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【R18】Felix lovers

バカップル。
カントボ英ウォルでバカップル英スラウォル。生存if。二次元のエロはファンタジー、なアホエロ。ゆるふわです。

カントボ英ウォルで生存ifなバカップル英スラウォル。

全体的にゆるゆるふわふわです。平和!

同棲してるのか連れ込んでる(連れ込まれてる)のかは決めてないです。どっちでも美味しいですね。


カントボーイ・自慰・濁点喘ぎ・ソフトSM?(股縄)・クンニ・潮吹き・ポルチオ・淫語等の要素があります。

二次元のエロはファンタジー……(ふるえ)

あとスッラがスプリットタンになってます。痛い要素は無いです。

技研時代なんかの過去捏造もあります。


親愛的なミシ→ウォル描写があります。とばっちりレッドくんと21(名前のみ)。

ラスティ兄貴は21から「スラウォルがイチャつきまくってて悔しいウギーッ!(21→ウォル)」って愚痴聞かされてる感じです。


諸々気を付けてね。

ゆ、ゆるして……。


---


 目が覚めると、視界に天井がぼんやりと広がって、それから誰かに抱え込まれる温もりを肌に感じた。

 他人に触れられていると気付いて弛緩していた身体が強張る。けれどすぐに昨夜このベッドの上で何があったのか――していたのかを思い出して、ウォルターは顔を赤らめた。目覚めた直後とは別の意味で身体を強張らせる。

 そして。自分に触れる肌の温度と感触に、シーツの下に埋められた熱が、煽られるのを感じた。

 良くない、とは重々思う。寝起きから、そんなはしたないことを考えて。あまつさえ、求めるのか。一体お前はいくつになったんだと自問する。そんな盛りはとうの昔に過ぎただろう。構うことも、謳歌することもなかったが。

 ああ。だが、しかし。だって。

 ぐるぐると言い訳が頭の中を巡る。これは本能で、ヒトの普遍的な欲求で、健全で当然な反応で、今は使命を果たすにも猶予があるし、だから、だから――。

 きゅ、とウォルターは自分の身体を抱え込む腕に触れる。

 自分の身体を抱え込む腕。そうだ。こいつ。

 降って沸いたように、すぐ傍で穏やかな寝息を立てている男に意識が向く。少し頸を動かせば、見た目ばかりは年下に見える年上の男の、穏やかな寝顔があった。

 たぶんそれは、八つ当たりのようなものだった。そうでもなければ、頭が熱に茹だり過ぎたのだ。

 ――そもそも、この男に暴かれてからおかしくなったのだ。それまでは別に、気にすることだって無かったし、触れる必要も、触れたいとも思わなかったのに、この男が拓いてから、この身体は触れられる悦びを知り、覚えたのではないか。昨夜、だって、明日(今日)は仕事があるからと、甘やかし蕩けさせるような触れ方、を。

 思い出して、ずくりと腰が熱に掴まれる。

 自分(ウォルター)のために“そう”したのだとは理解している。仕事があるから、支障の出ない程度に。まったく素晴らしいパートナーだ。

 だがその結果はどうだ。日頃散々可愛がられてまさぐられて導かれているのに、こうして時々加減をされたら。……否、べつに昨夜だって好い夜ではあったが。あったけれど、普段と比べてと言う話だ。

 うぅ、とウォルターは小さく呻き声を上げる。恥ずかしくて死んでしまいそうだ。だが何より、擦り合わせた腿の内側から立つ、糸を引く水音が、寝起きの柔い理性に絡み付く。

 片手を、そっと股座へ伸ばす。ぬるりと滑る肌に、目蓋を閉じて小さく息を吐いた。

 「……んー、」

 「っ、」

 指を動かすと、くちりと湿った音がした。と、ほとんど同時に、肌と鼓膜を、吐息にくすぐられた。さり、とシーツの擦れる音と、もぞもぞと隣に横たわる身体の動く音がする。

 起こしてしまっただろうかとウォルターは指と呼吸を止める。

 「……」

 数秒。心臓が早鐘を打っていた。

 だがその身体がそれ以上動くことはなかった。すぅ、と穏やかな寝息が再度聞こえ始めて、ウォルターは胸を撫で下ろす。くちゅり、と再び指が動き始める。

 「……ふっ、ぅ」

 目蓋を閉じて、陰部からの感覚に集中する。さっさと終わらせてしまおう。時間をかければ、見られるリスクが増す。こんな、自分でいじる姿なんて、見られたら何を言われるか分かったものではない。向こう半世紀は揶揄され続けるに違いない。

 くちくち、くちゅり。にゅりにゅり。

 はしたなくも溢れる蜜液を指に纏わせ、秘豆を擦る。はらの中をいじるのは、そのために足を開くことも含めて、傍の男を起こしてしまいそうだと思った。

 「ん……、く、っ、」

 声を押さえ付けながら手を動かす。

 きもち、いい。

 けれど、いつも“される”のと比べて、何となく、物足りなさを感じる。

 たぶん、触れられる箇所の違いだろう。いつもは、秘所に加えて胸もいじられたり、口付けをしていたりするから。

 「ふ、ぅ……、ン、ん……っ」

 考えてしまえば、閉じた目蓋の裏に、“いつもの”情事が呼び起こされる。少し痛いくらいにいじくられる胸。溢れる唾液を注がれて溺れかける口付け。耳殻を舐める声。肌をくすぐる吐息。移り合う互いの体温。

 「――は、ァ……、」

 思い出すだけで身体は“その気”になった。

 無意識に、縋るように額を傍の胸元に擦り寄せていた。香水も何も着けていない、その人間自身の匂いが鼻をくすぐる。もう片方の手は、触れる場所を腕から手指へ移していた。触れれば、己を暴く指のかたちを、確かめられた。

 頭の中で声がする。くすくす笑いながら、名前を呼んでいる。名前を呼んで、厭らしい身体を指摘して、それを可愛らしいと甘やかす。

 ウォルター。きもちいいか? 指の1本でこんなにも濡らして。きもちよくなっているのか? いやらしいな。はしたない。私に少し触れられるだけでこんなになって――

 「おまえはほんとうにかわいいなァ、ウォルター」

 「んッ……ァ……え? ァ、ぅあアッ!?」

 頭のすぐ傍で声がした。少し掠れていたけれど、間違いなく意識のある声だった。

 「なっ、ゃ、ァ、ひ、ゃめ、や、そんな――」

 当然、ウォルターは焦った。

 焦ったけれど、もう遅かった。身体は既に高みへ上り詰めようとしていた。

 指が止められない。大きな手が上から覆い被さって、ウォルターの手諸共動き続けているのだ。ぐちゅぐちゅぐちゅ、と水音が激しくなる。

 「ゃ゙――待、なん゙ッ゙、あ゙、ぐ――ッ!」

 「イけ、ウォルター」

 「ン゙ぅ゙ッ゙――ア゙、ひッ、ィ゙ッ゙~゙~゙~゙!゙!゙」

 ピン、とウォルターの足が伸びて、ガクガクと身体が震えた。指に触れていると思っていた手は、いつの間にか指を絡めて繋がれていた。それに気付くことなどできず、ウォルターは繋いだ手をぎゅうと握り締めて絶頂を味わう。

 くすくす、と笑い声がした。

 「ッぁ、ぅ……、ふ、ぅっ……! す、スッラ……!」

 ウォルターがふるえる声でその名を呼ぶ。同衾者でありパートナーであり、ウォルターをこんな身体にした張本人である男の名だ。

 ウォルターの股座を覆う手が動かされ、ぐちゅりと音が鳴る。ひぃ、とウォルターから真っ赤な悲鳴が上がる。

 「お前が一人遊びとはな」

 「ぁ、あ、ちが、これは、その、」

 「昨夜は控えめにしたものなァ」

 「ひッ! あ、ッ! 待、て、いま、まだ――んあァ゙ッ゙!゙」

 スッラの手が水音を立てる。そうすれば、さして経たずにびくんとウォルターの身体が跳ねた。スッラの胸元に額を押し付けた顔は未だ上げられそうにない。ぜぇぜぇと湿った呼気が肌を濡らす。

 スッラがウォルターの身体をころりと抱き寄せる。ウォルターはふたつの身体の間に顔を埋めようとするも、隠しきれるわけもない。赤くなった頬や目元や耳を、くちびるが辿った。

 「ウォルタァ。今日一日我慢できそうか?」

 くすくす、と見ずとも分かる、意地の悪い顔をした声が注がれる。それだけでもう、ウォルターの身体はぴくぴくと跳ねてしまう。

 「まあ、仕事はきちんとしなければ――だが」

 愉しそうな声に嫌な予感がしたことは、言うまでもない。

 身を清めて朝食をとって、そうして仕事に行くために外行きの服に着替えようとしたところで、スッラがするりとウォルターの背後から覆い被さってきた。嫌な予感が外れたかもしれない、と淡い期待を抱いた矢先だった。

 ひ、と思わず声を漏らしたウォルターを、ククと蛇の喉が笑う。

 「お前がさびしくないように、オトモを着けてやろう」

 「い、いらない。そんな、不要だ。寂しくなんてならない」

 ツツ、とスッラの指先が抱え込んだ身体を辿る。胸板を辿って腹へ臍へ。手のひらが、臍の少し下を覆う。それにすら「夜」を思い出して、ウォルターは小さく息を呑んだ。

 「では、ひとが眠っているのを良いことに一人で楽しんでいたことに対する仕置きと言うことにするか」

 そして、見えなかったもう片方のスッラの手が、ウォルターの身体の前に現れる。その手には、女性物のショーツと「縄」があった。

 「……!」

 「ハンドラーなら分かるだろう? 悪い子は、お仕置きして躾てやらねば、な?」

 女性物のショーツは、まだ良い。ウォルターは自分のことを男だと思っているが、身体構造として女性物のショーツを履くことは、仕方ないと言うか、まだ許容できる。

 だが縄とは何事だ。艶やかな赤の「麻縄」なんて、どこから調達してきたのか。

 「ま、待て……っ、んッ、ぅ……、す、すっら、」

 あれよあれよと履かされたショーツの上から縄をかけられる。待て、とか、やめろ、等と言いつつスッラに強く出られないのは言われた通りの後ろめたさがあるからか、それともウォルターが“望んで”いるからか。

 クロッチや腹に縄が食い込み、身動ぐ度に擦れる。身動ぎで擦れるのだから、歩いたり座ったりしたらどうなるのか。

 「ぅ……くッ、ぅぅ……、」

 何より、愛らしいデザインのショーツと鮮やかな縄を、自分のような男が纏うなんて。

 “分かりやすい罰”に安堵が過り、倒錯的な光景に羞恥の火が爆ぜる。するりと縄を辿る指先に、熱を帯びた吐息が漏れた。

 「く、ふふ……、ウォルター、そんな顔で仕事に行くつもりか?」

 ちゃり、と小さな金属音がして、背部に作られた縄の結び目に重みがかかる。縄を解いてしまわないように、否、縄を意識させるように、錠をかけたようだ。

 潤む瞳が、なんとかスッラを睨む。

 「“自業自得”だ、ウォルター。精々怪しまれないように気を付けろ」

 「っ……好き者め」

 「それはお互い様だろう」

 触れるだけの口付けをしながら縄をくいと引かれて呼吸が止まる。スッラから離れようと半歩足を引けば、それでまた縄が股を擦った。

 「はやく服を着ろ。遅れるぞ」

 実に愉しそうな眼をしてスッラは言う。その指はもう縄から離れていた。

 今日の仕事は視察だった。復興中のルビコンⅢの、あちらやこちらの再建具合を見て回るのだ。ウォルターとしては現地や現場の好きにしてくれて良いと思うのだが、まとめ役となっている解放戦線から視察や確認の要請が時折舞い込む。曰く、出資者への礼儀だとか何だとか。

 その度にウォルターの胸は軋む。だって自分は、彼らの住まう場所を、彼らの命と共に奪おうとしたのだ。和解にあたって情報を開示した――何故だかこうなった原因と言うか功労者である621は各勢力の情報を概ね把握しているようだったのが至極謎だ――折り、一部の者たちから向けられた敵意こそが相応しかろう。それなのに何故自分は彼らの「街」へ招かれるのだろう。自分はただ、“加害者”として当然の贖い、援助をしているだけなのに。

 スッラの運転する大型四輪駆動車は未だ瓦礫にまみれたルビコンⅢを走る。道と車体の割に揺れない車内から、ウォルターは流れていく風景を眺めていた。

 やがて目的地が見えてくる。大きな建物の前に、既にいくつかの車影があった。

 スッラはやはり車を揺らさずに停めた。これもまた静かに運転席から降りて、降車しようとしているウォルターを抱えて降ろしてやる。

 「ぃッ……!」

 スッラにヒョイと抱えられ――わざとでないとは言え――縄が擦れたウォルターは小さく声を漏らす。思わず自分にすがり付く身体は愛らしく、着込んだ服の下に微かに触れる縄の存在が夜を滲ませる。クク、と小さく鳴ってしまった喉に、上着を掴む指先に更に力が込められた。

 「なるほど、見せつけてくれる……!」

 端から見れば仲睦まじいふたりの姿に誰か――解放戦線のラスティだ――が呟いた。

 集合場所には解放戦線の人間数名の他に、レッドガンの人間もいた。

 「? ハンドラー・ウォルター、顔が赤いようだが、大丈夫か?」

 二人分の足音に気付いてだろう、振り返ったミドル・フラットウェルがウォルターを見て首をかしげる。

 「……問題ない。移動に使った車の暖房が効きすぎていただけだ」

 「そうか? ならば良いが……」

 上着の襟に口許を隠しながらウォルターが答える。フラットウェルは特に言及することなく手元のタブレットへ視線を戻す。画面を見ながら、ラスティと何やら言葉を交わしていた。フラットウェルの意識が自分から逸れたことを確認したウォルターは、ふ、と小さく息を吐いた。

 「では私も仕事へ行くとしよう。大したものではないから、視察が終わったら連絡しろ。迎えに行く」

 スッラが胸を撫で下ろしたウォルターの耳元で笑う。普通に話せば良いものを、わざわざ声を潜めたのは故意だろう。

 ――どうせ、徒歩で帰るには厳しい距離だ。車両なり何なりが無ければ住処へは帰り難い。電車やバスと言った交通機関の整備が待たれる。

 それでもどこか悔しくて返事を躊躇っていると、前方からG1のミシガンが歩いてくるのが見えた。ウォルターが、表情を少し明るくして顔を上げる。

 「ミシガン」

 「元気そうで何よりだ、ウォルター。と、誰だ貴様は」

 スッラが目を細めたのが分かった。緊張の糸が、埋もれていた砂の中から浮き上がる。

 そう言えば、スッラとミシガンは初対面だったか。スッラはルビコン「周辺星系」を活動の場としているし、ミシガンは「ルビコンⅢ」に進駐している身だ。接触の機会は無いに等しい。

 ウォルターが場を執りなそうと、口を開こうとする。だがその前に、口を開いた者があった。

 「……分かったな、ウォルター。“迎えに行くから連絡しろ”」

 「スッラ……!」

 スッラは、そうウォルターへ告げた。そして、今度は特に潜められもしなかったその声と言葉はミシガンにも聞こえただろう。

 ぽん、とスッラの手がウォルターの肩を叩いて離れていく。ルビコンの冷えた風が頬を撫でる。ミシガンとウォルターは呼び止める隙すら与えずに遠ざかっていく背中を見送った。

 「スッラ? ではアレが「ルビコンの独立傭兵スッラ」か」

 走り去っていく四駆を見送りながらミシガンが呟く。

 「随分と、若いように見えたが……本当に第一世代なのか? あの男は」

 独立傭兵スッラ。名前は聞いたことがあった。ルビコンの周辺星系で活動している独立傭兵。その活動は、アイビスの火以前まで遡ることができる。そして「スッラ」は多くのAC乗りの例に漏れず強化人間であるが、その術式は第一世代だ、と。

 他の人間の話が混ざっているのではないかとすら思う話だ。特に「現物」を見てしまえば、なおさら。

 「……ああ。アレが「スッラ」だ」

 だが、他ならぬウォルターが頷くのならば。

 「……そうか」

 やはり、あの男は「スッラ」なのだろう。

 第一世代強化人間の独立傭兵。ハンドラー・ウォルターの天敵。そして“ウォルターが自身を許した”男。

 ミシガンは大きく息を吐いた。

 自分が、ウォルターに懐かれている自覚はある。ウォルターが“ひよっこ”だった頃からの付き合いなのだ。ハンドラーでないウォルターを知っているし、ウォルターもG1でない自分(ミシガン)を知っている。

 だがあの男(スッラ)は、ミシガンが知る以上のウォルターを知っているのだろう。おそらく。ウォルターの、木星に来る前を知っている。

 スッラについて、ウォルターは特に何も言わなかった。ただの同業者。協働したこともあるし、敵対したこともある。そのくらいだ。ミシガンとの仕事に関係のない人間であったし、ウォルターが身の上を語らなかったこともある。ミシガンも詮索――深入りしようとはしなかった。そこまでの興味が無かったからだ。

 しかしこうも見せつけられてしまうと、小さくはない寂寥と言うか嫉妬を覚えてしまう。ウォルターを甘やかしてやれるのは自分か、RaDとか言う技術者集団の頭目くらいだと思っていたのに。よりによって、あんな表情をする男が側にいるとは。

 ミシガンは誰にともなく溜め息を吐いてウォルターに向き直る。加齢とは別件でその足を支えることとなった杖は健在だ。

 「行くか。……エスコートは必要か?」

 「そうだな。……気遣いなら不要だ」

 冗談めかして訊けば冗談めかした調子が返ってくる。ハンドラーでも何でもない、ウォルターとのやり取り。まあ、自分とてウォルターとは長い付き合いなのだ。こうして撃ち合う以外の仕事で顔を会わせることもできるのだし、今後も交流は続いていくだろう。

 ニヤ、と片方の口角を上げてミシガンは笑う。悪巧みするような顔だった。ウォルターも片眉を上げて答える。悪い大人の顔だ。そしてふたりは並んで歩き始める。背後に爆炎の上りそうなツーショットだった。

 視察は恙無く終わった。

 全体としては。

 視察対象は将来ACもしくはMTのパイロットとなる人材を育成するための施設だったのだが、その屋内の段差で足を踏み外したウォルターを、ミシガンが支える場面があった。あってしまった。

 フッと崩れ落ちかけた身体を、腹――腰の辺りに腕を回すことで支えて、ミシガンは、いつもより着込まれた服の下に、何かザラリとしたものに触れたのだ。

 それはどうやら紐とか縄のようだった。

 は? と、思わず空気を吐いた。硬く冷たい床に座り込むことを免れたウォルターを見下ろす。ウォルターもまたミシガンを見上げていた。じわ、と頬や耳に赤みが滲んでいく。久方ぶりに見る、まん丸くなった目が、潤み始める。

 「な、なんでもない。なんでもないから、なにも、何も言うな」

 喘ぐように言って、ミシガンの腕を支えにウォルターは立ち上がろうとする。

 そして運悪く――

 「大丈夫か、ハンドラー・ウォルター」

 「っひ!」

 ふたりの姿を見とめたG6のレッドが、ウォルターの背を支えにやってきた。

 背中を不意に触られウォルターが悲鳴を上げる。その反応と、自分を振り返ったウォルターの顔に、レッドの顔もまたじわりと赤くなる。

 「だ、大丈夫だ。大丈夫、だから、何も言わないでくれ……」

 たぶん、レッドはミシガンと同じように「縄」に触れた。そしてレッドが知るウォルターの関係者は、G13レイヴンと彼の交信相手のエアくらいのものだ。つまり、レッドの中でG13に対する誤解と言うか風評被害が生まれたことだろう。

 「りょ、了解、した……。ぁ、えと、お、俺は、趣味嗜好は、個人の自由だと思っているぞ……!」

 追い討ちだった。立ち上がりかけていたウォルターがくぐもった唸り声を上げながらへたり込む。それでまたぴくぴくと肩や腰が跳ねていた。悪循環だ。

 ミシガンは顔を赤くしておろおろする旧友と部下に遠い目をするしかなかった。

 一部参観者にとって気まず過ぎる時間だった。

 幸いにも解放戦線からの参加者たちや何も知らないレッドガン隊員たちは建物やその展望に意識が向いていてウォルターを見る者は――知る限りでは――いなかった。多少顔が赤いのも歩みが遅いのも、無理なく言い訳できただろう。できたはずだ。

 視察が終わり、解散すると“約束”通りスッラへ連絡を入れる。621から諸々聞いた上で――援助の上乗せや長期継続をしてもらいたいと言う思惑もあるのだろうが――「歩み寄りたい」と考えているらしいラスティが、送ろうかと提案してくれたが「先約がある」と断った。敬老精神溢れるレッドガン隊員たちからの気遣いも、同じように断らせてもらった。申し訳なさと羞恥ばかりが募る。

 迎えは思いの外早く来た。言っていた通り、大した仕事ではなかったのだろう。

 「良い子にしていたか? ウォルター」

 車から降りてきたスッラがにこやかに言う。ミシガンとぽつぽつ話していたウォルターは、こくりと頷いた。早くこの場から消えて、人の目のない住処に戻りたいのだろう。

 蛇の目が、ウォルターの意図を読んで細められる。それからミシガンを一瞥して、それこそ蛇のようにするりとウォルターの腰へ腕が回された。

 「……スッラ、やめろ。人前だ」

 微かな声の上擦りは、スッラだけに聞こえた。

 仄かな石鹸の匂いが、ウォルターの鼻を擽る。

 スッラは、もうシャワーを浴びている……。

 知ってしまえば、ウォルターの胸は忙しく跳ねた。それを、息を呑んで押さえ付ける。まだだ。まだ、仕事中だ。帰りつくまでが、仕事だ。

 「……スッラ、」

 ペシペシと手の甲を叩かれてスッラはウォルターの腰から手を離す。存外素直に退いたスッラの手に安堵の溜め息を小さく吐きながら、ウォルターはミシガンを見る。

 「では、俺はこれで。仕事の連絡ならいつでも歓迎するぞ、ミシガン」

 「仕事だけか?」

 言ってから、ミシガンは心の中でウォルターに詫びた。つい、いつもと同じ調子で返してしまった。

 「なるほどな、ウォルター。クライアントとの信頼関係は確かに重要だ。機会をしっかりものにしなければな?」

 笑っていない目がミシガンを写した。あの第一世代強化人間ともあろうものが、分かりやすく大人げない。これは相当ご執心らしい。予想以上だ。

 「それではな、木星戦争の英雄殿。ウォルターが“世話になった”」

 クク、とやはり温度のない声で笑って、スッラはウォルターを伴って車へ向かう。ミシガンの前方に遠ざかっていくウォルターの背中は、普段よりもふらついて見えた。

 ――あまり詮索をするものではないが……一度、あの男と話しておくべきかも知れんな。

 スッラとウォルターの背中を見送りながら、ミシガンは頬の内側を噛んで無表情を保とうとしていた。

 スッラの車で住処に戻ると、スッラはウォルターの希望に反していつも通りの日常生活を続けた。

 仕事から帰ってきて、食卓へ案内して、食事を取る。物言いたげなウォルターと眼が合っても「どうかしたか?」と微笑むばかり。食後にとうとうウォルターが絞り出した「焦らすな」と言うおねだりは「シャワーを浴びてこい」と一蹴された。

 その言い方が、あまりにあっさりとしたものだったから。もしかして今日はシないのではないだろうか。なんて考えが頭を過る。普段ならばまず考えないことだ。けれど今日は、これは、このままなんて酷い仕打ちだ。身体はもう触れられる悦びを知っていて、今日はもう途中まで触れられているのに。

 脱衣所の鏡の前で溜め息を吐く。ちょうどその時、脱衣所の扉が開いてスッラが現れた。

 けして広くはない空間で、しかしごく自然な動きでスッラはウォルターの背後に立つ。チリ、と金属音が鳴った。微かに縄の引かれる感覚と、縄に提げられた錠に触れられる感覚に、ウォルターの胸が小さく跳ねる。

 鍵の先が、自分の身体に差し込まれたような気がした。

 「……っ」

 カチャリ、と、鍵の回る音がする。

 次いで、するすると縄が解かれていく。スッラの手が、自分の身体から赤い縄を巻き取っていくのを、ウォルターは鏡越しに見ていた。

 縄を解いたスッラは何も言わずに脱衣所を出ていった。鏡越しにウォルターを見て、弧を描くくちびるを項に落として、出ていった。

 残されたウォルターは鏡を見る。少し前までなら考えられない、情けない顔をした自分がそこにいた。腹の辺りに薄く、縄のような赤い線が走っている。

 風呂場で慰めることも、ウォルターにはできた。身体を洗う、以外の意図を持った手が、秘所へ伸びかけたことも、否定しない。けれどウォルターは結局伸ばした手を引っ込めた。手やシャワーが当たる度に唇を噛んで、耐えた。触れれば、この後の自分の首を絞めることになると、知っていた。

 「今日一日どうだった? ちゃんと仕事はできたか?」

 「はッ――、あ、ぁ゙ゔ、ゔッ……ぐ、ぅ、ぅ……!」

 果たしてウォルターの判断は正しかった。

 「ウォルタァ?」

 「ひッ、ぃ゙ッ……、し、したっ、ちゃんと、仕事、した……っ!」

 ぐちぐちとスッラの指がウォルターの蜜壺を掻き回す。身を清めても、その後の愛撫と口付けに期待を溢れさせたそこは潤滑剤の類いを必要としなかった。

 「そうか。偉いぞ。では褒美をやらねばな」

 言い終わらないうちに、スッラは手の動きを大きくする。

 「は、ぁ゙、ゔ! ん゙ぅ゙ぅ゙ゔゔゔ!゙」

 水音だけでなく、重たげな飛沫も跳ねる。ぐちゃぐちゃとびちゃびちゃの間の音が立つ。ウォルターは両腕で顔を隠す。きゅ、と噛まれた唇は赤く濡れていた。丸まった爪先は快感を堪えようとして叶わない。

 ガクン、とウォルターの身体が跳ねて震える。特に腰がカクカクと震えていた。きゅむきゅむと濡れた媚肉に指を揉まれながらスッラは笑う。浮き上がった腰をそのまま持ち上げて、その下に何かを入れた。それは細長いもので、ぬるぬるとしていた。

 「っぅ、ぁ……?」

 腰から双丘のあわいを通って股座を抜ける。ぬちゅ、と陰部に細く固いものが食い込む音。達したばかりの身体は案の定それにひくついた。

 腕の影からウォルターは自分の身体を見下ろす。そこには、開かされた足の間には、見覚えのある赤色を摘まんだスッラがいた。

 にしゃりとスッラが笑う。眼が合った。

 ぬち、にちゅ、と赤色が引かれる。

 「ひッ――ァ……ゃ、やめ、そんな、だめ、だめだ」

 「遠慮するな」

 スッラの手が明かりに照る赤色――潤滑剤とウォルターの愛液に塗れた麻縄を勢いよく引いた。

 「ま゙ッ゙、やめ、や゙、ぁ、あ――ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!゙!゙」

 にぢゅぢゅぢゅぢゅ! と縄が蜜壺の縁と秘豆を轢いた。

 縄が腰を撫でながら消えていく。堪え性無く浮き上がった腰に、縄は然して張らずに通り過ぎるかと思われた。が、緊張に強張る双丘がしっかりと挟み込んだおかげで端までしっかりと引き甲斐のある手応えをスッラに伝えた。

 「ぁう、ゔ……、ひぐ、ぅ゙ぅ゙……」

 内腿を引きつらせながらスッラを睨む姿は愛らしさしかない。どろどろの縄を、上下する腹の上に乗せてやりながらスッラは上機嫌だ。

 「っく、ふふ。かわいいなァ、ウォルター。だが私は心配だ。どうせお前はその“かわいい”顔を他の奴らにも見せたのだろう?」

 「っ、かわい゙、ぐ、など、ない゙……!」

 「おまえはかわいいよ」

 どろりと甘い毒のようにスッラは囁く。しかと両腕で捕らえた脚の根元、内側に噛み付き吸い付いて痕を残す。そのくちびるは湿った肌の上をすべり、ぬるついた下腹部に辿り着いた。

 スッラの良くない眼と、ウォルターの蕩けかけた眼がかち合う。

 「――や、やめろ、スッラ……!」

 縋るように自分の名前を呼んだ声を、スッラは笑って受け流した。

 そして、かぷりとわざとらしい音がして、スッラの口の中にウォルターの秘所が消えた。

 「~~~~~ッ!!」

 にゅるりとスッラの二又に割れた舌がウォルターの下腹部を撫でる。粘膜同士の接触に、ウォルターの顔が腕に隠れたままヘッドボードを仰ぐ。

 昔、技研都市が健在で、スッラが強化手術を受ける前に訊いたことがあった。どうしてスッラの舌は先がふたつに分かれてるの? と。若かりし傭兵は、そんな無垢な質問に「面白そうだったから切ってみた」なんて答えた。曰く、下手な医者よりも腕は確かだろうし「検体」は丁寧に扱うだろうから、とラボで施術してもらったと。ウォルターはその当時、この傭兵とラボの友人たちはずいぶん仲良くなっているのだな、なんて思った。

 「っは、ぅ、うあ、あ゙、あああ……! ゃう、やッ、ァ、ひぃいッ」

 ちゅぷり、ちゅ、にちゅ、と水音の立つ度、敏感になった陰部をスッラの舌が舐るのが分かる。広く平らな面で轢かれたり、固く尖らせた舌先でつつかれたり、抉られたり、分かれた舌の間に挟まれたりする。

 「やだ、ゃァ゙……っ、す、ら、そんな、っとこ、ッァ、舐めるなぁ……ッ!」

 「んー?」

 「ッ~~~! ひ! あ、ぁ゙あ゙ッ゙! ん゙ぅ゙! ッ゙ぅ゙……!」

 スッラの声、が、はらにひびく。

 脚をバタつかせようにもスッラの腕がガッチリと押さえ込んでいて、わずかに跳ねさせるばかりが精々だ。腰は脚よりも動くけれど、浮かせればスッラに下腹部を押し付ける格好になってしまう。

 恥ずかしくてきもちよくて、溺れそうになる。

 「っゃアアア゙ア゙ア゙!゙!゙」

 じゅるるるる、と音を立てて陰部を吸われ、堪らず腰が浮く。陰唇を食んでいるくちびるが、弧を描いた気がした。

 「ひぐッ! ひッ、ァ、ああッ! ぅあ、あ゙、す、吸うなッ……ァ、ゃ゙、ひぃぃッ! 舐めるの、も、ッ、やめ、ぇ゙ッ゙、ア゙、はッ、アアア゙!゙」

 「っふ……。はは、嫌々ばかりだな。せっかく擦れて赤くなったのを労ってやっていたのに……ならばもう止めるか?」

 「……!」

 ずるり、と蜜穴から舌を抜いてスッラは言う。蜜壺から引き抜かれた愛液はどろりと糸を引いた。二又の舌先が、見せつけるようにぬろりと秘豆をなぞる。

 そうして、ひくひくふるえる脚や腹に、赤い痕が咲いた。

 ウォルターのくちびるがわななく。大きく上下する胸板の飾りは、ぴんと起ち上がっていた。

 「っ、ゃ、ぅ……」

 「ん?」

 「ゃ、やめる、な、」

 小さくふるえる声がして、ぐず、と洟をすする音がした。

 「嫌なのだろう?」

 「な、舐めるの、と、吸うの、が、嫌な、だけ、だ……!」

 「何故?」

 「気持ち、っ、良すぎてっ、おかしくなる……っ」

 たぶん、ウォルターは自分が何を口走っているか分かっていない。今日一日「お預け」された身体を触られて、最近柔らかく――もちろん良い意味で、だ――なった理性はもうぼろぼろなのだろう。スッラは「はは」と笑った。

 「はは! そうか、おかしくなる、か! おかしくなっても愛してやろう、ウォルター。お前はもはや私の伴侶なのだから!」

 お前がどうなったとて、手放すなどとんでもない!

 身体を起こしたスッラは獰猛な顔で笑った。

 シーツに溜まるほど溢れた愛液で指を濡らし、蜜壺の中へ差し込み掻き回す。“閉じている”とは思えない泥濘具合に、これをつくったのが己だと思うと上がる口角を押さえられない。ましてや、あのウォルターの身体なのだ。愛する以外に何をしろと言うのか。

 指の1本で肢体をビクつかせ、2本目を挿れればそれだけで気を遣った。潤いは言うまでもない。柔らかさも十分だ。スッラは他の“閉じた”胎など知らないが、ウォルターのこれはだいぶ湿潤で柔軟なのではないだろうか。「鉄のような」と評されるウォルターの身体が柔く潤んでいるとは。鉄と言うよりもバゲット、あるいは固そうな――暗い――色としてフォンダン・オ・ショコラではないだろうか。なんてそんなことを考えて、なるほど美味いわけだと一人頷く。

 「さて。ウォルター? 私は今日一日この時までお前への熱を理性的に鎮めていたわけだが……労いの言葉のひとつやふたつ、貰っても罰(バチ)は当たらないと思わないか?」

 顔を隠す腕を退かし、真っ赤に潤んだ顔を覗き込みながらスッラが言う。ウォルターの下腹部に、溶けた鉄かと紛う熱さと重さが触れていた。

 スッラとしては、挿入の前に少しウォルターに触れてもらおうとか、そのくらいのことを考えていた。少し触れて、おずおずとおねだりを一言でも吐かれれば上々だ、と。

 ハンドラーならば褒めるのも仕事だ、と。かつてスッラはウォルターに教えた。

 「っ、ぁ――」

 理性固く、また羞恥強い少年のくちびるが、はく、とただ開閉だけをした。

 「ぁ……ぅ……、そ、の……、すまな、かった……。から、スッラ、の、好きな、ように、して、くれ……ゴム、も、無くて、いい、し、出して、いい、から……!」

 ウォルターの腕が首に回され、引き寄せられる。首の後ろ、旧い強化手術痕に触れた手が少し怯んで、しかししっかりと首にすがった。脚も、腰に回される。ぬち、と肌が擦れ合って立った音は、おそらく偶然ではなかった。

 「ぜんぶ、さわって、くれ」

 眼が合うことはなかった。ウォルターは必死に寝室の扉の方を見ていた。

 は、とスッラは笑った。ウォルターの言葉は、褒めた、とは言わないだろう。だが“褒”美ではあった。

 「ぜんぶ触る? 全部虐めるでなくてか?」

 「ぁ……う、」

 スッラはウォルターがいじめられるのが好きなことを知っていた。否、好きに“させた”。幾ばくかの痛みと快楽を紐付けて教え込んだ。

 痛みは罰でもある。だからウォルターと相性が良かったのだ。自罰的な男は、おのれに罰を与える理由を持つ者に与えられる痛みを甘んじて受け入れる。そしてそこに生き物の本能が持つ欲求のひとつを加えてやれば――ウォルターはベッドの上で“罰”に悦びを見出だすことに甘やかな罪をおぼえて咽び泣いた。

 まったくよろしくない、負の連鎖だった。毒蛇の、思い描いた通りの展開となった。

 「ほら、ウォルター。“ちゃんと”言え」

 「ぁ、ぁ――、っ、ぉ、俺、の、おまん、こ、も、ちくび、っ、も……、たくさん、突いて、つねって、いじめ……て、ほし、い……!」

 とぷりと人知れず蜜が溢れる。目蓋を固く閉じて眉間に皺を寄せたウォルターは幼く見えた。

 「きす……、キス、も、して、」

 「良いのか?」

 「いい、っ、良いから……!」

 追加の可愛らしい要望にスッラは破顔する。そして「どうせならフェラさせておけば良かったな」なんて思った。

 片や愛液に、片や唾液に濡れたくちびるが重なり、互いを求め合う。はふ、はふ、と呼吸を奪い合う音はやがてくちゅ、ちゅむ、と舌を絡め合う音となっていった。

 「ッぁ゙、ぉ゙――、」

 そして、重なっていたくちびるが離れたとき、ようやくずぶずぶとスッラの熱がウォルターの胎に挿入された。

 「ぁ、ぁ゙ぅ゙、あ゙、ぁ゙……!」

 かひゅ、とウォルターの肺から空気が押し出される。天井を仰ぐその瞳は蕩けきっていて、理性の姿など見つけることはできなかった。

 ごちゅ、と腰を打ち付ければ、あう、と顎が跳ねた。

 「動くぞ」

 スッラが耳元で囁く。ウォルターは、なんとか目蓋を閉じて、こくこくと首を縦に振った。

 どちゅ、どちゅ、どちゅ、と重たい音が胎に響く。もはや果たす役目も無いと言うのに下がりきった“雌”はおのれが認めた雄に必死に口付けている。ちゅぷ、ぢゅむ、と凹凸のハマり合う直前のような音が糸を引く。

 「ぉ゙ッ、あ゙、あ゙あ゙ッ゙~゙~゙~゙!゙ ひッ、ぎぅ、ぉ゙、んぁ゙ああゔ……!」

 「きもちぃか? ウォルター」

 「ひぉ゙ッ゙、ぉ゙、あ゙、ん゙あ゙、ぅ゙ぅ゙ッ゙」

 呼吸を詰まらせることはあれど声を然して抑えない喉は蕩けた故か、それとも相手がスッラであるからか。

 「好過ぎて苦しい? はは、そうか。なによりだ」

 はくはくと喘ぐばかりのくちびるから、その言いたいことを読み取る。スッラには容易いことだ。そも、舌が紡がずとも、瞳が雄弁だった。

 「明日は何の予定も無いから、好きなだけ溺れていいぞ」

 私も遠慮なくお前を抱ける。

 ぐり、とスッラが切っ先を最奥に押し付けると、ウォルターの身体は電流の走ったようにびくびく震えた。きゅうぅ、と縮こまる媚肉に、軽く気を遣ったことが分かる。もはや少し触れただけで甘イキを繰り返す身体はどれだけ“我慢”していたのだろう。反動で壊れてしまいそうではないか。

 ――まあ、そういうところが良いのだが。

 ようやく人並みの営みを享受できるようになったのだ、溢れるほど与えてやりたい。

 「っんぎ! ぃ゙ッ゙、ァ゙――ッ!」

 起ち上がり、ふるふる震えていた胸の飾りを摘まんでやる。かたちの変わるくらい、潰すようにしてぐにぐに捩ってやれば、ウォルターの胎はまたひくひくと雄を締め付ける。

 「ウォルター、報告しろ」

 スッラがクツクツ喉を鳴らしながら囁く。まだウォルターが駆け出しだった頃、仕事をひとつひとつ教えるために遣り取りはこまめにしていた。もちろん、“ウォルターだから”だ。

 叩き込まれた習慣は、そう簡単に失われるものではない。声に言葉に言い方に、呼び起こされた記憶は身体を支配する。

 「ぉ゙、ぁ、ぁう、ぐ……っ、も、ずっと、イって、て、っ、むねっ、さわられて、ぇ゙……っ、また、イッあ、あ゙……ッ!」

 「どうしてどこでイッている? 具体的に話せと言っているだろう。胸を触るのは、こんな感じか? はは、今日は初めてこの触り方をすると思うのだが、私の記憶違いか?」

 言いながら、ぎゅむ、とスッラの手がウォルターの胸板を鷲掴んで揉む。乳房となる厚い脂肪の無い胸は、それなりの力でもってぐに、と揉まれた。

 「ん゙ぎ! ひッ、ぁ゙ぁ゙ッ゙!゙ あゔ!゙ ぉ゙ッ! ぅ゙、うぅ゙……!」

 そしてその間にもスッラの腰は動き続けている。どちゅどちゅ、ばちゅばちゅとウォルターの蜜壺を穿ち続け――

 「ッ!! ッぉ゙、ァ゙――ひッ、い゙、ァ゙ア゙ア゙ぁ゙ぁ゙ぁぁぁッ!!」

 ウォルターが、また気を遣った。

 今度はそれなりに深い快楽に沈んだらしい。

 身体が跳ねて、腰がカクつき、とろけた瞳が天井を眺める。唾液を端からこぼす口は、か細い声と湿った吐息を浅く吐き出している。

 「ぁぅ、ぁぁ、は、ふ……ぅ、ん、んぅ……、」

 目蓋を閉じたまま、吹き荒ぶ快感を消化しようとしている。のを、構わずスッラは“続ける”。

 ぐ、ぐ、と、最奥に触れさせたままの熱を、そのまま押し付ける。離しはせず、押し付けて、少し引いて、また押し付ける。

 その動きを、ウォルターは開いた目蓋の中に、仄かな恐怖として映した。

 「ぁ、あ゙――、なん、っ、なぜ、も、ぉれ、いっ……、いった、」

 「そうだな。だが私はまだだ」

 「そんな、ァ゙、」

 付き合ってもらうぞ、と口角を上げたスッラは眉間に皺を寄せていた。

 「は、ぁ、ぁぐ、ぅ゙、ぉ゙――、ぉ゙、ァ゙、ア゙……!」

 「はッ、は――、はは、好さそうだなァ、ウォルター?」

 「ん゙ん゙、ン゙、んぅ゙、ぅ゙ぅ゙、ア゙、ぁ゙、ゆぇ゙、揺れて、る、奥……っ、しきゅ、揺れてぅ……!」

 「ん。そうか。ちゃんと“報告”できて偉いぞ。続けろ」

 ぐちっぐちっと潤んだ肉の押し潰される音が糸を引く。肌に当たる互いの吐息に火傷しそうだった。

 「はッ゙、ォ゙、ォ゙ォ゙――ッ゙、ぉ、れ、おっ、ッ、おまんこ、ぐちゃぐぢゃ゙ッ゙!゙ ッ! されて、ぇ゙ッ゙、ち、ぃ゙ぎゅっ! ぅ゙ア゙!゙ ァ゙、ぐ、ッ、ぃくびッ、ぎゅう、て、さえて、ッ、いっア゙、のにっ、しきゅ゙、揺らさぇ゙てッ、また、またァ゙――!」

 「ふ――ッは! 良い子だ(good boy)、ウォルター。イく時は言え」

 ウォルターの双眸から、涙がボロボロあふれていく。額には汗を浮かべて、口元は涎に塗れてその中には熟れてふやけた舌が覗く。瑞々しく、溺れそうなことこの上ない。舌先を食んでやりながら腰にすがりつく脚を感じる。――“これ”があのハンドラー・ウォルターと同じ人物だと、何人が信じるだろう。否、何人にも見せる気は無いが。

 「ぁ、あ゙ッ゙――! ゃ゙、やア゙ッ゙、ァ゙――! なん゙ッ゙、こぇ゙ッ゙、な、ひッ!? ぃ゙、ぃ゙ぐ、ぅ゙!? す、スあ、すっりゃ、コェ、なん、こわ、ひ――んぎッ! イ゙ッ゙、ア゙、」

 「――良いぞ。イけ」

 スッラの一言で。恐怖と羞恥で塞き止められていた「快感」が弾ける。

 「うあ、あ゙、ッあ゙――~~~~ッ!!」

 もはや声も無くウォルターは背中を丸めた。腕や脚、のみならず、膣すらも目の前の雄(おとこ)に縋る。全身を、雷で鞭打たれたようだった。

 「はッ――……!」

 ほとんど同時に、スッラもウォルターを掻き抱いていた。僅かな身動ぎ、隙間を空けることも許さぬと言うように跳ね回る身体を押さえ付ける。ふぅふぅと耳元で聞こえる呼吸音には鉄錆のにおいが混じっていた。一拍して首筋に咲いた痛みに歯を立てられたのだと思い至る。口角が、吊り上がるのが分かった。

 「――……」

 「っあ! ひぅ、ぅ……! ぁ、ふぁ、ァア……ッ!」

 スッラが身動ぐと、くぷ、と蜜壺を満たした白濁が揺れる音がした。強張りの解けたウォルターの四肢は呆気なくすがっていた身体から離れる。もとい、滑り落ちる。けれど、スッラが一息吐いてからもウォルターの身体はぴくぴくと震えていた。あ、あ、と音が溢れ続けている。

 スッラはうっそりと笑って、ウォルターの下腹部を撫でた。上下する柔らかな肉の下から、薄らと半身の熱が伝う。

 「ひいッ――!」

 「どうした?」

 「ぁ、ぁ……、す、す、ら、俺、おれ、っ、からだ、おかしぃ……ッ、これ、なんッ、ずっと、ぁ、は、ッ……、ィッ、イッて……?」

 「ずっとイッてる感覚なのか?」

 こくこくと子供のような首肯が返ってくる。くふ、とスッラは笑う。

 「気持ち良くないか?」

 ふるふると、今度は横に振られる首。否定の意。

 「ならば良いだろう。そのまま感じていろ」

 ウォルターはまた首を横に振る。まあ、そう来るだろうとは思っていた。

 散々涙を流した瞳が、未だ潤んでスッラを見上げる。

 「すっら、きもちいいの、こわい」

 舌足らずな訴えを紡いだのは間違いなく深みのあるバリトンだったけれど、それは確かに「少年」の声だった。

 「……。怖くない。怖くない、な?」

 声音だけは優しく囁く。触れるだけの口付けをする一方で、下腹部を撫でた手は、撫でていたそこをぐ、と押した。赤い麻縄は、もうシーツの上に落ちて傍観者になっていた。

 下腹部への圧迫感に、ウォルターの目が丸くなる。

 「――か、はッ、ァ゙、ォ゙……ッ、ヒュッ、」

 泣きそうに歪んだ目を見届けず、スッラのくちびるは首筋や鎖骨を辿り、そして胸の飾りを食んだ。

 「ゃ、ゃあッ――」

 ぬるりと、蛇の舌が、柘榴の実にも似た粒を舐め上げた。

 「っあぁああああ!」

 ちゅぷっと音を立てながら口を離して、耳の輪郭に舌を沿わせる。わななく下肢から、達したことは言うまでもない。

 「イッたな」

 「ひぎゅッ! ひ、ひィッ、ィッ――!」

 「いやらしいなァ、ウォルター」

 「ぁう、ぁ、ぁああ……」

 「淫乱」

 「ひう……っ」

 「ポルチオをいじめられて、中出しされて達して、乳首を舐められるだけでまたイッて、やらしいなァ、ウォルター……」

 「ゃ……、言うな、っ、いわないで、くれ、」

 くふくふ笑って、スッラは頬と頬を擦り合わせてからウォルターの目元に口付ける。

 「言われるのが嫌なら先に自分で言うのはどうだ?」

 どうだ? も何もない提案であった。先に状態を口に出したからと言ってどうなるわけでもない。あるとしたら、自身の状態を実況することに対する羞恥と、実況に伴う改めての自覚だ。結局、快楽の一端になることは免れない。指摘されるか申告するか。ただそれだけの違いだ。

 だがウォルターは、毒にも薬にもならないその提案を丸呑みしてしまう。“そう”すれば良いのだ、と、無知な子供のように従ってしまう。それを提案したのが、己が知る、最も近しい“大人”であるが故に。

 「ん、ん……!」

 スッラは懸命に頷くウォルターの髪を撫でる。愚かで愛らしいいきもの。食っても喰っても喰い足りない甘美。

 「良い子だ」

 だから、今日はもう遠慮はいらないな、と思った。

 「――ひッ、ひぎ、ぃ゙、あ、あ゙あ゙あ゙……ッ! ゃ゙、らぇ゙、ッ、だめ、だ、ァ゙、いぐ、またイッ――ァ、ァ゙うあああ゙ァ゙ア゙!゙」

 「逃げるな。ほら、今どこでイッた?」

 俯せにひっくり返され、背後からスッラに覆い被さられてウォルターは泣き叫ぶ。

 挿入したスッラの動きは穏やかだ。だが熱の切っ先は相変わらず子宮口(ポルチオ)に当たっているし、ベッドと身体の間に差し込まれた手はそれぞれ胸と下腹部をいじり続けている。耳にかかる吐息は熱く、声は掠れて甘く、時折べろりと舐められてがぶりと噛まれる首や肩や背中はその度に背骨を痺れさせる。

 「わがっ、わがらにゃァ゙ッ、ァ゙、ぅ゙ぅ゙ぅ゙!゙ んきゅッ、ぅ゙、ぐぅ゙、ッァ゙――、ォ゙、ォ゙……ぅ゙、ァ゙、ちくびっ、ちくび、いぢめられてっ、イッたッ! い゙ぎま゙じだ!゙」

 摘ままれた乳首の先がシーツに擦れて、それだけで気を遣った。と思う。ウォルターは、もう自分がどこで達しているのか分からなかった。どこもかしこも熱くて溶けそうだ。

 だから、思わず敬語になってしまった。意識を飛ばしてもすぐに叩き起こされるのも含めて、これ以上溺れて、“戻れなくなる”のが怖かった。

 「ほんとうに? 私のペニスにポルチオを押し付けておきながら? 乳首(こちら)でイッたのか?」

 ぐぐ、と腰を押し付けられると共に下腹部もぐぐ、と掴まれる。ウォルターは目を見開いて悲鳴を上げた。

 「ぅああ! あ゙!゙ ふぎッ、ぃ゙ぃ゙ッ゙……! や゙、ァ゙、ぅ゙ぅ゙、も゙、むぃ゙、らめら゙、ァ゙!゙ ぽるちぉ゙、つらぃ゙、おがじぐなぅ゙!゙ ごぇ、ごえ、らしゃ、ごえ、らしゃッぁあアアア!!」

 ぶるぶる震える身体の下で、シーツが重く濡れていく。ウォルターが――もう何度目か――潮を吹いていた。辛うじて自由を許されている両手が、シーツを引き裂かんばかりに握り締める。

 潮に手を浸しながら、スッラは上機嫌にウォルターの肌をまさぐる。もぞもぞと下降した手は、しっかり充血した秘豆を捉える。

 「や……、やら、すっら、ほんと、に、それ、だめ、だめだ、ゃ、こわれ、る、こわれ――」

 きゅッ、と、スッラの指がウォルターの乳首と秘豆を摘まんだ。

 「ゃ゙ゔ――ッ、や゙、あ゙、あ゙あ゙~゙~゙~゙~゙~゙ッ゙!゙!゙」

 「っはは! 気持ちいいなァ、ウォルター!」

 絶頂した身体に締め付けられてスッラもまた欲を吐き出す。その感覚に、また蜜壺がぶるりとふるえる。

 本来ならば子を成すための行為。だがスッラとウォルターの間にその気は無い。見てくれはともかく、ふたりとも良い歳だ。何よりそんな資格は無い――とウォルターは思っている。スッラは、もし子供ができたら責任を取る気はあるけれど、積極的にウォルターとの子供が欲しいとかは思ったことがない。今さら子育てなど、ウォルターの負担にしかならないからだ。普段ゴムを着けるのだって、ウォルターのことを思えば当然のことだからでしかない。

 だからこの行為は二人だけのものだ。半世紀越しの体温。倫理も道徳も、原始の衝動(けだもの)の前では何の壁にもならない。

 人も結局獣なのだ。「狩人」であるスッラはそれをよく知っている。

 だから、ほら。

 「溺れてしまえ、ウォルター」

 より深く、より重く。

 けれどウォルターは、汗と涙と洟と愛液に塗れてなお、ウォルターだった。

 ふるふる、と丸い頭が小さく振れる。

 「ゃ、ゃ……、ごぇ、らしゃ、ごぇ、らしゃ、ぁ、ぅ、いぁらしくて、いんらん、で、わるいこれ、ごぇらしゃぃ、……っ、ぅ、ぉ、おいて、いかないれ、」

 スッラの目が丸くなる。そして、ふっと和らいだ。燃え盛っていた火が、ゆらりと闇を照らす灯火になったようだった。場の空気が、ほどけて崩れ落ちていく。

 ――そうだ、この少年は、いつだって思い通りになってくれない。

 「ウォルタァ、」

 それが煩わしくて度し難くて、この上なく愛おしいのだ。

 「今さらお前を置いていくわけないだろう。どこにも、決して」

 「っあ……、」

 ぎし、とベッドが軋む。スッラがウォルターの上から退いた。ごぷりとウォルターの脚の間から、愛液と精液の混じったものが溢れた。同時に、体温が離れていく。切なげな声をウォルターが上げた。

 溜め息にも似た息を吐きながらスッラはウォルターの身体を転がす。そうして、向かい合って、もうまともに力の入らない身体を抱き寄せる。

 覗き込んだ瞳はとろりと蕩け、目蓋が落ちかけていた。

 「眠いか?」

 スッラが訊けば「ん」と幼い返事が返ってくる。胸元に擦り寄ってくる様は小動物のようだ。否。随分お疲れのようだ。無理もないか。

 「ならば眠れ」

 そう言ってやれば、ウォルターは主人からの許しを得た犬のように従順にこてんと意識を手放した。健気な反応を小さく笑って、薄い目蓋に口付ける。

 このまま、後片付けをしても良かった。した方が、ウォルターのためにもなっただろう。ベッドの上はあまりにも乱れていた。

 だが一瞬の逡巡の後、スッラはベッドから降りないことを選んだ。置いていかないで、と、ウォルターが泣きそうな声で言っていたからだった。ウォルターは泥のように眠るだろう。その間に離れて自由に動くことは容易だ。しかしそれはウォルターに対して誠実ではないと考えたのだ。

 仕事で実績を積むように、ウォルターとの間にも信頼を積んでいくことが大切だと思っている。信頼はやがて赦しとなり欲望となる。相手に要求を、通しやすくなる――なんて下心も含めて。

 そうと決めればスッラも目蓋を閉じる。ウォルターの体温やかたちが心地良い。境界が溶けて消えていくようだ。

 目覚めたらウォルターにキスをして、具合を聞いて、それから片付けをするのだろう。きっとウォルターは自分もやりたがる。痛み止めを飲んででもベッドメイクをするはずだ。他の家事と同じく、できる方がやれば良いだけだと思うのだが――スッラにばかり負担はかけたくない、と。まあ、目と腕の届く範囲でしてくれることならば強く断る方が無粋だろう。

 目蓋を閉じた温い闇の中で予定を組み立てていく、その途中で。

 そう言えば随分乱れていたな、と思って――自身の体液中に含まれるコーラルか、と納得する。が、そこでもうひとつ気になることが浮かぶ。

 ウォルターはどこからどこまでを憶えているだろうか。

 目覚めが楽しみだ。ふふ、と小さな笑い声をこぼしてスッラもまた意識を放り投げる。周波数のチャンネルやモニターの画面を切り替える感覚に似ていた。

 明日はどちらも一日休みだ。存分に楽しみたい。


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