ハウウォル前提モブウォル。ふぉろわさん(やっちんさん)にネタお借りしました。ありがとうございます。
えっち描写は期待しないでねあんまりね。
ハウンズ生存パラレル?でハウウォル前提モブウォル。
えっち描写は……あんまり期待しないでね!
ハウンズのキャラクター捏造注意。モブが出張るし喋るよ。
気を付けてね。
ネタの使用許可出してくれたふぉろわさん(やっちんさん)に感謝(大の字)
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「見ろ、あいつ――」
「見るな、因縁つけられるぞ」
「また別の「犬」を連れてやがる。前のは殺したんだ」
「死ねば買い替えりゃ良いもんな。ただの消耗品さ」
囁き声と言うには隠す気のない話し声を背に受けながら男は往く。
「……」
「構うな。仕事に遅れる」
子飼いのひとりが暗器に手を伸ばすのを諫める。もうひとりの方は平然としてくれている――ように見えて人知れず周囲を睥睨していた。声の主すべての顔を覚えようとしているらしい。顔を覚えて何とするのか。嫌な予感ほど当たるものなので、男はその子飼いが周囲にいる人間たちの顔を覚えてしまわないうちに薄暗い道を通り抜けることにした。
今回の「仕事」は今後の活動に必要なものだった。
取引場所は人気のない路地裏。その中にある雑居ビルのひとつだった。
ともすれば廃墟に見えるそこを見上げた男は「招待状」を確認し、場所に間違いがないことを確認して足を踏み入れる。その後ろに、同伴を許されたふたりが続く。
外観に反して建物の中はそれなりに綺麗だった。電気は生きているし、割れたガラスや欠けたコンクリートも見当たらない。
随分静かだ。だが、見られている気配はある。ビルに入る前からずっと。
カツンコツンと靴音をさせながら3人は階段を上り、廊下を進んでいく。
そうして、しばらく。
3人は指定された部屋の前に辿り着いた。
簡素な、壁に紛れてしまいそうな扉だ。表札の類いは何もない。
コンコンコン。男が扉を叩く。三度。
その、僅か一拍の後、内側からガチャリと扉が開いた。
「やぁやぁようこそいらっしゃいましたハンドラー・ウォルター! お会いできて光栄です!」
男性――と言うには少し若い、青年がにこやかに3人を出迎える。その場において、あまりに場違いな勢いと態度だ。けれどその視線や動きには十分な血のにおいが漂っていることに、3人は気付いていた。
「こちらこそ、取引相手に選んでいただき光栄だ」
青年に差し出された手を男――ハンドラー・ウォルターが取る。
しっかりと握り返された手に、青年がにっこりと笑った。
室内へ招かれた3人は短い廊下を抜け、リビングのような部屋に通された。ここで取引をすると言うことらしい。部屋の中央に置かれた黒いテーブルと、その側に置かれた2つのイス。
イスのひとつを使うようウォルターに勧め、青年は別の部屋へ引っ込んでいった。ウォルターの同行者ふたりなど、まるで見えていないかのように。
だがそれは「よくある」反応と対応だった。この世界では、誰かの「子飼い」など付属物(オマケ)に過ぎない。替えの効く、主人が使うための消耗品。青年の反応は、特段変なものではないのだ。
チラ、とウォルターは今回連れてきたふたりを窺う。617と621。当人たちの強い希望で今回同伴させたふたりの子飼い。ひとりイスを使うウォルターの両側に、ふたりは当然のように立っている。
次に室内。踏み入った際、姿の見えなかった相手方の護衛がいる。影に溶けるように、息を潜めているのだ。3人。否、少なくとも4人か。姿を確認できるだけでも、室内にそれだけいる。こちらからは見えない場所――たとえば天井や別室にも配されていることだろう。
面倒を、起こさないようにしなければ。それはもちろん、当然のこと。しかし物量差と、建物内というロケーションに、ウォルターは改めてそう思った。
「お待たせしました! こちらが今回の取引分になります」
青年がジュラルミンケースを手に戻ってくる。やはりニコニコとしていて、休日の公園などで会ったらさぞ「良い隣人」となってくれることだろう。
テーブルの上に置かれ、蓋を開けられたケースの中身をウォルターは確認する。真贋、品質、品数、共に問題はなさそうだった。
「……確かに。取引感謝する」
「ええ、もちろん」
ケースの蓋を閉じ、握手を交わす。これで目的のモノは手に入った。あとは――。
「それでは……今度は私の番と言うことで、良いですよね?」
握られた手を、そのまま青年がくるりと掬う。ウォルターの手の甲が部屋の天井を見る。それは事前に取り決めていた「取引」の内容だった。
「……ああ。構わない」
それ以外の返事は、そもそもウォルターには無いのだ。
青年がウォルターの手の甲に口付ける。上目遣いになった瞳には、隠し切れない熱が揺れていた。
取引をした部屋から、更に奥の部屋へ通される。
そこは寝室だった。
部屋の中央に大きな寝台。その傍にはスタンドライトの置かれた引き出し付きのサイドテーブル。ホテルの一室としてあっても、遜色の無い部屋だった。
「ではどうぞ、ハンドラー・ウォルター。“私と貴方”、その親交を深めるために」
青年が部屋の中へ誘う。その目にウォルターだけを映して。
「待機せよ」
子飼いふたりにそう指示を出し、ウォルターは寝室へひとり入っていく。その背中を、617と621は見送ることしかできない。たとえ扉が閉まるその直前、取引相手の人間がこちらを見て薄ら笑ったとしても、引き留めることなどできないのだ。
パタン、と扉が閉まる。その音の軽さに、ウォルターは早くも憂鬱な気分になった。そして部屋の中に――こちらは分かりやすく“配置された”相手の子飼いに内心溜め息を吐く。この世界ではよくあることだが、この青年もまた良い趣味をしているらしい。
「飲み物はいかがです? ご所望であれば酒も用意しますよ」
ウォルターを寝台へ押し倒しながら青年が言う。正直この手の類いの人間から、口に入れるものを貰いたくはない。だがこの誘いを蹴るのもリスクとなるだろう。
「そうだな……。で、あれば水を一杯。朝のために」
自分に覆い被さる青年を見上げてウォルターは笑って見せる。実際口にするかどうかはどうでもいい。相手の誘いに乗ることが大事なのだ。
「……ええ、喜んで」
ウォルターの言葉に青年もまた笑った。どうやら想定していたよりもずっと人が好いらしい。嬉しい誤算だ。そんなことを思いながら、青年は口端を吊り上げていた。
この日のために“我々”はしばらくのお預けを食らっていた。必要なことだとは解っている。だが――。
室内から漏れ聞こえてくる飼い主の声を聞きながら617は腰の後ろへ回して組んだ手に爪を立てた。ジリ、と熱があふれる。
「――っ、ぁ、ふッ……! ア、あ……ッ!」
「嬉しいです、ウォルター。貴方は多忙なようですから、前の客の痕が残っているのではないかと思っていましたが……綺麗なものですね。嬉しいです」
舌打ちがしたくなる。
当然だ。何のために“我々が”、どれだけ我慢したと思っている。すべて今日この日のためだ。
「下も剃ってきてくれたんですか? 素晴らしい気遣いですね……世の人間が、皆貴方のようなモノであれば良いのに……」
「ンッ! ぁ、はッ……、それ、を……、ァッ、好んでいる、と、ぉッ……、聞いた、ので、な、」
「……素晴らしい。実に、誠実な方だ」
自分の聴覚を、こう言ったときに呪わしく思う。
ぐちぐち、ぐちゅり。指で孔を弄られているのだろう。ああ今声が跳ねたのは前立腺に触れられたからか。
等と――音で見えてしまう。
横目で621を確認すれば、同じように中の風景が聞こえているのか、怒気と殺気を膨らませていた。
「ああ綺麗だ……ハンドラー・ウォルター……噂に名高き調教師……どれだけの客を誑かして来たんです? この貪欲な尻孔で」
ブツッ。肉に爪が刺さった。ふわりと鉄さびのにおいが漂う。普通のひとである我らが飼い主は気付かないだろうか――同胞である621は気付いているようだった。無言の圧に応え視線を遣ると、薄暗い目と目が合った。
今すぐにハンドラー・ウォルターに気付かれることはあるまいよ。それに、私のことを言えた義理かね。
そんな眼を遣る。ギリギリと下唇を噛んでいた621は、珍しくどこかバツが悪そうに眼を逸らした。
「はッ――! あ、ふッ、ぁ、ア――~~~!」
グチュグチュグチュッ。間隔の短い、潤んだ肉を掻き回すような音。二本――いや、三本の指で手淫されているのか。スプリングの軋む音。跳ねる身体を押さえ付けようとして叶わない主人の姿が、容易に見(きこ)える。
「ふっ……ぁ、ん、」
身体をひっくり返され当然のように口付けられる。じゅうじゅう、ずゅるずゅる、と舌が痺れるほど口内を荒らした後、青年は正面から逃げるように反らされたウォルターの首筋に噛み付いた。
赤い噛み痕がひとつ、残る。
「フフ。声、我慢しないでください。せっかく素敵な声なんですから」
唇を舐めながら青年がウォルターを見下ろした。両足を割り開きその間に身体を滑り込ませ、浮かせた腰の下にクッションを詰める手際はあまりに自然で手慣れている。ウォルターの息が詰まったのは、スリ、と青年の指先が胸の飾りの傍を撫でたからだろうか。
じゅ――ぷんっ。
ばちゅっ。
「ひっ、あ、ふあ、ぁああ゛あ゛あ゛っ゛!゛」
挿入された。すぐに分かった。くすくす。青年(あいつ)の笑う声が聞こえる。また腕に熱が灯った。
「動きますよ。ほら、」
ばちゅっばちゅっばちゅっ。
「あっ! あっ! あっ! アッ――ハッ、ア、あああ……!」
水音に合わせて飼い主の声が跳ねている。“いつも”声を押さえようとしがちな飼い主の声が、よく聞こえる。
おそらくあの取引相手は分かっていてやっている。我々に聞かせるために、声を我慢するな、と言ったのだ。
この世界には、悪趣味な人間が多い。
けれどこいつは。
久々のゲテモノだ、と617は思った。
「ほら、ウォルター。教えてください。いま、どうなっていますか?」
「――、」
畜生。××野郎。××××。×××××。
飼い主の耳には入れられない言葉が浮かぶ。それを飲み込むために、喉から変な音が出た。
「ぅ……、っ、俺、いま……っ、年した、の、ォ゛ッ゛!゛ とりひき、相手っ、に、ィッ……だかれ、て、う゛っ゛……!」
「ええそうですね。貴方は、ハンドラー・ウォルターは今、年下の男に抱かれている……。ハハッ、今締まりましたね。言葉にしたからですか? それとも見られているからですか? あるいは――聞かれているから?」
その名を口にするな。その身体に触れるな。
「ああ、まったく、キュンキュン締め付けて……いやらしいひとだ」
手のひらに、穴がよっつ開きそうだ。
「ンッ……く、ふふ……。良い機会です。もう少しだけ……っ」
ぐぷ。ぐちゅ、ぐぷぐぷ。と、肉壺をかき混ぜ、何かを探っているような音がし始める。
飼い主を抱く男が何をしようしているのか、思うところはあった。
「あ、アッ……! ひッ――お゛、」
それは逃げるようなものではない。個人により有無のあるものではない。暴こうと思えば、誰でも暴けてしまう場所。
がくん、と寝台が大きく鳴った。その時同時に飼い主の胎の奥では、ぐぽん、と音が鳴ったことだろう。
「お゛っ゛――、オ゛、ァ゛、っ、あ゛……、か、ハッ――、ア゛、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!゛!゛!゛」
ああ。
ああ――。
「ふふ、ハハハッ! あぁ、ほら……どうぞ、私の背中を使ってください。爪を立てて縋ってください。歯を立てたって良いですよ。私が貴方を抱いた証を、その手で残してくださいな」
私たちの主人(ハンドラー・ウォルター)はお前を飾るためのトロフィーじゃあない。
手のひらがぬるりと温まっていた。目の前が暗くなる。
――ろくいち、なな。
周囲の音すら遠くなりかけた時、隣から小さな声が聞こえた。ハッとする。
声の主は621。今にも牙を剥き出しそうな顔で、しかし617をまだ理性の残る目で見ていた。そこで617は、自分の手が衣服に忍ばせた暗器へ伸びていることに気付く。
だけではない。それまで遠巻きにふたりを監視していた目が、敵意を帯びていた。
ここで騒ぎを起こしてしまえば何もかもが水泡に帰す。
617は取り落としていた無表情の仮面を拾い上げ、着け直した。
「結腸きもちいいですか? はァッ……素晴らしい……何度突いても健気に吸い付いてきて……可愛らしいですね」
「はっ……、は゛ッ゛、あ゛、ン゛……っ、きも、っ゛、き゛も゛ち゛ぃ、い゛ッ゛!゛ けっ゛、ちょ、お゛っ゛、ォ゛、あ゛、あ゛ァ゛ッ゛」
全体重をかけてウォルターにのしかかる青年はうっとりとした表情で腰を振る。結局背中に回されなかった手はシーツから解き奪って五指を絡めた。だらしなく開かれた口から覗く艶やかな舌を気紛れに食みながら「高き悪名」を組敷く快感に酔う。
扉の外からはずっと殺気がこちらを睨み付けている。届きはしない。その獣たちの枷はこの手中にあり、それはまた枷自身が同意したことだからだ。
くすくす。青年はわらう。
この世界では珍しく素直で誠実な取引相手。嬉しい誤算。それに忠実過ぎるその子飼い。満たされる愉悦。そして絶対的な優位。笑うなという方が無理だろう。
ふと室内の影(手駒)と目が合った。
頬が紅潮している。泳いだ目はハンドラー・ウォルターを映した。上下する喉。昂りは未だに緩やかだが、隠せはしない程度にまで。
良いことを、思い付いた。
「ねえ、ウォルター。私のところの子を、少し助けてやってはくれませんか。どうやら貴方にあてられてしまったようで」
願い出る言い方に反して青年は既に己の手駒を呼び寄せていた。
「口で、慰めてやってください」
ズボンの前を寛げさせ、熱を完全に起つまで育てさせる。そしてウォルターの顔の上に手駒を陣取らせた。
青年の手駒が、恐怖と期待を織り混ぜた眼で青年を見る。主人の許可を待っている眼だ。
だが既にその手はウォルターの顔を捕らえている。
「どうぞ?」
“使われる”当人の意思など、そこにはなかった。
ガポッ――と音がした。直立不動のままの617が僅かに目を見開く。
「お゛ッ゛――、ご、お゛ッ゛、ごぽッ、がぽッ、ォ゛ッ゛、」
「ハッ、ハッ、ハッ……、ァッ……、ふっ……!」
飼い主の苦しげな声と、弾む知らない声。
何を。何をしている。
飼い主の、そんな声は知らない。
ポタポタと腕や手のひらから流れ出た血が床を汚す。そう言えば爪を、しばらく手入れをしていなかった。する必要がなかったから。けれど好都合だったかもしれない。爪と牙。獣にはお似合いの暴力だ。
「はッ――、うっ!」
「ん゛ん゛ん゛ッ゛!゛!゛」
獣には獣を。夜明けと共に狩りの時間を。においは憶えた。どこまでも追える。
飼い主はこれがこの惑星での最後の仕事だと言っていた。ならばもう何をしたところで柵はないだろう。宇宙は広い。仕事の相手は“こいつ”でなくとも良いのだ。
寝室の扉が開き青年が617と621の横を通り過ぎて行く。またどうぞご贔屓に。そんな言葉を室内へ残しながら。
「ハンドラー・ウォルター!」
ずっと蚊帳の外に出されていたふたりがバタバタと部屋へ駆け込む。窓を隠すカーテンの隙間から、日の光が射していた。
「ハンドラー……ああ……、」
寝台の上でぐったりとしているウォルターを抱え起こした617は、主人が見た通りの状態だと判断する。身綺麗にはしてあるが、どうせ最低限だろう。
そのまま、ヒョイと主人を横抱きにして立ち上がる。
「621、エスコートを頼む。騒ぎは起こすな」
ウォルターの杖を回収していた621へ声をかけ、617は足早に部屋を出る。騒ぎを起こすなとは言ったが、回収した杖を身体の前で両手で握り締めている様子では問題ないだろう。
「…………620か。今から帰投する。風呂の準備を。……念のためだ。……ああ。頼んだ。いや、エスコートは621に頼んだ。迎えは良い。618と619には話があると伝えて待機させておいてくれ」
ハンズフリーで起動した通信機で拠点に待機している620へ連絡を入れる。一先ずの指示はこれで良いだろう。
腕の中の主人が身じろいだのは、ちょうど通信を切った後だった。
「……617か」
「ハンドラー・ウォルター。喋らずとも構いません。お身体に障ります」
薄暗いビルの中で視線が絡む。それは刹那のことだった。
617はすぐに前方や周囲へ目を向け、屋内からの安全な脱出を図る。ウォルターはふらりと視線を彷徨わせ、それから617の胸元へ沈むように脱力した。その直前、自分を抱える617の手を視界に納め小さく息を呑んでいたことに、おそらく子飼いふたりは気付いていない。
「……お休みください、ハンドラー・ウォルター」
鎖骨の辺りにもたれかかる頭をいとしげに見下ろし617は囁く。
「…………すまない」
「お気になさらず」
自分の飼い主が何に対して謝罪したのか、617は正しく理解しないだろう。きっと621も同じだ。617と621は彼の子飼いである故に。
冷たい夜明けに照らされた街は未だ眠りの只中にある。その中に溶けきらない、黒い影がふたつ。何かを大切そうに抱えて、無機質な建物の群れを掻き分けていく。
(何かを察したハンドラーが「構うな」って言ったから後の滞在期間中に周囲で物騒なことが起きることは無かったしその分ハンドラーにグルーミングもマーキングもたくさんしたハウンズでした)