C4-621×ハンドラー・ウォルター。21ウォル。とスラウォル少々。周回記憶持ちとか特殊設定あり。捏造もいっぱい。気を付けてね。あとR18部分はあんまり期待しないでね。力尽きた自覚はあるので(いつもの)
3周目修了以降。周回記憶持ち621。感情とか願望とか色々芽生えてる。
捏造諸々。ウォルターが義手義足とか。621の義体との接続はBluetoothみたいなイメージです。
後ろに少しあとがきのようなもの。
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憐れなことだ。
眼下の男を眺めながらスッラは思った。この男――ハンドラー・ウォルターは何も知らない。この世界のことも、自分のことも。
薄暗い部屋の中で、モニターの青白い光がやけに眩しい。散らばった書類や資料の上に倒れ込み、腹の上を陣取った独立傭兵を、それでも強く見返すウォルターの眼をスッラは苦笑にも似た眼で受け止める。まるで子供だ。いくら諦めろと言っても諦めず、何度やめろと言っても挑み続ける、健気で愚かな雛鳥。
「ハンドラー・ウォルター、お前も今日で最後だ」
首を押さえ付けながらズイとその顔を覗き込む。気道が圧迫された顔が悔しげに歪む。ガリガリと義体の表面に引っ掻き傷が刻まれる。だが腕一本の抵抗などあってないようなものだ。遠い床に放られた義手が、虚しく闇に溶けかけている。
「……お前に飼われる哀れな犬も、もういなくなる」
お前のせいで死ぬ犬はいなくなる。嬉しいな? そう続けてやれば、押さえ付けた喉元が上下に動いた。
「621だったか? あれが最後だ」
ウォッチポイントで撃破した犬を挙げてやれば、今度こそその喉からヒュッと空気が漏れた。
今度こそはと期待していたのだろう。あるいは、姿の見えない617辺りの犬たちが関係しているのだろう。だが、スッラはウォルターを進ませるわけにはいかないのだから仕方ない。特に621。あの犬は危ういにおいがした。達観。狂気。執念。およそ第4世代とは思えない、圧のようなものがあった。
「さて。ハンドラー・ウォルター。お前との付き合いもここまでだ。やはりお前は、お前自身のためにも私が殺してやろう」
ベルトからナイフを抜いて、心臓に狙いを定める。血と肉と骨の内側でトクントクンと命が動いている。義体の重さと力をもって押し込めば、容易くその護りは貫かれるだろう。もはや自分には無い熱を持つ身体に、スッラは眼を細めた。
ツプ、とナイフの刃先がウォルターの肌を噛んだ。
丁度その時。ヒュッと空を切った何かが、スッラを吹き飛ばした。
勢いよく吹っ飛ばされたスッラは壁にぶつかり、ずるずると床に崩れ落ちる。ガランと重たい音が転がる。よく見えないが、重量物を投げ付けられたらしい。衝撃を受けた腹部へ手をやると損傷していた。ぬるりとしたオイルに指先が浸かる。解放されたウォルターが背を丸めて咳き込んでいるのが見えた。
大した距離もないのに小さく見えるウォルターの背が見えなくなる。音もなく、目の前に誰か――闖入者が立っていた。
義体だ。直感でそう思った。
同時に。
「ほう? 生きていたとはな。私としたことが、抜かったようだ」
あの、数時間前に相対した「異質」だ、と。
やはり静かに、首元に手がかかる。ご丁寧に両腕は蹴り飛ばされ、両足で踏み(押さえ)つけられていた。
「621……?」
スッラの声が聞こえたのだろう。ウォルターがそれを当惑の声で呼んだ。
それ――621はジィとスッラを視ていた。冷たい眼だ。作り物であるはずの義体の目の奥に、赤い意志が見える。ああこの眼は、この犬は、おそらく――。
笑いが込み上げてくる。そら見ろ。やはりこの犬はやめておいた方が良い。ハンドラー・ウォルター。憐れなことだ。お前はもう逃げられんぞ。
ボキリ、と頸部の折れる音がした。
「621……なのか?」
のそりと見慣れない背中が動く。ここに来てようやく「動いている自覚」が芽生えたのか、ぎこちなく621は振り返る。酸欠と、杖と言う支えの無い覚束ない歩みで、ふらふらとウォルターが近付いてきていた。
「大丈夫か、621。その義体は……いや、怪我は無いか」
当然のように差し出される手を見つめる。今さっき義体の頸部をへし折った相手に、無防備過ぎやしないかと。
「どうした? 脚部に怪我でもしているのか?」
呆けたように動かないでいる621に、とうとうウォルターが膝をついて目線を合わせた。眼が、一瞬背後のスッラを見た。
「621?」
ほとんど反射のように621はウォルターの手を掴んでいた。脚部を確認しようとしていた手を掴んで、自分の頬に導く。ふむ、とウォルターは好きにさせた。
「621、世話をかけてしまったな。すまない。助かった」
621の頬を柔く撫でながらウォルターが言う。
「だが……よくここが分かったな」
スッラに襲撃され、攻防によりめちゃくちゃになってしまった室内を軽く見回す。書類の山が崩れた机の上に、タブレットを見付けた621はウォルターの手を握って立ち上がる。
片腕の無いウォルターがフラついた。それを難なく支えて621はタブレットに辿り着く。
「ふむ……。ACこそ撃破されたが離脱はできていたんだな。その後見つけた端末からガレージへアクセスし帰投。通信に使っている回線を遡ってここを特定したのか」
タブレットに綴られていく経緯を追いながらウォルターは驚嘆していた。
「そしてその義体はここへ来るまでに拾ったと……。驚いたな、621。お前は、俺が考えているよりずっと価値を秘めているようだ」
追加情報として、621の本体は手前の部屋だか廊下だかの床に置いてあるらしい。そういうことは早く言え、とウォルターが621の本体を回収しに行こうとする。が、何故か621当人がそれを引き留めた。
「? 何をしている621。お前のことだぞ」
動かない肉体だが、すぐに腐ることはないだろう。今現在の室内温度は低めに設定されており、じっとしていれば肌寒さを感じるくらいだ。直射日光が当たる階数でもない。だが、それでもせめてベッドに寝かせておくくらいはすべきだろう。
それなのに当の621はウォルターを引き留め、何を考えているのか抱き上げて机の上に座らせた。両脚の間に陣取り、正しく犬のように首筋や肩の辺りに頭を擦り付けている。加減はしているが、それでも僅かに痛みを伴う抱擁。凡そ「感情が無い」人間の行動ではない。芽生えたのだろうか。そうだとしたら良い傾向だ。無下にはできない。
目蓋を閉じ、自分の腹に頭を押し付けている621を撫でてやる。本体は未だ迂闊には触れられない状態だ、こういう時くらい良いだろう。いっそ活動用の義体を用意してやった方が良いだろうかと言う考えが浮かぶ。
頭を撫で、耳の後ろを辿り、背中を擦ってやる。
ぬる、と首筋を濡れた熱が這ったのはそんな時だった。思わず肩が跳ねる。
「っ!? 621、なにを……?」
じゅる、と今度こそ水音が聞こえた。次いで、鋭い痛み。肩を噛まれたのだと、舐られていたのだと、そこでようやく思い至った。はふ、と熱く湿った吐息が耳をくすぐる。
犬たちが口吻で草木を掻き分けるように鼻先からシャツの中に分け入っている。そうして621は何度もウォルターの肩を囓っているのだ。
「待て、62ィ、」
簡素な服を引っ張り、一先ず行為を止めさせようとしたウォルターは、最後まで621を呼べなかった。
服を引っ張った時。従順に引き剥がれた犬はそのまま飼い主を見つめた。そしてその手が緩んだ瞬きの間に、今度は唇に噛みついたのだった。
展開に着いていけないウォルターの口を621が抉じ開ける。本物よりも少しだけ冷たい義体の舌がウォルターの口内を埋める。ちゅる、ぢゅっ、ぐちゅり、と水音がする度、反射的に閉じられた目蓋が震える。
「んっ、ふ、ぁ……、ング、ぅ……、」
撫でられ、つつかれ、抉られ、擦り合わせられ――とうとう唾液が溢れて滴り落ちる。
ぬちゅり、じゅるり、と口内を好き勝手這う舌を、けれど噛むことはできない。いつの間にか顔の両側に手が添えられていた。それは優しく頬に触れている。反面、口が閉じにくい絶妙な力加減と位置取りをしていた。
自力ではどうにもできない状況。ウォルターの指先が、カリカリと621の背を掻いた。
「ぷあっ……、ふっ……は、ァ……、ッ、621、一体どうした」
背中へ立てた爪のおかげだろうか。ようやっと解放された隙にウォルターは訊く。こんなことは初めてだ。621に話――当人の現状――を聞きたかった。だが。
「ぁ、ゃ、ろ――ンんッ」
答えは返って来ず、再度口を塞がれることとなった。
ちゅる、と触れ合い、ぬちゅりと擦り合う。粘膜同士の接触で生まれる感覚に、溺れそうになる。ずりゅずりゅとなぶられる舌がぴりぴりとしびれる。塞がれた唇の端、呼吸の合間に上擦る呼吸がこぼれていた。
ふと眼が合う。透き通った、無機質なアイカメラ。けれどそれが、微かに笑っているように見えた。細められたその部位を、脳が機微として受け取ったのだろう。
そうして散々喰われて、ようやく解放される頃にはウォルターはぐったりとしていた。621の肩に頭を預けながら、はふはふと呼吸を整えようとしている。621の背に回った左腕は指先が辛うじて服に引っ掛かっている状態だ。
「621……、お前……」
まさか、とは思った。だが、それ以外に思い当たらなかった。
現にウォルターの声と連動するように、その手はウォルターの身体をまさぐり始めている。シャツをズボンから引き抜き、中へ手を差し込む。人肌よりも低い温度が薄い肌の上を走り、ひくりと筋肉が緊張した。
普通の飼い主であれば、ひとりで処理するよう言っただろう。しかしウォルターは言わなかった。621のような者たちに対する「責任」に含まれていると判じたためだった。ウォルターは、621が見せた「人間らしい」行動から、逃げることができなかった。
せめてベッドへ、と言うウォルターの希望は受け入れられた。しかしシャワーと部屋の片付けは却下されてしまった。気恥ずかしさはあるが、621に確認したら「構わない」と取れる反応が返ってきたため折れたのだ。もとい、621が移動の主権を持っていたため、折れるしかなかったのだ。
俗に姫抱きと呼ばれる抱き方で寝室まで運ばれたウォルターはそのままベッドの上に乗せられた。次いで621がベッドへ乗り上げ――簡素な骨組みが小さく呻いた。
ウォルターは覆い被さる621を見上げる。無機質な顔だ。だがそこはかとなく、熱を帯びているように見えるのは、飼い主の贔屓目だろうか。
「……621、そこの引き出しに義肢整備用のオイルがある」
ヘッドボードの横の辺りに置かれた引き出し付きの小テーブルを指差す。
「……。……ああ。もし続けるなら、使え」
指示と一緒に動いた621が「これか?」と言うように小振りなボトルを揺らした。ウォルターは首肯をもって621の問いに答えた。
ラベルには「義肢用オイル」の文字が印刷されている。人体に害の無い素材で作られたそれは、621からすると珍しいものに思えた。この世界にもひとに優しい精製物があるのかと。
ズボンから脚を抜く。下着も取り払えば、緩やかに兆しているウォルターの半身と、太股の辺りまでを補う義足が現れた。腰の下に枕を入れた後、621の手が作り物の足に触れる。その眼は飼い主の許可を待っていた。
「……良いぞ。お前の好きにしろ、621」
飼い主(ウォルター)が「ヨシ」を告げる。それを確かに聞いた621は人肌と金属の境に口付けを落とした。
スルリと義足を撫でた指先がごく自然に留め具を外していく。初めてとは思えない手際に思わず息を呑む。壊れ物を扱うように外され、ベッド下へ立て掛けられた義足を見送った。
いよいよ621がボトルの蓋に手を掛ける。傾けられ、ツゥと流れ落ちていくオイルがウォルターの下半身を濡らしていく。指先で辿れば、サラサラとよく滑った。
オイルに濡れた621の指先が後孔へ向かう。太股から先を失った脚は大した障害にならないらしく、片手で軽く行為の邪魔になら無いよう退けられている。
くるくる、と孔の周りを撫でられる。皺の中までオイルが馴染むように揉まれ、会陰の辺りまであやされる。
「んっ……、は、ぁ……、大丈夫、だ、」
視線がぶつかる度にウォルターは「大丈夫」と言ってやる。その度に621は内腿を柔く囓った。
そんなやり取りをしつつ、いつの間にこんな情報を取り入れていたのかとウォルターは内心驚愕する。あるいは経験があるのだろうか。ヒクついてしまう喉と後孔を押さえつけようとしながらウォルターは621の様子を窺う。
「――ッあ、」
にゅぷ、と621の指先が後孔へ侵入したのは不意と言えた。こそばゆさも感じる、正しく戯れのような動きに緩んでいた孔がキュウと締まる。
「はっ、ぅ、ふ……ッ、ン、」
身体として当然の反応を示した筋肉を宥めすかし、すぐに孔から力を抜こうとする。窺うように621が指を動かしているが、浅いところを一本だけであるため支障は無い。
しばらく使っていなかったが――憶えているものなのだな、と自嘲する。かつて資金繰りや売り込みのために使った身体が、未だ残っているとは。
「ッ!」
さして時間も経っていないのに二本目の指が侵入してきて息を詰める。微かな驚愕を浮かべて621を見遣れば、その顔は無機質だった。
否。不機嫌と言うべきだろうか。カクリと小首を傾げて、ウォルターを見下ろしている。
「あっ! あああッ! ひッ、ぃ、」
同時に指の動きが、にわかに暴れ出す。指を押し込み、ぐるりと回し、通りかかったしこりを轢いていく。その、時に。跳ねた身体で察したのだろう。
「ふっ……ッ、う゛、ァ、う゛う゛う゛……ッ!!」
グリグリとしこりが押し潰される。その度に半身がぴゅくぴゅくと白濁を吐き出し、腰が踊った。
「……」
「ん゛ぅ゛……、ふ……ッ、ぅぁ、んッ、あェ……、」
快感を処理しようとしていたところを覗き込まれ、口付けられる。轡のように噛んでしまっていた指は、621がやはり甘噛みでもって退かしてしまった。
口付けられ、またぬるりにちゅりと口内を621の舌が這う。
「ふェ、ジュッ、ォ゛、ッ、ンちゅッ、」
そのまま指がいたずらを続ける。しこりへの刺激だけでなく、孔を広げるような動きだ。くぱ、と中で二本の指が拓かれるのを感じた。空気に触れた粘膜がふるりと身ぶるいする。
そして、ウォルターの目蓋の縁からぽろりと水滴が流れ落ちていくのを621は見た。
「ァ……、う、っふ、」
散々擦り合わせしゃぶっていた舌をほどき口付けをやめる。たらたらと、どちらの唾液か保護液か判らない液体が糸を引いた。だが621はそれに頓着することなく、きらきらと水滴が睫毛を飾っている目蓋へ吸い付いた。閉じられた境を舌先で辿り、目尻に溜まった雫を吸う。ぴくぴく、ふるふる、とふるえる人間の目。連動するように収縮する後孔に、三本目の指が挿し込まれた。
ぐちゅぐちゅと湿った水音が響く。
「あ゛あ゛あ゛ッ゛!゛ ひぎッ、ぃ、ア゛、ッ゛……! ぐ、ぅ゛……ッ゛!゛」
オイルを継ぎ足されながら胎を掻き回されてウォルターが悶える。軽度の絶頂を繰り返し、その度に起ち上がった半身からぴゅくぴゅくと精を吐き出している。621の片方の手が時折気まぐれに触れていくのも、酷な刺激だった。
身体を上から押さえられ、ほぼ唯一自由に動く首を目一杯反らして顔をシーツに擦り付ける。そうして曝された首筋に621はまた歯形を増やした。
散々ほじくり回された胎は良い具合に拓けていた。
にゅぽ、とオイルにまみれた指を退かせば惜しむようにキュウと縮こまる。その後にはヌラヌラと妖しく濡れた肉孔が口を開いている。
既にとろりと表情を甘く溶かしているウォルターに触れるだけの口付けを落としながら621は下履きを取り去る。ツルリとした義体。その下腹部に、人の欲を表す熱が表出していた。
構造としては海獣の類いのそれと近い。普段は邪魔にならないよう収納されているが、使用に際して表に現れる。より人体に近いものもあるのだろうが、今回621が拾った義体はそういう型だった。
両手を太股にかけ、熱を孔に擦り付けながら621はウォルターを覗き込む。普段の落ち着いたオペレートからは想像のつかない、熱に蕩けた顔がアイカメラに焼け付く。
「ぁ……、ろくにぃ、いち、」
熱に浮わついた声がイヤーセンサにこびりつく。
「……来い。おまえの、好きに、しろ」
ウォルターに残された左腕が、621の首へ伸びる。熱に色付いた肌。真っ直ぐに621を捉える、けれど潤みきった目。許可を出す喉。言葉を紡ぐ舌。
「あッ――! ァ、ン゛ッ゛……ぐッ、ぅ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛!゛!゛」
621がズブズブと自身の熱をウォルターの胎へ押し込んでしまったとして、誰が責められようか。
「ひッ、ぃッ、ァ――、くッ、ふッ、ぅ゛……!」
最初の挿入で621はウォルターの胎を中程まで拓いた。きゅむきゅむと熱を揉む肉壁に621が微かに眉をひそめる。予想以上の快感が義体を這い上る。己の身体でこれを味わうことができたら、とは当然の思考だろう。
「あ゛ぅ゛、ァ゛、ろ、ひッ、ぃち、」
621の耳元を、熱を帯びた泣き声がくすぐる。少し腰を動かすだけでその声はひんひんと跳ねるのだから甲斐がある。
まだ慣れるまで動かない方が良いだろう。ウォルターを眺めると言う目的からそう考えた621は涙や汗や唾液に塗れた顔へ口付けを落としながら待機する。背中の手は服を握り締めていた。
濡れた舌先を覗かせる口端に口付け時だった。眼下の首が動き、正面からの口付けをねだったのは。
621は素直にそれに応じる。だが、ウォルターの脚が、留めている腰を引き寄せようと力を込められているのに気付いて顔を離した。カクリと首をかしげる。
「ぅ、ぁ……、だ、から、おまえ、の、すき、に、しろ」
気を遣うな。好きに使え。
ウォルターは621に、改めてそう言った。
「――」
ぐ、ぷ――。
「ヒュッ、」
ばつん、と621が無表情で腰を打ち付ける。
ウォルターは一瞬、理解が追い付かなくなったようだった。だがそれも一瞬のこと。
「ッ~~~!! かはっ、あ゛、ひ゛ッ゛……、ッ゛!゛」
身体の方は自身に成された無体を理解し、反応を示した。
「ろぐっ、ろ゛く゛に゛ぃ゛――、ア゛、ぅあ゛ぁ゛、」
「……ッ、……!」
ガリガリと背中を引っ掻かれる感覚。ビクビク跳ね回ろうとする身体を押さえ付けながら、621はウォルターの首に歯を立てる。まるで雌を孕ませようとする獣のようだ。
621が腰を浮かす。胎の奥、肉門に触れていた熱がずるぅ、と退いていく。ずりゅずりゅと肉壁を擦っていく杭にウォルターは咽ぶ。が、621は半分ほど抜いたそれを、再度奥へ叩き込む。
ぐぽ、と今度は分かりやすく「何かを穿った」感覚がした。
「お゛っ゛――、ッ、――! ~~~~~!!!」
ウォルターが声もなく悲鳴を上げた。熱塊が、ぎゅうぅ、と締め付けられる。その胎の動きに達したのだろうと考える。だが、それにしてはウォルターの半身が大人しい。たらたらと力なく白濁を垂らしている。
ああそうか。出さずに達しているのか。
頭の片隅。一周回って冷静な部分が、ウォルターが悦んでいるなら良いではないか、と相手の負担に対する考慮を握り潰した。
ぐぷっ。ぐぽっ。ぐちゃっ。ぐちゅぐちゅ。
ゴツゴツと胎奥を抉られ続け、ウォルターの意識は殆ど白い光の中へ飛びかけていた。左腕は背から滑り落ち、シーツの上で力なく揺れている。繰り返し吸われた唇は紅を引いたように赤く、てらてらと唾液に濡れている。前を開けられたシャツの中、露になった胸や腹には無数の噛み痕と鬱血痕が散らばっていた。その中に、スッラに付けられた小さな傷がひっそりと紛れていた。
「――っ、」
621が息を詰める。生体オイルが下腹部を上がってくる感覚だ。
このまま胎に出したところで問題は無い。人体に近付くための義体は、各企業素材に拘っている。だがこのまま出して良いのだろうか――とふと思い、好きにしろと言われたことを思い出した。飼い主自身(ウォルター)が言ったのだ。ならば、良いだろう。
「……ろくにぃいち」
掠れた声。融けてこぼれおちてしまいそうな目でウォルターが621を見ていた。
する、とウォルターの左手が621の頬を撫でた。
それを、621は、勢いよく引っ掴んだ。
指の一本一本を絡めた手を頭の横のシーツに縫い付け腰を振る。ギシギシとベッドが悲鳴を上げる。荒い息遣いが空気を湿らせていく。悲鳴じみた嬌声は、しかし決して否定の言葉を紡がない。
「――ハッ、……!」
「っあ……、ァ、んっ、く、ぁ……、あつ、ぃ、」
熱を持つ白濁液が、ごぷりとひとの胎の中へ吐き出された。
ベッドで眠るウォルターを、傍らに座った621は見ていた。
何とか探し当てたシャワー室で身体を洗い、めちゃくちゃになったシーツを剥がして新しいものをかけただけのベッドに寝かせた人体。着ていた服は捨てた。片腕が千切れ、胸元に穴の開いたシャツなど洗濯しても着られまい。自分は義体だから良い。シャワー室を探す過程で見付けた部屋から持ち出したブランケットに覆われた身体は規則的に呼吸している。
ハンドラー・ウォルター。自分の飼い主。今度こそ守り抜きたい人間。使命に縛られ運命に弄ばれ、それでもそれを受け入れて、最後に自分を置いていく酷いひと。
大丈夫。今度は大丈夫だ。上手くいく。上手くやってみせる。そのための「ダメだった過去」だ。
621は立ち上がり、寝室を後にする。後片付けは大切だ。薄暗い廊下。621の目には赤い光が灯っていた。が、それに気付くものはいない。この世界では未だ、歯車が大きくは回り出していないからだ。
パタリと扉が閉まる。軽い音に反してそれは、世界を隔てる厚く暗い壁のように見えた。
あとがき的な
3周目のEDを迎えた後、3周目までのすべての記憶を持ちつつ、いつもの周回スタートラインに立った621のつもりでした。ハンドラーを救えるまで何度でも繰り返す。よくある話ですね。
3周目EDに向かうための選択の時点で割と「何考えてるか分かんねぇな」ってくらい自我ありそうだったので、そろそろ己の欲に従って動いても良いのではないか?と思い動いてもらいました。上位者みたいなものになったしね。イケるでしょう(テキトー)
ハンドラーは周回記憶無し。スッラは記憶ありでも、無いけど察している、でもどちらでも良さそうですね。
エアちゃん用に義体を作ってもらって、対話を重ねながら和解生存EDを目指していければ良いと思いました。幻覚。
ハンドラーの義手は趣味です。が、エンブレムの手が球体関節だったのでウッキウキで採用しました。義足は完全に趣味です。