

 つまり――全くの偶然だった。男たちがウォルターの秘密を知ったのは。男体だろうがウォルターを罠に嵌めて玩ぶつもりだった男たちは、その衣服を剥いで現れた肢体に喉を鳴らした。

 「ァ、ぁ、ぅ……、ぐっ……、俺、は、女じゃ、ない……!」

 ウォルターが肩で息をしながら男たちを睨む。男たちは皆が皆、ウォルターを侮るような眼で見下ろしながら笑っていた。

 「そうですか。では女になりましょう、今日から」

 ぐちゅ、と指がもう1本挿入される。その感覚にウォルターは上げかけた悲鳴を必死に飲み込んだ。

 けれど、男は膣内へ挿入した指を2本揃えて、潤んだ肉壺の内壁をゆっくりと撫で始めた。ぐちゅう、ずちゅ、と腹側の媚肉を、男の指の腹が轢いていく。薬のおかげか、感覚が鋭敏になったウォルターは、堪らず腰を浮かせてしまう。背中が、弧を描いた。

 「あ゙――! んぎッ、ぅ゙、ア゙、ひっ、……ッ゙ン゙ン゙――ッ゙!゙!゙」

 肢体にしっとりと汗が滲み、肌は赤く色付いている。きゅうきゅう指を締め付ける膣に、男はニコニコと笑っていた。

 ずゅっ、と指が動かされる。ウォルターが悲鳴を上げた。

 「イキっぱなしですねえ。声出してくださいよ、ツラいでしょう?」

 「ぁぐッ――、っ! ゃ゙、ぃや゙、だ……!」

 「そうですか。残念です」

 残念だとは微塵も思っていないだろう顔で男は言った。目配せ。手下たちが、ウォルターの身体の周りに陣取る。そして各々手を伸ばした。

 「あ゙ぅ゙!゙ ア゙、ぐ……! ひ、ァ゙、さわ、さわるな゙、げす、が……ぁ゙ッ゙!゙」

 無遠慮な手たちが腕を首を脇腹を撫で、そして胸の飾りをつねり上げる。こそばゆさと痛みが同時に身体を襲う。

 「ひぎッ――ィ゙、ア゙、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!゙!゙」

 ぷしゃあっ、と堪らず潮が噴き出す。けれど手は放されず、そのままぐにぐにとウォルターの乳首を指先で捏ね転がしていた。その度、絶頂の余韻に震える身体は鞭打たれたようにガクガク揺れた。ぷしゃっぷしゃっと切れ切れに潮が飛ぶ。

 「ぉ、ぁ……、あ゙……、や゙、ぁ、」

 浮いていた腰が落ちてふるえる。べちょりとシーツが鳴る。目元を赤くしたウォルターはあらぬ方を見てしまっていた。手下のひとりが、ウォルターの痴態を鼻で笑う。

 「雑っ魚。こんなんでよく声出したくないとか言えたな」

 薬が使われていることなど忘れたかのような口振りだ。他の手下たちも、嘲笑と侮蔑の視線と言葉をもって同調する。「淫乱」「好き者」「雑魚」「変態」己の無力さを突き付けるように、代わる代わる吐き捨てていく。そして男はそれを止めも咎めもしなかった。

 「そういう趣向なのでしょう。楽しませてもらいましょう」

 そんなことを言ってから、男が手下たちに目配せをする。手下たちは頷いて、ウォルターの手首と足首を戒めていた枷を外す。

 「……っ!」

 手足が自由になると同時に、ウォルターは身体を叱咤して上体を起こす。

 男の喉元を狙って、手を伸ばした。

 けれど。

 「おや」

 その手は呆気なく受け止められ、絡め取られてしまう。そのままぎゅうと握られて、引き寄せられる。

 にこやかな男の顔が近付く。

 あ、と思ったときには遅かった。男の、空いている方の手が、ウォルターの後頭部へ回っていた。

 「ん――、っ、ふぁ、む、ぅ……!」

 歯をぶつけなかったのは男の手腕とウォルターの抵抗、双方あってのことだっただろう。結果として穏やかに接触したくちびるは、当然のように呼吸を奪い合い始める。

 「んぁ、ゃ、ふ……ッ! ぅ、ぁん、ン……!」

 くちゅり、ずちゅ、ぢゅる。粘膜が擦れ合い、唾液の混じり合う音がする。

 ウォルターは男の身体を押し返そうとしていたけれど、その手に力は入らなくて、ただ男にすがっているように見えた。閉じられた目蓋がぴくぴくとふるえ、睫毛に涙の欠片が乗る。腰が小さく跳ねているのを、男の手下たちは笑い声を押し殺して見ていた。

 男の手が後頭部から項へ下り、背筋を撫でる。それだけでウォルターは短く悲鳴を上げて背を反らした。

 ほどけた舌先から、唾液が滴り落ちる。

 男が、晒されたウォルターの喉元へ舌を押し付け、それからかぷりと甘く噛みついた。

 じゅるじゅると肌を舐め回され、吸い付かれる。そして男は時折歯を立てた。ウォルターの首に肩に胸に、赤い痣と歯形が咲いていく。

 「ぁう、ぅ――、ひ、ぃ、ァ……、」

 おぼれてしまいそうな目で、とろけてしまいそうな舌で、ウォルターは声をひくつかせた。

 男の手下たちが静かに周りを取り囲む。男の手が、ウォルターの手をするりと放す。力無く落ちた手の甲が、パタリとシーツを叩いた。

 男がウォルターの義手を掬う。恭しく手の甲に口付ける。背後から伸びてきた手が、義手の取り外し操作をしたのは、そのほんの数秒後のことだった。肘から先を失って、右腕が短くなる。

 あ、と蕩けかけた表情でも分かる程度にウォルターが絶望的な表情を浮かべる。男は外れた義手をベッドサイドのチェストへ避けると同時に、服を脱ぎ捨てた。

 「さあ、始めましょう。楽しい時間の始まりです」

 背後から伸びてきた手に肩を引かれる。ぐるりと視界が回る。ああ――せっかく、視界に入らなくなった天井が、また。

 「あ、ひっ、ひぎッ――ィ゙、ア゙、ァ゙ア゙……ッ゙!゙」

 胸や腹を触られて身体が跳ねる。握らされた陰茎に、火傷しそうだと思った。

 「や゙ッ゙、いゃ、だ……! さわ、ァ゙、さわる、な゙……ぁ゙、ッ゙ォ゙、ぅ゙ゔッ゙!゙」

 けれどそれも一瞬のこと。すぐに膣へ挿入された指に意識を奪われ、手を好きに使われることが意識の外に飛ぶ。ぐちゃぐちゃと言う音が耳元でしているのか腹中でしているのか、判らない。

 「いやだ、ゃ゙ッ゙――ぁ゙、ひっ、ァ゙ア゙、ァ゙、んぁああ゙ア゙ア゙ア゙ア゙!゙!゙」

 ぐちゅ、ぐちゅ、と蜜壺を掻き回す指の動きは決して激しくはない。むしろ緩やかなくらいだ。しかしそれでもウォルターにとってはつらく、腰と頭をシーツに押し付けて気を遣った。握らされた陰茎から飛んだ精液が、首元を汚す。

 柔い蜜をとぷとぷ溢れさせるそこを、男の指が広げる。くぷりと小さな音が鳴って、ひくつく媚肉が晒された。

 男の欲望は既に滾り起ち上がっていた。触れる必要もなく反り返る陰茎には、悪趣味な装飾が見えた。位置関係と、滲む視界にそれが視認できなかったことは、ウォルターにとって幸いだっただろうか。

 ひたりと熱が当てられる。それだけで「ぅあ、」と小さく顎が跳ねる。

 じゅぷ……と男の陰茎がぬかるんだ媚肉を押し分ける。

 「あ、ぁあ……、ぅ、ゃ、ぁッ~~~!」

 ゆっくり、己が存在を知らしめるように胎を埋めていく。手下たちに捕らわれていない、義手を失った右腕が、男を押し返そうとでもするかのように突き出されていた。悔しげに細められた双眸から、ぽろぽろと涙が落ちていく。

 「思ったより……キツいですね。締める運動でもなさっているので?」

 男の言い草にカァと顔が熱くなる。それはきっと薬とは関係のない反応だった。

 「ッ――、ぁ、っ! ひっ、ぃ、ィ゙ぁああああ!!」

 クズが、辺りの罵倒を吐こうとして開いた口は、しかし悲鳴を吐いた。とちゅ、と男の陰茎が、胎の行き止まりを小突いていた。

 とちゅ、とちゅ、と確かめるように陰茎が奥をつつく。そこに肉だけではない、硬い球のような感触があって、ウォルターは戦慄いた。先端だけでなく、肉壁に擦れる幹にもつるりとした丸い何か。悪趣味だ、とかき集めた理性が吐き捨てる。

 「んー? やはり効果時間自体は短いですね。お前たち、追加を」

 「っ!? ゃ、やめろ、そんな、」

 「アレ混ぜて効果切れにくくしますか」

 「そうですねえ。そうしますか」

 手下たちの作業は素早かった。はじめに使われたアンプルの中身と、また別のアンプルの中身を幾分かずつ吸い上げて、それをウォルターの首筋に当てる。

 「立派なメスになりましょうね」

 どろりとした液体が、血管を埋めた。

 「――ッ、ァ、ァ、――~~~~~ッ!!!」

 腰が浮き上がり、膣が男を締め付け、潮を吹いた。

 それが、合図となった。

 ぐちゅっぐちゅっぐちゅっと男が腰を打ち付ける度に愛液が跳ねてシーツに染みを作る。

 「んォ゙、ォ゙、ア゙、ごぷ、ん゙ぎゅッ、~゙~゙~゙ッ゙、」

 「ふはっ! 大洪水ですね! だらしないったらありゃしない!」

 喉元を晒した首の先には手下のひとりがいて、髪の乱れた頭を両手で固定して、開いた口に陰茎を捩じ込んで腰を振る。がぽ、ぐぽ、ずろ、とウォルターの喉に蛇が這うような凹凸が行き来する。

 左手には陰茎を握らされた。手に手を重ねられて、扱かされる。指先まで好きに使われる。にちゅ、ぬぢゅりと指の間までぬるつく。陰茎それ自体が熱くて、鈴口から溢れてくる体液も熱かった。手首まで垂れるそれは、まるで血が流れ落ちていくような錯覚を、一瞬起こした。

 右腕が見過ごされることもなかった。呆気なく捕まれて、ばんざいをさせられる。そうして晒された脇のくぼみに、別の陰茎があてがわれた。息を荒げて腰を振る手下の男の姿は滑稽だったろうが、それを言える余裕などウォルターにはなかった。

 無数の手が肌を撫でる。あばら、脇腹、腹。臍を抉るように撫でて、乳首を捏ね回す。先程よりも、遠慮が無かった。

 「ゔ、ォ゙、ごふ、――! ~~~~~!!」

 がくがく身体が浮いて、痙攣する。

 湿った肌も縮こまる肉壺も、その場にいる男たちを皆悦ばせた。

 「ハッ……ぐっ、出る……!」

 「ああー……っ出る、出るこれっ……!」

 各々好き勝手に呟いて、男たちは各々好き勝手に使っていたウォルターの身体の部位へ、自分勝手に欲を吐き出した。捻り上げられた乳首が赤くなっていた。

 「ぁ゙……、ぁ゙、ぅ……、」

 口から陰茎を引き抜かれ、握らされていた陰茎を放させられ、色々な液体に汚れた顔が露になる。

 生理的な涙と汗に濡れている。上気した頬や目元は皮肉にも血色が良く婀娜めいて見えた。けれど無体と薬でぼやけた視点、垂れた洟、あふれた唾液と精液の混じり物なんかは、幼気と言うよりも白痴を思わせた。

 ぐちゃ、と脇を使っていた手下のひとりが、そこに溜まった白濁をかき混ぜる。とろ……り、と糸を引く。ウォルターの身体がふるりとふるえた。

 「――かふっ、ぁぷ……、ッぅえ……、こぷっ、」

 大袈裟に肩が跳ねて顔が横を向く。胃の腑へ落ちていかなかった分の白濁を、吐き出そうと噎せていた。どろどろに汚れた手のひらをそのままに、左腕が緩慢に目元を隠そうとする。

 「ハッ、ハッ……、ァ゙、ぐぅ……ッ、ア゙ッ゙……!」

 男がウォルターの内腿を擦り、吸い付く。それだけで爪先と肩は跳ね、膣中はきゅうと身を竦めた。

 とちゅ、とちゅ、と陰茎が、やわらかな肉を叩く。

 「あ゙――ッ゙、あ゙ぁ゙っ゙……、ぅ゙ゔ……!」

 唯一達していない男の陰茎の先が、肉壺の底をつついていた。

 「ゃ゙ッ゙……、ん゙、ん゙ン゙~゙~゙~゙ッ゙!゙」

 「しっかり子宮おろせてえらいですよ。身体はちゃんとオスに媚びてるんですねえ」

 「ひぐっ、ゔ、ゃ゙、や゙ぇ゙、ォ゙……!」

 「身体はちゃんと媚びてるのに心は堕ちていない……素晴らしいやら愚かしいやら」

 どちゅ、と力の籠った突きが繰り出される。かは、とウォルターがうつろな咳をした。

 「我々は優しいのでちんぽは好きなだけ挿れて差し上げます。でもそれ以上はさすがに乞うて貰いたいですよねえ」

 ぐり、ぐちゅ、と切っ先が底――子宮口を拓こうとする。先端に付けられた硬いピアスには熱が移っていた。

 「あ゙ぁ゙、ッ゙あ゙、~~~ッ、」

 ぐぢゅ、ごちゅ、と一突きごとにウォルターの身体がふるえ、潮があふれる。もうずっと達し続けているような状態だった。

 「ほら、欲しいでしょう? ここに、熱いもの」

 男が下腹部を押す。いつの間にか伸びてきた手下たちの手が、また乳首を弄り始めていた。

 「ザーメン注いで孕ませてください、メスの喜びをお恵みください、中出しマーキングしてご主人様を解らせてください――辺りでいいですよ」

 実際、中出しはされたいはずだった。そう言う薬でもあるためだ。徹底的に女性の尊厳を踏みにじる。ウォルターに使われたのは、そう言う代物だった。

 男に媚びて、気を遣って、情をねだって、また気を遣る。男に都合の良い、色狂いを作る薬だ。

 けれど。

 「ッ――、ぁ゙、あ゙ひ、ひッ……! ああ゙ぅ゙ッ゙、ぐ……ッ゙!゙ っぁ、だ、れが……!」

 「――……これはこれは、」

 ウォルターは未だ「ウォルター」だった。

 男が呆れたように、しかしどこか嬉しそうに笑った。

 どちゅ、と硬い熱が胎の底を殴り付ける。どちゅ、どちゅ、どちゅどちゅ。徐々に水音の間隔が短くなっていく。ごりゅごりゅ、ぞりゅぞりゅ、と男の熱に埋められた異物が、四方の粘膜を擦って苛める。

 「ぁ゙あ゙、あ゙っ゙あ゙、ぅ゙あ゙、ゃ゙ッ゙!゙ ひぎっ、ィ゙ッ゙……、っあぁ゙ああ゙あ゙ぁ゙!゙!゙」

 「雑魚まんこ認めろ! イキっぱなしじゃねえか!」

 「ちんぽ様に感謝しろよオラッ! 気持ち良くさせてもらってんだろうが!!」

 「んぎゅッ! ォ゙、ア゙ッ゙!゙ ぁ゙あ゙あぁぅゔゔ……!゙」

 左手が頭上のシーツを握り締める。両の脚が縋るように男の身体を挟んでいた。男が掴んでいる腰には、赤い指の痕が浮かび上がっていた。

 ごっ、ごっ、と打ち付けが力を増し、男の息遣いが荒くなる。ウォルターの方は乳首を捻り上げられたり、下品な言葉や体液を浴びせられたりして、もうずっと啼いていた。

 「オラ言え! 雑魚メスまんこにザーメン飲ませてくださいって言え! オスに媚びろ!」

 「ちったァ潮吹き我慢できねぇのかよこの淫乱! おっ広げた股から恥ずかしげもなくビシャビシャとよォ!」

 「テメェが躾の要る雌犬なんだよなぁ……その辺わかってる? 自覚しな?」

 「うーわ、お前らザーメン出しすぎ。ドロドロじゃん」

 そうして――。

 「……はッ、ふぅッ……! ん゙っ……、良い、締め付け、ですが、おねだりできない、悪い子、には……っ、ご褒美、あげられませんね……くっ!」

 最後の最後、膣がいっとう縮こまるタイミングで、男は胎から陰茎を引き抜いた。

 「だ、れが、ァ、ぁ゙、ぁ゙ぁ゙ッ゙―゙―゙、~゙~゙~゙~゙~゙!゙!゙!゙」

 引き留めるように孔が狭まり糸を引く。けれど抜け出ていった陰茎はそのまま外界で子種を吐き出し――ウォルターの身体を更に汚した。

 「んぎッ、ィ゙ア゙、ぅあ゙、ぉ゙あ゙あ゙ッ゙、ア゙――ッ゙ッ゙ッ゙」

 ぷしゃ、ぱたた、びしゃっ。ガタガタ。

 声無き悲鳴を上げて身体が反り返る。絶頂に戦慄く身体に、ベッドが共鳴してふるえる。薄く割れた腹筋に男の白濁が振りかけられる下で、ウォルターの女の部分がはしたなく涎をだらだらと垂れ流していた。

 「あゔ、ぅ゙、ぐ、ぁ゙――ッ゙、か、は……、ん゙ン゙ン゙……ッ゙!゙」

 広げられていた脚が閉じようとする。ぴくり、と筋肉の強張りにも思える程度の動きだった。男はそれを見逃さなかった。

 「――中に欲しいのでしょう? 分かっておりますとも、そういうお薬ですから」

 ちゅぷ、と指が挿し入れられる。くちゅ、にちゅ、と緩やかにかき混ぜられる胎は、切なげに指をしゃぶる。くぷ、くぷ、と戦慄く縁から愛液が垂れていく。

 男はにんまり笑ってウォルターを覗き込む。浅い呼吸が、発情の深さを物語っている。

 「……、ふ、ぅ……!」

 物語っている、はずなのに。

 「ッ、おまえ、こそ……、この、はら、に……っ、ぶちまけ、たくて、しかた、っ、ない、の、だろう……? っ、クスリ、たより、の、っ、たんしょぅ、やろう」

 ウォルターは、そんなことを吐き捨てた。

 周囲の温度が冷えていく。真顔になる手下たち。衣擦れの音ひとつ消え失せた。

 男の笑みから、人らしい温度が消えた。

 「――、――ひぃィあァアア゙あ゙ぁ゙あ゙あ゙!゙!゙!゙ あ゙あ゙あ゙!゙ がッ、ア゙、んぎッ! ン゙ぎぃい゙ィ゙ッ゙!゙!゙ かはッ、ァ、ひゅッ――、ォ゙ッ゙、ぅあ゙、ぁぐぁぁ゙あ゙あ゙」

 ごちゅッ! ぐちゅッ! ばちゅッ! どちゅッ!

 「ふあ゙、ぉ゙、ぉ゙お゙ッ゙、ぁ゙、あ゙ぁ゙ぁ……!゙ ひっ、ひぎゅッ、ぅ゙ぉ゙、あ゙ゔぅ゙ッ゙」

 起こされた身体の前後をそれぞれ男とその手下に挟まれてウォルターは揺さぶられる。前の孔にも後ろの孔にも、雄棒が埋められていた。

 膣に埋められた男の熱は下がりきった子宮を殴り付け続け、その内部までも侵そうとしている。ごんごんと腹を内側から殴られる――だけでなく、背後の手下が回した手に下腹部を押される。時折手探りに秘豆まで弄られて、ウォルターは咽び泣いた。

 尻孔はウォルターが気を失っている間に準備がされていたようだった。丁寧にされた下準備と薬の効果で、本来受け入れるための箇所ではないそこは、多少可愛がられただけですんなりと雄を受け入れてしまった。その衝撃と腸を擦られる未知の感覚、排泄感にも似た快楽、腟内の雄に挟まれそれらが擦れ合う感覚に、ウォルターは理性を必死に手繰り寄せる。

 男が乳首に爪を立てる。

 散々弄られて赤くなったそこには金のリングが通されていた。男たちが勝手に開けたピアスだ。乳頭を爪でぐりぐり抉ったかと思えば、リングを引っ張り乳首を伸ばす。痛いのか気持ちいいのかもう分からなくて、けれど茹だった頭の片隅が「いたい」と言った気がして、ウォルターは胸を庇うように男の方へ身体を傾けた。

 左手には陰茎。右脇にも陰茎。入れ替わり立ち替わり、誰かが何処かしら、ウォルターの身体を使っていた。

 「ゔぅ゙……!゙」

 それでもウォルターは男たちに媚びるような言葉を吐かなかった。

 顔も身体もドロドロに汚されても、どれだけ下品で卑猥な物言いをされても、その瞳の奥の理性の灯を消すことはなかった。

 随分たのしんだ頃、男たちが小休憩を取るために部屋を出ていく。

 ウォルターはベッドの上で気を失っていた。だのにご丁寧に宴を始める前のように手足をそれぞれベッドに繋がれている。悪趣味なことに、陰部には薬の塗りたくられた張り型がそれぞれの孔に突き入れられていた。

 部屋の外で男たちの声がする。呑気なものだった。これからウォルターをどう抱くか、何を使うか。食事は何にするか。そんなことを話していた。

 だが――微かなざわめき。

 空気が変わる。

 ざわめきは広がり、そして、銃声が鳴って、沈黙が降りる。

 何もかも、ウォルターの知らないことだった。

 銃声。

 そして、沈黙。

 ガスマスクを着けた男は標的を全て殺したことを確認すると、銃をその場に投げ捨てた。ばちゃん、と血溜まりに鉄の塊が身を沈める。

 事情は知らないが、随分楽しそうな標的たちであった。色めき立っていたと言うか、浮わついていたと言うか。まあ、仕事が楽に済むならそれに越したことはない。

 男は足元に転がる屍体を踏みつけながら扉に近付く。室内に気配がもうひとつある。今しがた殺した人数は依頼された人数と同じだが、一応確認はしておいた方が良いだろう。この仕事は、信用が大切になる部分もある。

 ギィ、とアナログな扉を押し開く。

 室内は寝室のようだった。無闇に大きなベッドと、その脇に置かれたチェスト。奥の扉はシャワールームだろうか。

 そして件の気配の元はベッドの上にいた。

 「……」

 その姿を見て、男は刹那動きの全てを停めた。

 ガスマスクの中で、憐れみにも似た表情が浮かべられる。

 拘束具の鍵はチェストの引き出しに入れられていた。この部屋に自分達以外が立ち入ることも、獲物が逃げ出すことも考えていなかったらしい。

 拘束を外し、淫具を外し、その身体を抱き上げる。白と赤に汚され、くたりと弛緩した身体は痛々しくも神々しくも見えた。

 部屋奥の扉はやはりシャワールームの出入り口だった。蹴破るようにして入室した男は抱えていた身体をそっと横たえ、袖や裾を捲ってシャワーから湯を出す。ザァ、と優しい水音が湯気を立て始める。

 男が再びシャワーのコックを捻るとき、男の服はぐっしょりと濡れてしまっていた。無理もない。けれど汚れていた身体の方は、男の努力の甲斐あってか、少なくとも見てくれはさっぱりと綺麗になっていた。胸を飾っていた悪趣味な金色は当然のように外され、排水溝に流された。

 備え付けのタオルを遠慮なく使い、男は自分の身体と綺麗に洗った身体を拭いていく。

 そうして男は、意識を失ったままの身体を新しいタオルに包んでその場を後にする。あまりに鮮やかな殲滅と回収だった。

 路地裏のダストボックスにガスマスクを放り込んで、スッラは古風なアパートメントに入っていく。ナトリウム灯を模した橙色の街灯が、態とらしくまばたきした。

 雇い主への報告は済ませてある。要求された分を、要求された分だけ。つまり今のこのウォルターを知っているのはスッラだけと言うことだ。

 いわゆる夜更け、それも居住区の端に建つ懐古主義的な建物はシンと静まり返っている。ジジ、と言う音と明滅を定期的に再生する照明に照らされた階段を、部屋を借りている3階まで昇る。5階建てのこのアパートメントに、エレベータは付けられなかったらしい。強化手術を施しているスッラにとっては、関係の無いことだったけれど。

 人の気配ひとつ感じないまま部屋の前に辿り着く。

 盗られて困るものも無し――施錠も何もしていない扉を押し開けて、帰宅を果たす。

 真っ直ぐに、スッラが向かう場所は寝室だった。

 移動の最中、濡れた服は乾いていた。

 さして広くもない間取りだ。寝室にはすぐに辿り着く。部屋をそれぞれ隔てる扉は、やはり古風でアナログなものばかりだった。

 今朝起きてそのままになっていたセミダブルのベッドにウォルターを下ろす。その時だった。閉じられていたウォルターの目蓋が、ゆっくりと開かれたのは。

 「……ぁ、っ?」

 掠れた声。既に立ち上がり、空調を弄りに行こうとしていたスッラは、その微かな声にベッドへ向き直る。ベッドの上から、まだぼんやりした目でウォルターがスッラを見上げていた。

 視線を合わせるように、スッラはベッドの傍らにしゃがみこむ。

 「お目覚めか? ハンドラー・ウォルター」

 「ス……ラ……?」

 「……酷い声だな。少し待ってい、ろ……?」

 子供をあやすような調子で吐かれた声音は、しかし絞り出すように自分の名を呼んだ声に、バツが悪そうに引っ込んだ。水でも持ってこようと、立とうとした時、カクンと上着の裾が引っ張られた。

 否、正確には、上着の裾が掴まれていた。スッラは思いもよらないウォルターの反応に、目を微かに見開いた。

 しかしすぐにいつもの表情を作り、再度視線を合わせてやる。裾を掴んでいた手は、ほどいて握ってやった。

 「どうした? 甘えたか?」

 裾を離させてからは、くたりといまいち力の入らない手の甲にくちびるを寄せて笑う。まったく、子供に対するそれだった。

 だが対するウォルターはぼんやりした目のまま、掠れた声でスッラを呼んだ。

 「スッ、ラ……、抱いて、くれ、」

 そこでスッラは、ウォルターの目が潤んでいるのは寝起きだからではないと気付いたのだ。

 「抱いて……、腹が、はら、が……、も、ずっと、疼いて、ぇ……!」

 はく、と薄いくちびるがわななく。ウォルターが後頭部を枕に押し付けて、サリ、と衣擦れの音がした。

 スッラは閉じられた目蓋の端から涙の一欠片が落ちていくのを見た。ウォルターの指先が、スッラの手にすがっていた。

 溜め息をひとつ吐く。手中の手が、ぴくんと小さく跳ねる。逃げられるのを恐れるように、指先に少しだけ力が籠る。

 けれどスッラはウォルターに呆れて溜め息を吐いたわけではなかったし、その場から逃げる気も無かった。

 するりと手をほどく。

 「ウォルター」

 ぎしりとベッドが軋む。ウォルターの両足の間に陣取って、腰が触れ合うように引き寄せた。

 「お前は、ほんとうにかわいいなァ」

 数刻前に殺した奴らがどんな薬を作り、使っていたのかは知っている。あの状態にされていたウォルターが、その餌食になっただろうことも、予想はできた。だがここまで耐えていたのは予想外だった。何故ならあれは、話やデータによれば常人が耐えられるようなものでは無いからだ。どれだけなぶられていたのかは分からないが、とっくに精をねだって、注がれているものだろう、と。

 「んぅ……、ぁ、ふ、っ」

 身を乗り出してくちびるを食む。引き結ばれも噛み付かれもせずに、受け入れられる。どろどろに甘ったるい唾液の奥で、ほのかに精の青臭さを感じた。

 ちゅむ、ちゅる、と舌が絡み合う。ふやふやに蕩けた舌を味わうのは心地好かった。

 「あ、ぅ……」

 名残惜しげな舌先を吸って、口端に口付ける。ゆるゆる腰を揺すりながら耳や首や鎖骨や胸をくちびるで辿っていく。齧って吸って、無体の痕を上書きしていく。その都度跳ねる身体には、どれだけの熱が押し込められているのか。

 中に出されると疼きが収まる。精液の成分が薬を中和するらしい。馬鹿らしいが、そういう薬であるようだった。だから最も手っ取り早い対処の方法が中出し。下衆な話である。

 では他に仕様が無いのかと言えば、あるにはあった。古典的ではあるが、愛液や尿に溶け出るそれを、ひたすら排出させると言うものだ。

 スッラが選んだのは、後者だった。

 「ふぁ――、う、あぅ、」

 とぷとぷ溢れ続ける露はスッラの服に染みを作り、起ち上がった陰核をにゅるにゅると擦る。かくかくと揺れる腰は甘やかな絶頂を表していた。

 今のウォルターが据え膳であることは確かだ。

 実際スッラの腰は熱されて重たくなっていた。グズグズに溶けた声も、おぼれてしまいそうな瞳も、熱くとろけた肢体も、何もかもが垂涎物だ。何なら当人から「抱いてくれ」と言われている。

 だがスッラは、自分の熱を服の中に仕舞い込んだままでいた。

 ウォルターを抱けないわけではない。抱きたくないわけでもない。ただ一点、中に出さなければいけない、と言う指定が、スッラのウォルターに対する柔いところを踏み抜いていた。

 幸い感度は高められたそのままだ。手淫や愛撫だけで何とかしてやれるだろう、とスッラはウォルターの身体を辿る。

 「ぅぅ……、す、ら……、すっら……!」

 頭と身体がそれぞれウォルターのことを考えていたところに、件の声が落ちてくる。口に含んでいた乳首をちぅと吸ってから顔を上げる。赤く色付いた身体も声も、正しく熱に溶けた鉄のようだ。

 「? どうした?」

 シレと訊いてくるスッラに、ウォルターは悔しそうに顔を歪めた。

 「は、はや、く、挿れろ、ばか、」

 「――……」

 顔を覆って天を仰ぎたくなった。否。仰いだ。何てことを言うんだこいつは。

 深呼吸とも溜め息ともつかないものがこぼれる。知らぬ間に呼吸を止めていたらしい。

 「…………ウォルタァ、」

 「やだ、ゃ、も、ゃだ……、いれて、いれて、くれ、俺の、っ、まん、こ、に……、ち、ちんぽ、っ、いれ、て、なか、だし……まーきんぐ、して、くれ……!」

 「……」

 「ひぐっ……、はら、うずいてっ……、っ、も、やだぁ! せーえき、おれのなかっ、ぶちまけへ……!」

 平生ならばまず間違いなく出ないだろう淫猥な台詞を吐いて、とうとうウォルターはぐすぐす泣き始めてしまった。ずっと耐えていたのが、堰を切ったのだろう。顔を覆った左手の指先が髪をぐしゃりと乱していた。右腕は、健気に顔のもう半分を隠そうとしていた。

 大きな少年を前に、スッラはふっと表情を和らげる。両腕をそっと退かして、目蓋や目元や額にくちびるを落としていく。

 「ウォルター。……いけない子だ」

 最後にくちびるを食んで遠ざかっていくスッラを、ウォルターは滲む視界に見送る。

 不安と期待に、胸が鳴った。

 じゅぷ、と泥濘に踏み入る音がする。

 「――ん゙ぅ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!゙!゙ や゙ッ゙、ゃ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙ぁ゙!゙」

 じゅぶじゅぶじゅぶ。しっかりと濡れた蜜壺の掻き回される音が部屋に響く。

 「嫌じゃないだろう。ほら、またイった」

 「ひぎゅッ、ィ゙ッ゙――!゙ んに゙ゃ゙ア゙ァ゙!゙ ちが、ちがッ゙、っ、ゆび、ゆびじゃ、な゙、ァ゙、ゃ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!゙!゙」

 ぼろぼろ涙をこぼしながらまたウォルターの身体が強張る。指をきゅうきゅう締め付ける胎を無視して手を動かし続ければ、ウォルターの身体は呆気なく潮を吹いた。脚が強張り、彷徨い――結局、もっととねだるようにくてんと広げられる。目に毒が過ぎる、と思った。

 「ちがう、ちがうっ……! ゆび、じゃ、足りな、っ、ひぅ……、ど、して、ぇ――、ォ゙ッ゙……!゙」

 ぎゅ、と下腹部を押されてまた達する。胎の中の指は素知らぬ顔で下がってきた子宮口をいじっていた。

 「なん゙でっ゙、おれ、ちゃんと言った、いっ゙ぁ゙、のに゙……!」

 「…………。言うな。もう言わなくていい」

 「ァ゙ゔ――ッ゙、あ゙、ひゅっ、んひっ、オ゙、ゔ、っ゙ぉ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙……!゙」

 Please、と何度も乞うて来る声は悲痛でもあった。だがそれをすべて黙殺してスッラはウォルターを絶頂へ導き続ける。服も肌もぐしょぐしょに濡れていた。

 むせ返るような淫臭。腰や頭に熱が溜まる。ズボンの中で張り詰める欲は痛いほどだ。今すぐにでも目の前の潤んだ孔に突き入れたい。

 だが――。

 ギリ、と奥歯が軋む。

 今のこの哀れないきものを本能のままに組み敷いて、捩じ伏せて、種付けることは、矜持が許さなかった。ぐるる、と喉奥で獣が唸る。

 せめてもの意趣返しに、スッラは愛らしく起ち上がった陰核にやわく歯を立てる。ぷしゃあっと潮が吹いて、すこし、溺れかけた。

 ウォルターが目を覚ましたとき、そこは見知らぬ部屋だった。カーテンの隙間から、白い光が射し込んでいた。

 身体を動かすのは億劫で、頭はぐらぐら痛んだ。目元や喉が熱くて、何とは無しに手を遣れば、視界に入った手首には真新しい包帯が巻かれていた。

 そこで、自分がどこにいて何をしていて、どうなったか朧気に思い出した。

 顔をしかめて溜め息を吐く。

 緩慢に身体を起こすと、足首も手当てされていた。拘束はされていないが、あの取引相手の関係者のねぐらと言うわけでは無いのだろうか。思い出したい記憶ではないが、気になった。

 ベッドの傍らのチェストに気付く。そこには簡素なテーブルランプとデジタル時計とミネラルウォーターのペットボトルがあった。そしてそのデジタル時計の下、それを重しにして、名刺程度の大きさの紙切れが置かれていた。

 ――ペットボトルは未開封。冷蔵庫の中身は好きにしていい。

 神経質そうなその文字は、この部屋の主のものであるようだった。そしてこの文字を書く人間を、ウォルターは知っていた。

 何故、と疑問が浮かぶ。

 何故助けたのだろう。何故ねぐらへ運んだのだろう。何故生かしているのだろう。何故側に――いや、監視ならカメラや端末で十分か。……それらしいものは見当たらないが。

 この星でよく見かけるパッケージのペットボトルに手を伸ばす。水滴なんかは付いていない。常温の水。印刷ムラも不純物も、見える範囲では確認できない。ペットボトルを腿で挟んでキャップを捻れば、パキリと音がした。口を付ける。ぬるまった水が、乾いた喉を撫でていった。

 喉に沁みた水に顔をしかめる。どうやら自分は随分喚いたらしい。醜態だ。ついでに義手含めた私物も見当たらない。取引したデータもそこにあるはずだが。最悪だ。戻って、回収しなければ。

 頭痛を堪えるように軽く頭を振る。深呼吸をひとつ。

 ペタリとベッドから足を下ろす。当然靴もない。仕方がないので裸足で移動することにした。室内は空調が聞いているのか、寒さを感じることはなかった。けれど全裸で徘徊することは憚られて、シーツを拝借した。

 書き置きには「冷蔵庫の中身云々」とあったけれど、そもそもウォルターは冷蔵庫の場所を知らない。寝室を出て、壁伝いに目に入る扉をひとつずつ開けてダイニングスペースを探す。どの扉にも、鍵はかかっていなかった。

 そうして、何とか見つけ出し辿り着いたキッチン兼ダイニングスペースで、ウォルターは一先ず椅子に腰掛け一息吐く。足に負荷がかかっていた。

 冷蔵庫は座ったままでも手の届く位置にあった。そも、狭いスペースだった。

 あまり期待はせずに冷蔵庫を開ける。デリのサンドイッチでもあれば良い方だ。あとは果物とか、レトルト食品とか。

 「……」

 まあ――食べ物が入っていただけ良かった、とウォルターは思った。水とアンプル――鎮痛剤の字が見てとれた――とデリの惣菜。おそらく自分用と思われるピザの箱。

 そもそも、独立傭兵に生活感とか自炊能力を求めてはいけないのだろう。物がほとんど無い部屋とか、調味料のひとつも置いてないキッチンとか、証左は散々見てきたではないか。

 椅子から降りて冷蔵庫の扉を身体で止める。シーツが落ちないよう口に咥え、左手で惣菜の器を取る。蓋の上に置かれたスプーンを、落とさないように慎重になった。

 蓋には調理方法が書いてあった。簡単チキンスープ。蓋をしたままレンジで3分。なるほど簡単便利でありがたい。ウォルターは電子レンジにチキンスープを入れてダイヤルを回した。その途中、何となく、ここにある家具や家電は皆ここのものなのだろうな、と思った。

 3分後。

 電子レンジがチンと鳴いた。椅子に腰かけていたウォルターは立ち上がってレンジへ手を伸ばす。スープの器は温かくなっていた。

 ウォルターがちびちびスープを飲んでいると、部屋の扉が開いてこの部屋の主が姿を現した。アイムホーム。朗らかな声とガサガサ言う紙袋と共に、スッラが帰宅を知らせる。スープのにおいと人の気配を辿りこちらへ来たのだろう。

 コーラル色の瞳がウォルターを写して、ほっと和らぐ。

 「動けて食えれば心配は要らんな。まあ、ゆっくりしていけ」

 スッラは上機嫌にウォルターの前を通ってリビングスペースへ行く。小さなテレビの前に置かれた一人掛けのソファにどさどさ紙袋が放られる。その中のひとつを漁ったかと思うと、見覚えのある義手を手にスッラは戻ってくる。

 こと、と机の上、ウォルターの目の前に義手が置かれた。訝しげな眼を向けてくるウォルターを笑顔で受け止めながら、スッラはその向かいに腰を下ろす。小さなテーブルに椅子が2脚。デザインを重視した結果の、不便なバランスだ。

 「……何故助けた」

 スッラから眼を離さず、義手を着けながらウォルターが訊いた。

 「気まぐれだ。偶々私の狩り場にお前がいて、偶々気が向いたから拾った。……それだけだ」

 「何が目的だ」

 着けた義手の具合を確かめて、ウォルターは眼光鋭く更に訊く。だが、それもやはりスッラは泰然として受け流す。

 「何も? ひとの好意は素直に受け取っておくものだぞ、ウォルター。なにより、私とお前の仲だ」

 その言い草にウォルターは顔をしかめた。苦々しい顔だ。

 だがスッラは、ふは、と噴き出すようにウォルターの反応を笑った。馬鹿にするとか揶揄すると言うよりも、微笑ましさを堪えきれなくなったと言う風だ。ウォルターはそんなスッラの様子にムッとした表情を浮かべた。先程までの険が取れて、幼げな印象を覗かせていた。

 「ふっ、ふふ、ははは! そう邪険にしてくれるな、さすがに傷付く」

 「心にも無いことを……」

 口角を上げたまま言うスッラにウォルターはじっとりした眼を向ける。それでまたスッラは笑った。

 「ふふっ……くく……。ああ、食べてからで良いが、服を着ろ。いくつか買ってきた」

 リビングのソファを占拠した紙袋たちのことだろう。他の星でも見かけたことのあるブランドのロゴが見えた気がしたが、気のせいだと思いたかった。

 「は……? サイズとか、どうしたんだ」

 「見れば分かるだろう、そんなもの」

 「…………買ったのか……」

 「店員には父親(パピー)への贈り物かと訊かれたな」

 ウォルターは眉間を揉んだ。またか。否、今回その場に俺はいなかったが。

 歳としては当然スッラの方が上なのだが、強化手術の影響かその外見は青年と言っても差し支えない程度には若々しい。ふたりで並ぶと、体格なんかも相まってウォルターの方が年上に見えるのだ。

 ウォルターとしては大して面白くもないジョークなのだが、スッラの方はこれを面白がっている節があった。

 「俺はお前の父親ではない」

 「そうとも、ウォルター。ちゃんとパピー(子犬)への贈り物だと言っておいたぞ」

 「……訂正になっていないと思うのだが?」

 「そうか?」

 くつくつ笑ってスッラはそれから、ごく自然な動作である薬の箱をテーブルの上へ置いた。

 「……用法用量はよく守るように」

 「……何故、」

 「かのハンドラー・ウォルターに恩を売っているだけだ」

 中に出された記憶はないが、生で挿入はされていた。スイと寄せられた箱を受け取る指先が、微かにふるえた。

 スッラにはそれが見えていただろう。けれど、彼は何も言わなかった。

 「……感謝する」

 ウォルターが薬の箱を手元に引き寄せる。キュ、とシーツを握り締めた手は無意識だった。スッラはやはりそれにも何も言わずに、穏やかな顔でウォルターの頭をくしゃりと撫でた。

 「はやく食べてしまえ。風邪をひく」

 そんなことを言って後は頬杖をつくだけ。ウォルターを眺めるスッラの表情は上機嫌で朗らかで柔っこいものだった。

 リビングの窓から光が射して室内を照らしていた。

 空は青い。

 何となく、平和な一日になりそうだとウォルターは思った。

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